フィールド日記
2012年06月
2012.06.30
マスダクロホシタマムシ
2012.06.30 Saturday
スギやヒノキの樹皮下で成長するマスダクロホシタマムシの写真を撮りました。法隆寺の
「玉虫の厨子」で有名なヤマトタマムシは不二聖心でも数多く確認されていますが、マスダ
クロホシタマムシは初記録ということになります。ただし、スギやヒノキの広大な林を有す
る不二聖心にはヤマトタマムシをはるかに上回る個体が生息している可能性があります。ス
ギやヒノキを食べる害虫とされていますが、材に深く食い入ることはありません。被害が少
ないためにそれほど有名になることもなく、あまり目立たず静かに暮らしているタマムシと
いう印象を受けます。
今日のことば
自然を見るということは、その奥におられる神を見ることじゃないでしょうか。自然をじっ
と見ることで、少しでも神に近づくことができたら、と思いますね。
稲畑廣太郎
2012.06.29
クスサンの幼虫 白髪太郎
2012.06.29 Friday
今日もモリアオガエルがよく鳴いていました。こんなに長期にわたって鳴き続ける年は珍しいような気がしています。今年は鳴き終わる時期を記録しておきたいものです。
裏の駐車場と雑木林の間に一本の細い道があります。その道のつきあたりのクスの木にクスサンの幼虫が大量発生しています。白髪太郎という別名を持つ幼虫で、昔はこの幼虫の腸腺から釣り糸にするための糸をとっていました。ナイロン製の糸ができるまで日本の釣文化はこの虫によって支えられていたのです。
矢口高雄の『ニッポン博物誌 ――イワナの恩返し――』(講談社漫画文庫)に収められている「白髪太郎」という短編にそのあたりのことが興味深く描かれています。(下の写真参照)
月曜日に「夏休み子供自然体験教室」の生徒スタッフのメンバーと体験教室のコースの下見をしたのですが、この幼虫を目の前にして実際に糸を採ってみたいと言った生徒がたくさんいたのに驚いてしまいました。
今日のことば
若い人たちに私は言いたい。もし本当に何かをやりたいと願うなら、やってみるがいい。君たちにはそれが出来るのだ。森を救うために闘うことだけがすべてではない。身近にやれることはたくさんある。木を植え、自然の回復をはかることもそのひとつだ。いま、世界ではたくさんの不愉快なことが起こっている。だが同時に、世界中のいたるところで、木を植え、森を作り、森を広げようとしている人々や組織があるということも事実なのだ。北海道から西表島、小笠原にいたるまで、そう、深い渓谷から険しい山々にいたるまで、日本の森林は極めて豊かで、多様性に富んでいる。そこには君たち若者が学び、愛し、保護するための貴重
な自然という宝が隠されているのだから。
C.W.ニコル
2012.06.28
オニヤンマの羽化 竹の根
2012.06.28 Thursday
高校1年生の教室の入り口のところでオニヤンマが羽化していました。裏道沿いの小川でオニヤンマの幼虫の生息は確認されていますが、そこまでは相当な距離があります。いったいこのヤゴはどこから上がってきたのでしょうか。きれいな水が流れている場所がどこかにあるに違いありません。
トンボの羽化が見られた場所のすぐ近くに、昨日の「共生の森」づくりで生徒たちが抜いた竹の根が団結の証として飾られていました。日本一大切にされている竹の根かもしれません。
今日のことば
虫や花たちは今日を悔やんだり、明日を思い悩んだりせず、今この瞬間だけを懸命に生きています。
その生涯を精一杯まっとうしようと、最後まで命を燃やし続けるのです。
そのことに気がついたら、花や葉が枯れ落ちて土に還っていく姿まで美しいと感じるようになりました。
熊田 千佳慕
2012.06.27
「共生の森」づくりいよいよスタート カマキリの幼虫
2012.06.27 Wednesday
今日は、NPO法人「土に還る木・森づくりの会」の方々の協力を得て、高校1年生が
「共生の森」に48本の支柱を立てました。7月4日にはいよいよ苗木を植栽することになります。
竹の根には悩まされましたが、ついに自分たちの力で4メートル近くの根を引き抜きました。
作業の途中でたくさんの生き物とも出会うことができました。
今日のことば
わたしは裸で母の胎を出た。
裸でそこに帰ろう。
主は与え、主は奪う。
主の御名はほめたたえられよ。
「ヨブ記」より
2012.06.26
カエルに異変? モリアオガエルが地面に産卵
2012.06.26 Tuesday
