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フィールド日記

2017.02.05

ロシアからやってきたアカハラ

 中学校校舎の中庭にアカハラがいました。アカハラのようなツグミの仲間は地中の虫などを好むので地上にいる姿をよく目にします。アカハラはこの付近で昨年も確認されています。この鳥はサハリンなどから渡ってくる冬鳥ですが、もしかしたら昨年と同じ個体かもしれません。アカハラは古語では「しなひ」や「しなひとり」と呼ばれていました。平安時代に凡河内躬恒が編纂した和歌集『秘蔵抄』には「しなひとりおちくるいそのなく里にかくるおもへにゆくかたもなし」という和歌が収められています。「おちくる(落ちくる)」という表現はミミズなどを求めて地上に降り立つアカハラの姿を彷彿とさせます。

今日のことば
近年、アカハラが激減したという話をよく聞く。特に軽井沢での減少は著しく、数年前に中軽井沢で未明から耳を澄ませたが、たった一回聞いただけだった。半世紀前、降るようだったアカハラの大合唱は、今となっては夢物語である。
岡田泰明

2017.02.03

月と火星と金星

 この数日、月と火星と金星が直線状に並ぶ光景が見られています。
今日は夕方の空の月と火星と金星の写真を撮りました。
赤丸が月、黄色丸が火星、青丸が金星です。

今日のことば
おそるべき愛なる神のみこころのうつわとならんただにそれのみ 片山敏彦

2017.01.29

1月の野鳥の調査

 日本野鳥の会東富士副代表の滝道雄先生が不二聖心の野鳥の調査してくださいました。その報告書を以下に掲載します。

2017年1月28日の野鳥生息調査結果報告
 1.ヤマガラ      10羽
 2.ヒヨドリ       9羽
 3.ツグミ        7羽
 4.ハシブトガラス   19羽
 5.メジロ        14羽
 6.シメ         1羽
 7.シジュウカラ     7羽
 8.ジョウビタキ     2羽
 9.ホオジロ       5羽
10.アオサギ        1羽
11.モズ         2羽
12.カケス        5羽
13.キジバト        3羽
14.セグロセキレイ     2羽
15.アオジ        1羽
16.コゲラ        3羽
17.シロハラ       3羽
18.ルリビタキ      2羽
19.エナガ        3羽
20.ヒメアマツバメ    6羽
21.ウグイス       2羽
22.キセキレイ      1羽
23.カワラヒワ      3羽
24.アカハラ       1羽
25.トビ         1羽
26.ウソ         4羽
27.ガビチョウ      1羽
28.ソウシチョウ     1羽
合計28種類を確認した。
特記事項
1.アオサギが上空を飛ぶのを初認した。 これで確認種は50種類となった。
2.漂鳥のカケス、アオジ、ルリビタキ、アカハラ、ウソが確認できた。
3.冬鳥はツグミ、シメ、ジョウビタキ、シロハラ、が確認できた。

ついに、確認した種数がアオサギの目視で50種に達しました。次の画像はアオサギの若鳥です。
今日のことば
わたしはお城で生まれましたが、心が満たされることはありませんでした。周りの人たちは本当の幸せを見つけずにいるようでした。「何故生きているのか」、わたしはその答えを知りたかったのです。その答えを探し求めて、わたしはイギリスから旅立ちました。インドで出会った若き師が、自分の内面への道を示してくれました。答えのすべてがわたしの中にあるのだと教えられ、自分の声に耳を傾けたのです。そして日本に辿り着きました。日本に来て、一年が過ぎた頃、ここにずっと暮らすことになるだろうと思いました。自分の故郷のように寛げたのです。笑顔が心の扉を開けてくれることを、わたしはこの国で教えられました。
ベニシア

2017.01.25

ティタティタ スイセンの園芸種

 スイセンの園芸種であるティタティタの花が咲いています。よく見かけるラッパズイセンと同じ色のスイセンですが、ラッパズイセンよりかなり小型です。スイセンには約1万種の園芸種があると言われますが、ティタティタはその中の一つです。


今日のことば

すがすがしい静けさ
それだけが
この世を正す力なのだ
老子

2017.01.15

薩摩紅梅

築山の薩摩紅梅が咲き始めました。花の周囲は芳香に包まれています。昔、梅ごとの花の香りの微妙な違いを歌に詠んだ歌人がいました。築山には立派な白梅の木もあります。近いうちに香りの違いを確かめてみようと思います。

今日のことば
梅一輪いちりんほどのあたたかさ  服部嵐雪

2017.01.12

ロウバイ

マリアガーデンの蝋梅の花が咲き始めました。「蝋梅」は蝋のように透き通った花びらからつけられた名前ですが、梅の仲間ではなくロウバイ科ロウバイ属の植物です。

今日のことば
皆さんに信じてほしい。変革をもたらすのは私ではなく、あなた方の力であることを。
オバマ大統領

2017.01.11

宵の明星

 講堂の屋根の上に宵の明星が美しく輝いていました。明日は金星が東方最大離角となり、-4等星の輝きが見られます。

今日のことば

セリヌンティウス間に合ったぞと息きらし駆けこむ少女は遅刻の常習  塙大輔

2017.01.10

メジロの巣

 中学1年生が中学校舎の中庭でメジロの巣が落ちているのを見つけて教えてくれました。メジロは楓の木に吊り巣をつくることが多いと言われますが、この巣もイロハモミジの木の下に落ちていました。工芸品のような美しい巣ですが、よく見ると巣材にビニールの紐が使われているのがわかります。これが雛の肢にからんでしまうことがあります。安易に捨てたビニールごみがここでも思わぬ悪影響をおよぼしています。

