フィールド日記
2012年07月
2012.07.20
鹿の親子 鹿の食害
2012.07.20 Friday
今朝、聖心橋の手前のカーブを曲がったら、いきなり目の前に鹿の親子が現れました。
あわてて車の中からシャッターを押しましたが、鹿はすぐに姿を消してしまいました。
7月4日に植樹を行った「共生の森」では、すでに鹿の食害が発生しています。特にマユミの木の被害はひどく、ほとんど枝だけしか残っていません。現在、無毒の忌避剤の導入を検討しています。
今日のことば
自然を守る運動は、初めはその破壊に対する告発から始まり、次に自然を守るための規制を要求するようになる。だがその地点でとどまっていることも、また許されない。なぜなら自然を破壊するものは、具体的契機としては、開発や自然の改造であるとしても、その基礎には、私たちの近代から現代にかけての歴史と、その精神がよこたわっているからである。
だから私は人間の理性の力で森を守ろうとすることにも躊躇する。今日の人間の理性とは、現代社会の精神と分かちがたいものでしかない。
恐らく森は、人間たちの営みの確かさをとおしてしか守れないであろう。森とともに暮らす人々の営み、そしてそんな人々を支えていく私たちの営み。そのさまざまな営みが、永遠に循環し続けるように展開していく森の時空とともにあるとき、森は永遠である。
内山節
2012.07.19
ヤマユリ ニイニイゼミの羽化
2012.07.19 Thursday
校舎の裏の道でヤマユリが咲き始めました。不二聖心にはたくさんのヤマユリが自生し、夏の自然に豊かな彩りを添えています。
ヤマユリのすぐ横では、ニイニイゼミが羽化していました。昨日の「夏休み子供自然体験教室」生徒スタッフ事前研修でも一人の生徒がニイニイゼミの抜け殻を見つけました。ニイニイゼミはおそらく夏の不二聖心で見られる、最も個体数の多いセミです。
今日のことば
ある日のこと、わたくしは幾人かの子どもたちと、麦のよくのびた田んぼ道を話しながら
歩いていました。すると一人の子どもが、ちょろちょろと麦畑のなかへ走っていきました。
何をしにいったのだろうかと思って残っている子どもたちにきくと、ひばりの巣を見にいっ
たのだそうです。その子の見つけておいたひばりの巣が、その麦畑のなかにあるのだそうでした。
その子どもはまもなく帰ってきました。そして、
「あったか」
ときく子どもたちに、
「あった」と嬉しそうに答えていました。
そのうちに頭の上へ低く一羽のひばりがおりてきました。それをみてさっきの男の子は、
「あれはおれのひばりだ」
とお友だちに話していました。これは、
「あのひばりがおれの見つけておいた巣の親鳥だ」
という意味なのですが、それをその子はいかにもあたりまえのようにいうのですから、私は
すっかりびっくりしてしまいました。
この時期になると、田舎の子どもたちは、だれでも一つや二つの「自分のひばりの巣」を
持っていないものはありませんでした。そして一度だれかが見つけた巣は、もう誰も手をだ
すことはできないのです。それが子どもたちのなかまのきまりなのです。子どもたちのなか
までは、そういうきまりがしっかりと守られているのです。「あれは誰ちゃんの巣」という
ことを、誰も誰もが知っているのです。
斎藤喜博
2012.07.18
ツノトンボ 夏休み子供自然体験教室生徒スタッフ事前研修
2012.07.18 Wednesday
今日は「夏休み子供自然体験教室」の生徒スタッフの事前研修を行いました。すすき野原を歩いていたら、絶滅危惧種のツノトンボに出会いました。写真の後ろに写っているのはナワシロイチゴの実です。暑い午後の研修でしたが、野イチゴで喉の渇きを癒しながら生徒たちは研修に励んでいました。
今日のことば
あの丸木橋をわたると
だれもいそがない 村がある
まめのつるに まめのはな
こうしのつのに とまる雲
そのままで そのままで
かげぼうしになる 村のはなし
岸田衿子
2012.07.17
タケニグサの花とミツバチ
2012.07.17 Tuesday
タケニグサの花が裏の駐車場で咲き始めました。目立つ花ではありませんが、思いのほか、多くの命を養っている花です。今日はセイヨウミツバチが賑やかに羽音を立てていました。
今日のことば
実際に生きている人間の直感の方が、科学的知を超えて物事の本質に迫る瞬間がある。
高木仁三郎
2012.07.16
カヤキリ
2012.07.16 Monday
不二聖心女子学院主催の「夏休み子供自然体験教室」の活動場所に予定されている第1牧草地でカヤキリの幼虫の写真を撮りました。カヤキリは日本最大のキリギリス科の昆虫で、全国各地で生息数が減少しています。幼虫がなぜこのように体を真っ直ぐに伸ばしているのか、理由はわかりません。
夏休み子供自然体験教室では、成虫となったカヤキリが野趣にあふれた鳴き声を聞かせてくれることを期待しています。
今日のことば
朝日新聞社の新刊『すりへらない心をつくるシンプルな習慣』(心屋仁之助著)に、「嫌
な出来事のあとに『おかげで』をつけてみる」という助言があった。あの失敗のおかげで今
がある、という風に。
著者いわく「チャンスはピンチの顔をしてやってくる」。その時は辛くても、何かの肥やし
