フィールド日記
2013年08月
2013.08.29
クズの花とウラギンシジミの幼虫
2013.08.29 Thursday
猛暑の影響もあるのか、今年はクズの花の開花状況が例年以上に良いように感じます。不二聖心の校内でも東名高速沿いのクズの群落ではたくさんの花が咲いています。
クズの花を食べるウラギンシジミの幼虫もよく見かけます。擬態しているためになかなか見つけることのできない幼虫を次々に発見することができました。
今日のことば
多くの場合、「自分探し」は時間の無駄である。虚構の自分を探し歩くより、日々自分がなすべきこと、目の前にあることを一つ一つ丁寧にこなしていくなかに真の悟りがある。
斎藤兆史
2013.08.26
キアゲハ ゴミグモ
2013.08.26 Monday
牧草地で吸蜜するキアゲハを見つけました。キアゲハの幼虫の食草であるセリ科の植物が豊富な不二聖心では、このような風景を時々目にすることができます。
東日本大震災の被災者をサポートする「きらきら星ネット」という団体が支援する福島の小学生に不二聖心の自然を案内しました。下の写真はその時に一緒に見たゴミグモの写真です。ゴミの中央に自分の身を隠すクモの擬態の見事さに小学生は感動の声をあげていました。
今日のことば
木を植えることは、私たちのこころの中にも木を植えることである。そして人類と地球上のすべての生き物の未来を保障することである。
宮脇昭
2013.08.24
赤紫のゲンノショウコ ササキリの成虫
2013.08.24 Saturday
牧草地の脇の道に赤紫のゲンノショウコが咲いていました。ゲンノショウコは赤紫の花が西日本に多く、白い花が東日本に多いと言われますが、不二聖心では、両方の花を見ることができます。
ササキリが成虫になりました。東北南部以南に生息する昆虫です。
動植物の地域ごとの生息状況の違いを知ると日本列島の広がりが見えてきます。
今日のことば
名も知らぬ 遠き島より
流れ寄る 椰子の実一つ
故郷(ふるさと)の岸を 離れて
汝(なれ)はそも 波に幾月(いくつき)
「椰子の実」(島崎藤村)より
2013.08.23
ナンバンギセル ツチイナゴ
2013.08.23 Friday
すすき野原で次々にナンバンギセルが開花しています。ナンバンギセルはススキに寄生する植物として知られていますが、寄主はススキだけとは限りません。画像を見るとササの根の近くからナンバンギセルが生えていることがわかります。
ツチイナゴの幼虫も少しずつ大きくなってきました。ツチイナゴは「クリスマスのバッタ」とも言われます。クリスマスの頃でもまだ見られ、成虫で越冬するからです。その頃には周りの景色に合わせて茶色の体色に変わっています。ツチイナゴという名前の「ツチ(土)」は成虫の体色の茶色に由来します。
今日のことば
知らないことは罪である。知った時から責任が生じる。
山本美香
2013.08.21
ツリガネニンジン
2013.08.20 Tuesday
牧草地の脇の斜面にツリガネニンジンが咲いています。エッセイストの手塚宗求さんは、山小屋の周囲に防風林を作るとき、そこがツリガネニンジンの咲く場所であることを考えて木を植えるのをためらったと随筆にお書きになっています。いつの世にも人の心を不思議と引きつけるツリガネニンジンの花です。
今日のことば
人は、生涯の中でやりおおせることは、そう幾つもはない。私もそうだ。その数少ない、やってきてよかったと心が安らぐような、確かな仕事のうちに、小さな林を造ったことが入るだろう。
手塚宗求
2013.08.18
オオフタオビドロバチの土集め ツノトンボの孵化 アキカラマツの開花
2013.08.18 Sunday
聖心橋に向かう途中の坂で毎年8月に、オオフタオビドロバチが巣作りのための土を集めに来る様子が見られます。今年もたくさんの土が集められ、斜面には既にくぼみができていました。