今日のことば

初春の小春日に
今年の幸福を願い
近くの社に参拝する
初雀が舞い降りてきて
チュンチュンと
明るく愛らしく鳴く
神様が祝福してくれて
いるようで嬉しい
一年を感謝の思いで
生きよう
それが一番の幸福
なのかもしれないから
大室力

2017.01.03

冬の落葉樹林

裏の駐車場の落葉樹の林の写真を撮りました。

2016年11月に築地書館から刊行された『落葉樹林の進化史』(ロバート・A・アスキンズ)には、落葉樹林が白亜紀に北極地方で誕生したと書かれています。
北極では、数ヶ月にわたって太陽光がほとんど届かない期間が続きます。その期間は光合成ができないので、落葉することによってエネルギーの節約をはかるようになったという考え方です。一つの冬の風景から進化の歴史へと思いを馳せることができます。

今日のことば
朝誕生し、夕方は死んでいく、そんな気持ちで過ごしていたら一日一日が光を帯びてくる。朝には新しく生まれるのだから、昨日の気持ちをひきずらない。明日の光は明日みつければよい。今日1日だけでいい。しっかりと、一つ一つ心をこめて大切に過ごすことが光になる。1日を小さな一生だと思って生きていきたいと思う。
海原純子

2016.12.29

ラッパズイセン

 ラッパズイセンが既に花を咲かせ始めています。ラッパズイセンはウェールズの国花としても知られており、以前不二聖心で講演してくださった、ウェールズ出身の作家、C・W・ニコル氏は長野のアファンの森にたくさんの水仙の球根を植えられたそうです。