6月24日の読売新聞に「カエルに異変? 水から離れた枝に産卵」という記事が載りました。東伊豆町奈良本のリゾートマンションでモリアオガエルが下に水がない場所に産卵する現象が2年続いて住民を驚かせていると報じられていました。実は不二聖心でも同じようなことが起こっています。不二聖心の場合は池から離れた枝どころではなく、池から離れた地面に直接産卵するようなことが起こっているのです。上の写真は23日に撮ったもので、翌日には下の写真のようになっていました。記憶にある限り初めて見る現象です。今年は池の
近くで産卵するモリアオガエルも非常に数が多く築山の池の枝垂れ桜の卵塊数は通算で30を超えました。
今日のことば
モリアオガエルは樹木に泡のような卵塊を産みつける。繁殖地として国の天然記念物に指定
されている福島県川内村の平伏沼で、産卵が最盛期を迎えたそうだ。原発禍で避難を強いら
れた村は、カエルにちなんだ「かえる かわうち」を合言葉に帰村と復興をめざしている。
「天声人語」(2012.06.24)より
2012.06.25
ツマグロヒョウモン
2012.06.25 Monday
ツマグロヒョウモンの写真を撮りました。最も有名な温暖化指標の昆虫であるツマグロヒョウモンは、温暖化の進行とともに生息域を北に広げていると言われています。しかし、生息域の拡大の要因は温暖化だけとは限りません。食草とするスミレ科のパンジーなどが寒さに強いことも関係しているでしょうし、ツマグロヒョウモン自体が寒さに対する耐性を身につけてきたとする見方もあります。物事を判断する時に多角的な視点が必要であることをツマグロヒョウモンは教えてくれます。
今日のことば
We are on the move now, like an idea whose time has come.
今、私たちは進んでいる、時の勢いにのった考えがとどまることを知らないように。
キング牧師
2012.06.23
アメイロカミキリ クマノミズキ
2012.06.23 Saturday
昨日の夕方、今年はじめてヒグラシの声を聞きました。自然界の音の中でもとりわけ心ゆさぶられる音です。
「共生の森」の、台風4号で倒れたクマノミズキの花にアメイロカミキリ(Stenodryas clavigera clavigera Bates, 1873)が来ていました。アメイロは飴色を意味し体色に由来する和名ですが、生活の中から水飴等が姿を消しつつある現状を思うと、いつの日かアメイロカミキリの体色を通して飴を懐かしむ時代が来るかもしれないと思ったりします。
今日のことば
かなかなの今年のこゑよあかときの闇にとほればわれは目覚めぬ 上田三四二
2012.06.22
Xylota属のハナアブ 森の健康診断
2012.06.22 Friday
「共生の森」で見つけたハナアブ(下の写真参照)を専門家の方に同定していただいたところ、このハナアブはXylota属の一種であり、Xylota amamiensisナミルリイロナガハナアブかXylota coquillettiミヤマルリイロナガハナアブの可能性が高いという回答をいただきました。いずれの種であったとしても不二聖心初記録となります。
矢作川水系森林ボランティア協議会の方から、6月13日に不二聖心で行った「森の健康診断」の様子をホームページにアップしたという連絡をいただきました。関心のある方は、どうぞご覧ください。
http://mori-gis.org/
明日は学校説明会です。不二聖心に一人でも多くの方が来てくださることを願っています。
今日のことば
考えてみると、私たちが日常で一番素直に「うきうき、わくわく」できるのは、誰かを喜ば
そうとしているときかもしれない
竹下節子
2012.06.21
クマノミズキ ハナムグリ
2012.06.21 Thursday
台風4号で「共生の森」も被害を受けました。下の写真の倒れている木はクマノミズキです。
倒れてもなお花は咲き続けていて多くの命を養っていました。
今日のことば
農薬が流れ込み、我々が利用している川を汚してきた。この20年間、状況は悪化する一方。
持続可能な開発とはほど遠い状況だ。
ブラジルの先住民のリーダーのメガロンさん
2012.06.20
クマヤナギ クマヤナギハフクロフシ
2012.06.20 Tuesday
「共生の森」の一角にクマヤナギの木を見つけました。20年以上、誰の目にもふれなかった木です。葉にはクマヤナギハフクロフシという虫こぶがついていました。
クマヤナギは古くから肝炎や胆石の漢方薬として用いられてきました。これから迎える花の季節が楽しみです。
今日のことば
多くの人は、ことが思いのままに進まないと、すぐに忍耐を失い、落胆するものである。
どんな道を歩むかは、人の手中にあることではない。慰めの恵みを誰に、いつ、いかにして、
与えるかは、すべて神の御旨にほかならない。
『キリストにならう』より
- 1 / 3
- 次のページ »