牧草地では、ツノトンボの幼虫が孵化していました。日本各地で希少種に指定されているツノトンボの孵化も毎年不二聖心で観察できます。
裏の駐車道から続く道ではアキカラマツが咲き始めました。これもまた不二の自然の8月後半のおなじみの風景です。花の中にツユムシの幼虫とコハナバチが写っているのがわかるでしょうか。
酷暑の中でも自然界は正確に時を刻み続けています。
今日のことば
本の光をあびよ
そこに本がある
それだけでいい
それだけでホッとする
本の光をあびる
本の匂いをかぐ
本の鼓動をきく
読んでもいい
読まなくてもいい
今日一日を
書物浴の日にしてみないか
窪島誠一郎
2013.08.16
スケバハゴロモ
2013.08.16 Friday
裏の駐車場でカメムシ目ハゴロモ科スケバハゴロモの写真を撮りました。カメムシ目ハゴロモ科に属する昆虫が日本には何種か生息していて、スケバハゴロモのその中の1種になります。不二聖心ではベッコウハゴロモやアミガサハゴロモなども確認されていますが、個体数が最も少ないのはスケバハゴロモのように思います。島根県は絶滅の恐れのある動植物の中にスケバハゴロモを含め、個体数減少の要因として、森林破壊や殺虫剤散布を挙げています。三保の松原の羽衣伝説が改めて注目を集めている今、羽衣ゆかりの昆虫たちに目を向けて見るのもいいかもしれません。
今日のことば
空にさえずる鳥の声
峯より落つる滝の音
大波小波とうとうと
響き絶やせぬ海の音
聞けや人々面白き
この天然の音楽を
調べ自在に弾きたもう
神の御手の尊しや
「美しき天然」(武島羽衣)より
2013.08.15
マツムシはいつ鳴き始めるのか
2013.08.15 Thursday
8月2日に牧草地で採集し、観察のために飼育していたマツムシのオスの幼虫が無事成虫となり、2日前から鳴き始めました。観察の主たる目的はマツムシの鳴く時間を左右する要因の確認でした。昨晩の鳴き始めは22時44分でした。2日間とも22時を過ぎてから鳴いています。不二聖心で22時以前にマツムシが鳴くことは既に確認ずみですから、マツムシは一定の時間に鳴き始めるのではなく、ある気温以下になった時に鳴き始める可能性が高いことがわかりました。
下記の記事の3枚目の画像が同じ個体の8月2日の姿です。
フィールド日記 2013.08.03 ヒメギス マツムシ シロオビタリノフンダマシ
今日のことば
犀星の虫好きを、夏だけ出入りの骨董屋、畳屋、経師屋などが知り、碓氷峠を松井田のきりぎりすなどを運んでくれて、八月になと何時の間にか、軽井沢周辺の虫が犀星の元に集まって来る。
竹で編んだ三十個あまりの大小の虫籠を、経机の上に積み重ね、昼は日光浴をさせるのだといい、いくつかの錦木や紅葉などの小枝に吊るしておく。山の天気は変りやすく、隣の家に日光があたっていても、家の庭に太い夕立の雨足がおそって来ることがある。裏山に沢山の洗濯物がはためいていても、虫達を先に家に入れないと、犀星の機嫌は悪いのであった。
朝食がすむと縁側に花茣蓙を敷いて、虫達の餌のとり替えをする。胡瓜、茄子、南瓜、梨や桃の一切れ、煮干し一匹、などを小さいお盆に並べ、ピンセットでひとつずついれかえるのである。時にはつゆくさの短いひと茎もいれる。
「煮干しのようなかたいものが、あの小さい胃袋でよくこなれるものだね」
と犀星は、共喰いを防ぐために動物性のものを与えるのを知らなかったのだろうか、不思議がっていた。
「今夜のお伽はこのきりぎりすだ」
と、沢山の虫籠のなかから、毎夜枕元に置く一匹を選び出す。
三十匹以上いる虫の声が、それぞれ聞き分けられるという犀星の観察力を、私はこわいと思った。あとの虫達は経机にひとまとめにして、茶の間におかれて夜をすごす。
虫の命は夏だけのはかないものである。犀星が九月末に帰京するまでに、ほとんど夏の百日の鳴く使命を果し、毎朝何匹かは死んでゆく。時には稀に命永らえる虫もあり、九月末家を片づける時まで生き残ったものを、犀星は白いハンカチーフに虫籠ごと包んで、自分で持って帰って来る。