今日のことば
『ぼくのワイルド・ライフ』(C・W・ニコル 集英社文庫)を読む (平成21年11月30日)
    ―― “Always look for the connections” ――
 もうすぐ十一月が終わります。新しい月が始まると僕は最初の日曜日が来るのを心待ちにします。第一日曜日のジャパンタイムズで、尊敬するC・W・ニコル氏のエッセイが読めるからです。この習慣はもう何年も続いていますが、最近では、九月六日のMy key connectionと題された一編がとりわけ感動的でした。そのエッセイは次のように始まります。
 It was 1954 and summer holidays were over.  The family had moved a few miles south from Tewkesbury to Cheltenham in the beautiful country of Gloucestershire in the west of England , and I had been transferred from the one town’s boys grammar school to the other’s .
 On my first day there , a small gang of boys gathered around , asking questions , curious about the new boy in the third year. Then all heads turned as a magnificent , classic open-topped Bugatti roared into the playground. The boys all gave a mighty cheer and raced to surround the car.
 “Who’s that ?”  I yelled out to the boy as he passed me.
 “Dad ,” he said , “Dad Driver!”
 That was very confusing at the time , as the car obviously had a driver , and the big , bearded man at the wheel didn’t look old enough to be the dad of anybody in this school.
 It turned out that the name of the driver in question was Driver , and the boys all called him “Dad” – perhaps because he was so imposing , and the most charismatic and popular teacher in the school. For me , he was to become the best teacher I ever had ; one who changed my whole life.
 自分の人生を大きく変えた恩師、ピーター・ドライバーとの出会いが以上のように語られています。彼はこのあと生物の先生であったピーター・ドライバーの影響を受け、自身もピーターの助手として生物調査に関係する仕事をするようになっていきます。その最初の調査の様子が、『ぼくのワイルド・ライフ』(集英社文庫)という本の中の「ぼくは子ガモのおばちゃん」と題されたエッセイに書かれています。
 ぼくがピーター・ドライバーの助手になり、カナダ極北地方の探険についていったのは十七歳のときだった。カナダではなくてほかのどこだったとしても、ぼくはついていったと思う。
 彼はぼくより一〇歳年上で、ぼくが通っていたイングランドの古風で厳格な男子校の生物教師だった。ぼくらはふつうの生徒と教師の間柄をこえて、ずっと親密だった。これはおそらく、ぼくらがふたりとも独特のイギリス式ユーモアのセンスをもち合わせていたからだろう。ぼくはまた、物事にひどく熱中するたちの少年だった。生物学、自然、カヤック乗り、柔道、探険、冒険物語などに夢中になっていたのである。
 ピーターは理想的な教師であった。生物学という科目が彼の手にかかると、無味乾燥な教科書のページやら、薬くさい器具やら、ホルマリンづけの解剖台などをはるかにこえたものになった。彼によって、生命を研究するこの学科が、それこそ生命を吹きこまれたのである。
 ニコルさんは、自分の人生を変えるほどの影響を与えた恩師と極北地方でホンケワタガモの調査をします。その調査は、ピーター先生がホンケワタガモのヒナの母親となり、ニコルさんがおばさんとなって、カモたちと生活を共にする中で行われました。
 ヒナたちはピーターを刷りこまれ、彼は母ガモになりきった。ヒナはたえず注意を必要とする。とくにホンケワタガモはそうだ。彼らは自分で食物はとるがエサ場には連れていってやらねばならないし、見張ってやり、抱いて暖めてやらねばならない。トイレに行くときでも、あとを追うヒナを残していくことはできなかった。ぼくはこの大男が、ケワタガモ語でヒナたちをなだめたりしかったりしているのを見て、ニヤニヤしないわけにはいかなかった。しかも、キーキー鳴くフワフワしたボールたちが、われがちにピーターのあとを追いかけていくのだからなおさらだ。(中略)
 ピーターとヒナたち、それにぼくは、いつもたがいにていねいにあいさつをしていた。これはちょうど人間のおじきと反対の動作で、頭を上向きにうなずかせるのである。もともとこの運動は、卵の中のヒナが殻を上向きに押すことから発達したもので、それは水を飲むときのくちばしを上向きにあげる動作につながり、やがて求愛の動作へと発展していく。このときは、セクシーな「ウーウー」という鳴き声とともに、首を大げさに上向きにうなずかせるのである。自然は実にむだのないことをするものだ。
 卵の殻をやぶる動作とあいさつの動作と求愛の動作はつながっている。このような興味深い事実が十七歳の時の体験談を綴ったエッセイ「ぼくは子ガモのおばちゃん」の中ではいくつも紹介されていきます。
『ぼくのワイルド・ライフ』の最後の章は「わが愛しのピーター先生」というタイトルです。ここでは、ニコルさんがスコットランド北端部のホイ島に出かけていき、そこに生活するピーター先生と何十年ぶりかで再会した様子が描かれています。この章も極上のエッセイにしあがっているのですが、僕にとってとりわけ印象的だったのは、二人が黄昏の海辺を散歩する場面でした。
海は静かで鉛色のきらめきを放っている。海面からアザラシの頭が突き出るのをふたりは指さした。
「ノアじいさん(ぼくらのイヌイットの友人)なら、あっという間にあいつを捕まえるだろうな」ピーターがいった。
「きのうウサギを撃ちに歩いている間に六頭見たよ」とぼく。
「たくさんいるんだ。今までにも岬から二〇〇~三〇〇頭は見た」
 ユリカモメがかたわらをゆっくりと飛びすぎた。歩きながらぼくらの話題は、カモメたちがいかに多くのヒツジの子や、ときには妊娠したメスのヒツジまでを殺すかという話に移った。信じられないかもしれないが、これはまさしくほんとうなのだ。ぼくもピーターも現場を目撃している。ここではカモメによる子ヒツジの被害はきわめて深刻なのだ。どうすればよいのか? 答えは簡単だ。むかしのように、島民にカモメの卵を食べさせればいいのだ。カモメたちは無人島だとか、人の訪れることのない場所で生き残るだろう。ぼくは北極でカモメがいかにふえているか話した。人間の食べかすと、皮だけはいで氷の上に放置されるアザラシの死体がその原因だ。
 イヌイットがスノーモービルと引きかえに犬ゾリを捨てたこと、ガソリンを買うのに金がいり、皮を売るだけの目的でアザラシを殺しすぎること。そのことが、古い歴史をもつ誇り高い文化にどんな影響を与えたか、またこのせいでカモメの生息数がふえ、営巣するカモたちにいかに圧力がかかっているかぼくらは話し合った。カモたちは卵やヒナを襲うカモメにひどく苦しんでいるのだ。ぼくらは歩きつづけた。海岸にチドリを見たり、早咲きのランを見かけたり、あるいは湾のはるか向こうにまたアザラシを見たりしたときだけ、ぼくらは歩みをとめるのだった。そしてまた行動とバランス、人間の自然に対するあくなき干渉について語り合った。
 イヌイットが犬ゾリを捨てたこととカモの数が減少すること、この一見なんの関係もないように思われる二つのことが実はつながりあっている。これが自然界の姿であり、自然の中では、私たち人間も含めて、ありとあらゆるものがつながり合っているということをニコルさんの文章は教えてくれます。
 この再会からさらに二十年以上が経った今年の夏、再びニコルさんはホイ島を訪れました。その時のことがジャパン・タイムズに載ったエッセイ「My key connection」の最後に出てきます。
 Fifty years have passed. Peter is still one of my dearest friends. For the last 30 or so many years he has made the Orkney Islands his home. This summer I went to ask him for advice on the directions we should take with our woodland research. His words were simple, but I knew exactly what he meant.
“Always look for the connections,” he said.
 In 2010 , I’ll be70. How time flies!  If I have learned anything , it is to realize that truly , all life is connected. And if you look closely , that can be said of all our lives too.
 なんという美しい文章でしょう。「“Always look for the connections”」僕もこの言葉を心に深く刻みつけたいと思います。