になったと後で思える体験は多い。すべては癒やせないにせよ、心の古傷に前向きな意味を
与え、一歩を踏み出したい。
「天声人語」(2012.07.16)より
2012.07.15
エサキモンキツノカメムシ
2012.07.15 Sunday
「共生の森」に向かう坂道の途中で、背中のハート模様が特徴的なエサキモンキツノカメムシの写真を撮りました。エサキモンキツノカメムシという名前は昆虫学者の江崎悌三にちなんでつけられました。このカメムシは6月の下旬になるとミズキの葉の裏に30個~60個の卵を産み、メスはその卵を自分のからだの下において保護します。卵が孵ってからもからも親はしばらく幼虫のそばを離れません。つまりこのカメムシは子育てをするカメムシなのです。
今日のことば
実生活を生き抜くことで、生を濃密なものにしていけばよい。 加藤治郎
2012.07.14
コマツナギ ネジバナとハナバチ
2012.07.14 Saturday
コマツナギが花を咲かせ始めました。山形県で絶滅危惧Ⅱ類に指定されているのをはじめとして各地で数を減らしつつある植物です。花の一つ一つはとても小さいですが、その大きさにぴったりあった双翅目の昆虫が訪花していました。
こちらはネジバナです。ネジバナはラン科の植物で、小さな花の一つ一つがランの花の特徴を備えています。こちらにはハナバチがやってきていました。
どんな小さな花であってもそれに合った送粉者がいることに驚きます。
今日のことば
わたしも
いちまいの葉にすぎないけれど
あつい血の樹液をもつ
にんげんの歴史の幹から分かれた小枝に
不安げにしがみついた
おさない葉っぱにすぎないけれど
わたしは呼ばれる
わたしは呼ばれる
わたしだけの名で 朝に夕に
だからわたし 考えなければならない
誰のまねでもない
葉脈の走らせ方を 刻みのいれ方を
せいいっぱい緑をかがやかせて
うつくしく散る法を
名づけられた葉なのだから
考えなければならない
どんなに風が強くとも
「名づけられた葉」(新川和江)より
2012.07.13
中学1年理科の授業 夏の校庭の観察 ウスバキトンボ
2012.07.13 Friday
7月12日の中学1年生の理科の授業で小野加代子教諭の指導のもと、夏の校庭の観察が行われました。
春の観察との違いの発見をテーマに行われた授業では、ツユクサを発見したり蝉の鳴き声を聞いたりすることができました。気温は28.9℃、湿度69%で教室にいるよりも気持ちよく感じられました。
「あっ、シカの足跡だよ。この跡をたどるとシカに遭えるかも」
秋の観察ではどんな変化が見られるか楽しみです。
昨夜は真夜中まで大雨警報が発令され続ける大荒れの天気となりました。裏の駐車場では今朝、雨にぬれた羽を乾かすウスバキトンボの姿が見られました。ウスバキトンボは世代交代を繰り返しながら北を目指し、9月頃には北海道までたどり着きます。最後は寒さで死んでしまうのですが、それがわかっていながら何故ひたすら北を目指すのかは謎です。
今日のことば
地球のこよなき美しさは、生命の輝きのなかにあり、それはすべての花びらに新しい思考を
生みおとす。われわれは、美しさに心を奪われている時にのみ、真に生きているのだ。他は
すべて幻想であり、忍耐に過ぎない。
リチャード・ジェフェリーズ
2012.07.12
ナナフシ ナナフシ茶
2012.07.12 Thursday
昨日は印象に残る出来事がいろいろあった一日でした。帰宅する時には坂道で子ダヌキに出会いました。子ダヌキは、車を見て一度は茶畑に隠れたものの、声をかけるとまた顔を出しました。再び木の中に隠れてからもしばらく鳴いていました。野生の子ダヌキの声を聞いたのは初めてです。
昼間、驚いたのは職員室の網戸についていたナナフシです。その大きさに職員室はちょっとした騒ぎになりました。
5月4日には、まだクヌギの葉の上にちょこんと乗るほどの小ささでした。
今日のことば
ナナフシは雑木林のまわりにいることが多く、コナラ、クヌギ、サクラ、ケヤキなどいろい
ろな木の葉を食べる。この細長い枝のような虫が歩くとグロテスクに見え、何か変わったも
のを食べると想像する人が多いせいか、葉しか食べないというと逆に驚かれるが、孤独を楽
しんで静かにくらしている。そういえばマレーシアではナナフシを飼って、その糞を乾かし、
熱湯をそそいで「お茶」にして飲むという話を聞いた。ナナフシ茶とは粋である。
『昆虫ノート』(矢島稔)より
2012.07.11
セダカシャチホコ スカシバ
2012.07.11 Wednesday
雑木林でセダカシャチホコの写真を撮りました。幼虫はクヌギの葉を食べ、自分の糞を投げるというユニークな習性を持っています。
職員室の近くの中庭ではクチナシの葉を食べるスカシバの幼虫を見つけました。
このように多くの昆虫はそれぞれの食草を持っていて、そこから生き物同士のさまざまなつながりが生まれていきます。
今日のことば
庭の菊をとりに出て
ふと南の山を見ている。
空は澄みわたって
鳥ふたつ、つれそって
林に帰ってゆく。
こういうひとときにはなにか
永遠の真理があると感じるが
それがなにかは
どうも言えんのだよ。
陶淵明「飲酒」(加島祥造訳)より