東京まで来た虫は、夜毎鳴き方はまばらになり、声の艶や張りもなくなって来る。夜は寒いだろうと、犀星は自分の寝室に運び、暖をとるために小裂をかけてやっていた。私の記憶では、クリスマス頃まで生きていたものもあった。夏百日どころか、命ぎりぎりまで鳴き声を楽しませてくれた虫が死ぬと、犀星は何日もかかって、縁側の陽だまりで日光浴をさせる。虫の体は少しずつ水分を失い、やがてカラカラした軽い物体となる。それを朱の小箱に綿を敷きつめたなかに並べて、そっと飾り棚にしまっておく。生命が失われても、自分を楽しませてくれた虫一匹をも、粗末に扱わない。犀星の感情は最後までを看とり大切にしないと、納得出来ないのである。小さい生き物にまで、しかもそれが死んだあとも、細かい愛情を充分に持っていた人であった
『父 犀星の俳景』(室生朝子)より
2013.08.12
希少種アイナエの自生地を確認
2013.08.12 Monday
「夏休み子供自然体験教室」で講師を務めた平本政隆教諭によって、牧草地におけるアイナエの自生が確認されました。秋田県、東京都、大阪府ではアイナエは絶滅したとされています。場所によっては足の踏み場もないほど牧草地はアイナエであふれています。
今日のことば
2013.08.09
オナガグモの擬態と卵のう エントモファガ・グリリの策略
2013.08.09 Friday
昨日は「第2回夏休み子供自然体験教室」が行われました。
自然観察、生き物探しコンテスト、シルバーコンパス体験講座、標本づくり、ウッドバーニングなどの活動を行いましたが、自然観察の時に2つ驚いたことがありました。
1つ目は、クヌギの樹液について説明する場所のちょうど目の前に、松の葉に擬態すると言われるオナガグモが網を張ってくれたことです。しかも卵のうを大切に守っている様子まで観察することができました。
第1回の体験教室の時に、「共生の森」でエントモファガ・グリリ(昆虫病原性糸状菌の一種)についての話をしました。エントモファガ・グリリはバッタ類に寄生してバッタを丈の高い草に登らせて、その上で息絶えさせるという不思議な菌です。バッタが高い位置で死ぬということは、自分も高い位置まで登ることができるということで、風に吹かれた時により遠くまで広がっていくことができます。第1回の体験教室の時に紹介した、エントモファガ・グリリに寄生されたショウリョウバッタが、既にいなくなっていたので、第2回は別の話題を用意して臨んだのですが、説明の直前に菌に寄生されたショウリョウバッタがオオアレチノギクのてっぺんに登ってくれました。これが驚いたことの2つ目です。今日確認したところ、昨日は確かに生きていたショウリョウバッタが息絶えていて既に頭はカマキリか何かに食べられたあとでした。
今日のことば
「夏休み子供自然体験教室」の生徒スタッフの感想より
私は昨年に引き続き2回目の参加となります。そして高3最後の年となりました。一人でも多くの方に不二聖心の自然を感じていただくとともに、私の大好きな不二聖心の魅力をお伝えすることが私の幸せであり、不二聖心への恩返しになればと思い参加を希望しました。
昨年、私が担当した6年生が、今年は生徒スタッフとしてお手伝いに加わってくれたことが、何より嬉しいです。
学校説明会では校内案内だけですが、この自然教室は保護者の方も一緒に普段は入れない不二聖心の森にご案内します。より不二聖心の素晴らしさをお伝えできることに幸せを感じました。
できれば来年は卒業生枠を作っていただき、引き続きお手伝いに参加させていただけたら嬉しいです。
この2日間生徒スタッフとしてお手伝いに参加する機会を与えてくださり、ありがとうございました。
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