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フィールド日記

2018.08.03

アイナエ

 オークヒルの一部にアイナエが群生しています。図鑑によると日当たりの良い暖地の低湿地に生えるとなっていますが、オークヒルも生育に適した環境なのでしょうか。芝生に交じって生え、長い花茎の先に白い小さな花をつけています。

 下の写真のように、花茎より下の茎は地上から1cmほどの高さしかなく、2~4対ある葉も周りの植物に埋もれてほとんど目立ちません。おそらく周りの植物が大きく育っている場所では十分に光が得られず生育できないと思われます。この場所は、定期的に芝刈りが行われているため、アイナエの生育に適した環境が保たれているのかもしれません。

2018.07.31

アオカメノコハムシ

 オークヒルでアオカメノコハムシを見つけました。カメノコハムシの仲間は、甲羅を背負った亀のような形態によって他のハムシと簡単に見分けることができます。アオカメノコハムシの食草はアザミ類で、この個体もアザミの葉にとまっていました。


ハムシの仲間は体内で細菌と共生しており、細菌のつくる物質が葉の消化を助けていると言われています。アオカメノコハムシもアザミの葉の消化を助けてくれる細菌と共生していると考えられます。

2018.07.27

シズオカオサムシ

 裏道でオサムシを見つけました。オサムシは夜行性と言われていますが、昼間でもたまに出会うことがあります。体はやや緑をおびた赤銅色に輝いていました。


 オサムシの仲間の多くは後翅が退化しており、飛ぶことができません。その代わり、歩くのが得意で、とても速く歩くことができます。そしてミミズなどの小動物を捕らえて食べています。飛ぶことができないため、川や高い山を越えることができず、地理的な種の分化が著しいという特徴もあります。不二聖心にもいくつかの種類のオサムシが生息している可能性がありますが、上の写真のオサムシはシズオカオサムシだと思います。

2018.07.24

ハエドクソウ

 校内の日当たりの悪い斜面や林床にハエドクソウが咲いています。全体に有毒成分があり、根を絞った汁でハエ取り紙をつくったことが和名の由来です。


 花には小さいアリが来ていました。花の蜜には毒が含まれていないのでしょうか。ハエドクソウは花や葉の形状や花期の違いによって「ハエドクソウ」と「ナガバハエドクソウ」の2種類に区別されることがあります。写真のハエドクソウは葉の基部の形状などからナガバハエドクソウだと思います。

2018.07.20

ベッコウハゴロモの幼虫とハゴロモヤドリガ

 第二オークヒルのクサギの葉の上にベッコウハゴロモの幼虫がいました。ハゴロモの仲間は植物の汁を吸って生きています。幼虫の腹部には分泌物からできた毛のようなものがあるのが特徴です。しかし、この個体は下の写真のように、さらに白いかたまりを背負っています。


 白いかたまりはハゴロモヤドリガというハゴロモに寄生するガの幼虫です。ハゴロモヤドリガの幼虫が分泌するロウ物質によって白いかたまりを背負っているように見えています。ロウ物質を分泌するのは老齢幼虫の特徴とのことで、このハゴロモヤドリガは間もなくハゴロモから離れて蛹になると考えられます。

2018.07.17

ヤマユリ

 校内でヤマユリが開花しています。手のひらほどの大きな花で、強い芳香があります。とても立派な花なので園芸品種のようですが、本州の近畿地方以東に自生している日本固有の野生植物です。


 校内では急な斜面に垂れ下がるように咲いている個体はよく見ますが、平らな場所に生えているものはほとんど見ません。ヤマユリの「鱗茎(りんけい、いわゆる球根)」は苦味がなく、ゆり根として食用になります。おそらくイノシシなどの野生動物も鱗茎を掘って食べてしまうので、斜面など掘って食べにくい場所にある個体が残っているのだろうと考えられます。

2018.07.13

ムナブトヒメスカシバ

 共生の森でムナブトヒメスカシバを見つけました。黒地に黄色い帯の模様があり、ハチのようにも見えますが、スカシバガというガの仲間です。

 スカシバガの仲間は日本で40種ほどが知られており、すべての種が形態や行動でハチに擬態しているそうです。本種は日本産スカシバガの中で最も小型で、大きさはわずか2cm弱しかありませんでした。角のように見えているものは脚で、本種は止まるときに中脚を上げる習性があります。幼虫はノイバラの枝などに潜って食害することが知られており、庭に植えられたラズベリーを食害した例もあるそうです。

2018.07.10

ネジバナ

 古くなった木製のベンチにネジバナが咲いていました。花が茎にらせん状につき、ねじれて見えることが和名の由来です。花のねじれの向きは決まっていないようで左巻きや右巻き、ほとんどねじれないものなど変異があります。


 ネジバナはランの仲間です。下の写真は花をアップで撮影したもので、小さくてもちゃんとランらしい左右対称な花のつくりをしています。ランの仲間には絶滅危惧種に指定されている希少な種も多いですが、ネジバナは最も身近に見られるランの仲間と言ってもよいのではないでしょうか。


 芝生に交じって群生し、雑草のように扱われることもあるネジバナですが、いざ育てようと思うと意外に難しいことが知られています。それはランの仲間は菌根菌と呼ばれるカビやキノコの仲間と共生しており、菌根菌がいない環境に移されてしまうと弱って枯れてしまうからです。一枚目の写真のネジバナも、かわいそうだからと別の場所に植え替えてしまうとかえって弱ってしまう可能性があります。一見すると土もなく厳しい環境に見えるベンチの上も、ネジバナにとっては菌根菌に囲まれて、他にライバルとなる植物のいない快適な環境なのかもしれません。

2018.07.06

ハナイカダ

 校舎の裏の斜面にあるハナイカダの果実が紫黒色に熟していました。葉の中央に花をつけるというユニークな特徴をもっています。ハナイカダという和名は、この特徴を筏(いかだ)に乗る人の姿に見立てたことが由来になっています。

 ふつう、植物の芽は茎の先端か、「葉腋(ようえき)」と呼ばれる葉の付け根にできます。花芽も茎の先端か葉腋にできるのがふつうなので、葉の中央に花が咲いていると違和感を覚えます。しかし、上の写真をよく見ると、葉の付け根から果実までの葉脈が太くなっていることに気が付きます。ハナイカダは、葉腋から伸びた花の軸と葉脈が癒合した結果、葉の中央から花が咲いていると理解されています。

2018.07.03

タシロラン

 校内でタシロランの開花を確認しました。全体が白いのは葉緑体を持たないためです。タシロランは養分のすべてを光合成ではなく土壌中の菌類から得ています。

 1970年代までは大変珍しいランでしたが、最近では分布域を広げつつあるようです。常緑広葉樹林内に生えるということで、そのような環境が増えているのかもしれません。とはいえ、現在も環境省によって準絶滅危惧種に指定されており、環境の変化によって絶滅の危機に瀕する可能性があります。不二聖心ではこの季節になると注意して観察していますが、見られる年と見られない年があります。今年はこの1株しか確認できていません。今後も観察を続けたいと思います。