校長室から

2019.09.20

ナントの聖心にて

先週、フランスのナントにある姉妹校を訪問しました。祖母・母がフランスの聖心の卒業生です、という国際交流担当の先生が駅まで迎えに来てくださいました。校長先生は日本に2度いらしたことのある男性の方で、校長室には日本の絵画が飾られていました。他のフランスの私学同様、ナントの聖心は共学です。第一印象は、不二聖心とは随分違うようにも感じましたが、次第に、同じ創立者の精神が息づく学校としての共通点も見えてきました。

札幌聖心に留学していた生徒の隣りで、一時間、フランス文学の授業にも参加しました。その教室は、日本にも多くみられる教師・生徒が対面式の形態でしたが、生徒の発言で授業がつくられていくのが印象的でした。高校2年生ですので、バカロレアを意識していることもあるのでしょうが、睡魔に襲われがちな昼休み直後の授業にもかかわらず眠そうな生徒は一人もいませんでした。

この学校には、第3外国語の一つに日本語の授業があります。そこで教えていらっしゃる日本人の先生が、留学生として迎えてきた生徒達に関して、「フランス語がよく話せるからといって相手に伝わるわけではないし、上手ではないから伝わらないわけでもない」とおっしゃっていました。世界中どこにいても、人として大切なことは変わらない同じなのでしょう。志の高さ、賢明さ、そしてたくましさをもって、いつかここで学ぶ生徒が出てくるかもしれません。
 

2019.08.20

セントチャールズにて

8月の初め、生徒たちとセントチャールズの聖心を訪ねました。お休み中にもかかわらず、温かく迎えていただきました。ここはアメリカで一番最初に建てられた聖心の学校で、その基となった聖ローズ・フィリピン・ドゥシェーンが晩年に過ごしたお部屋や、棺が安置されている聖堂等があります。列聖される時には、祝日が制定され、その人の生涯にふさわしい聖書の箇所がミサの朗読個所として定められます。彼女の場合は、ヨハネ福音書12章の「一粒の麦」の箇所が選ばれました。

    一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。
    だが、死ねば、多くの実を結ぶ。
       (新約聖書 ヨハネによる福音書12章24節)

最終日、聖堂で、分かち合いと祈りの時をもちました。一人ひとりの分かち合いの中に、未来への志とともに、生涯を他者のために捧げた聖女のスピリットが強く感じられました。

2019.07.18

Form your own opinions!

夏休みに入る前、高校の国語弁論大会、英語スピーチコンテストが行われました。頼もしい発表を聴きながら、マザージャネット・スチュアートが、著書の中で、次のように述べている箇所を思い出しました。

There are cross-roads at about sixteen in a girl’s life. After two or three troublesome years she is going to make her choice, not always consciously and deliberately, ・・・・・It is when the mental outlook takes a direction of its own, literary, or artistic, or philosophical, or worldly, or turning towards home.・・・・・All this is faithfully rendered in the essays of that time. ・・・・・
(The Education of Catholic Girls”)

今回の発表者だけではなく、4月から様々な場で、自分の考えを表現する機会があったと思います。生徒達には、今、自分の中にある思いや考えを大切にし、知識の限界を乗り越え、一人ひとりが自らの考えを形成しながら、“ Design Your Future ”(本年度学院目標)に取り組んでいってほしいと願っています。

2019.06.22

紫陽花の頃

 学院の坂道の紫陽花は、かつて正門の近くにあった桜の家修道院にお住まいだったシスター糸川澄子とシスター尾高良子が植えてくださったと伺っています。自分たちがいなくなっても、紫陽花が子どもたちや来校者を迎えてくれるでしょうから、という思いで、一つ一つ丁寧に植えられたそうです。お二人とも、ご自分のことを後回しにされても、周りの人に尽くす方々でした。
 青、紫、ピンク等の鮮やかな花々が、夜は暗闇の中に白いぼんぼりのように幻想的に浮かび上がります。シスター糸川は天に召され、シスター尾高は東京の修道院に移られましたが、シスター方の祈りは紫陽花とともに、また裾野修道院のシスター方に受け継がれ、キャンパスに根づいています。

2019.05.25

創立者の月に

 月の創立者マグダレナ・ソフィア・バラ祝日行事には、ごミサの中で神父様に祝別していただいた本年度の学院目標入りの御絵を子どもたちに贈りました。続いて末吉里花さん(エシカル協会代表)より、エシカル消費についての講演を伺いました。折しも、国連WFP(UN World Food Programme)のローマ本部で活躍する卒業生の記事が届きました。
一連の出来事を通して、「たった一人の生徒のためにも聖心を建てたでしょう」という創立者の思いを現実的に深めるチャンスをいただいたように思います。

2019.04.05

2019年度 不二聖心女子学院 学院目標

 2019年度 不二聖心女子学院 学院目標

 聖心女子学院の教育は、カトリックの精神に基づき、「魂を育てる」「知性を磨く」「実行力を養う」の各領域においてバランスよく成長し、「社会に貢献する賢明な女性」として成長していくよう準備します。これら3つの領域が統合されていくためには、生徒・教職員が、各領域を自分自身と関連づけ、具体的に意識して学院生活を送ることが必要です。不二聖心女子学院では、毎年、一つの領域に焦点をあて、3年間の中で教育方針をスパイラルに深めていきます。今年は「知性を磨く」に焦点をあてた上で、学院目標を"Design your future! "といたします。
 年度の始めに生徒・教員が集うこの機会に、天性の教育者と呼ばれた聖心会第6代総長マザースチュアート(Janet Erskine Stuart:1857-1914)の御言葉に、共に耳を傾けてみたいと思います。彼女のメッセージは、著書The Education of Catholic Girls(『カトリック学校における女子生徒の教育』)等から知ることができます。1世紀以上前に書かれたものながら、時代や文化背景を超え、色褪せない響きをもっています。教える側を意識して書かれた内容であっても、生徒の皆さんにも助けになるのではないでしょうか。原文が英語ですので、上級生はそのままを味わうこともできるでしょう。

1) 学びたいという望みを深めるように
"Cultivate the wish to learn, rather than the wish to be taught. Be determined to "pick up" and do not wait for the Professor and the pedagogical devices of his or her craft...Do not think that lessons will do it, if you wait for lessons you will wait a life-time...If we wait to be taught, we shall never learn. "

教えられることを待つ者は、永遠に学ぶことはない――、厳しくも含蓄ある言葉です。逆にいえば、学びのエンジンが動き出したら、あとは自然に動き出すというような面もあるということでしょう。このように、主体的に何かをつかみとっていくという学びにおいて、今の皆さんはどうでしょうか?一人ひとり、振り返ってみましょう。授業の時間には、先生、そして共に学ぶ仲間と共に、豊かな学びの時間を創り上げていってください。学院の伝統である探究的な学習を大切にしてください。個々のテーマと向き合う卒業研究やESD等を通して正解のない問いに応える力を養っていくことができるでしょう。学習において具体的な成果を上げることは大切ですが、それに余りに固執して、失敗やリスクをとることを怖れないでほしいと思います。マザーが別の箇所で語っていらっしゃる言葉を借りるなら、あなた方には「小さな完成された作品」ではなく、「作り始められた大きな作品」であってほしいのです。

2) 未知なる未来に向かって
"We are then the discoverers of our own lives. Our world is new every day. Either we are sailing towards new shores, daring mariners in search of the unknown and day by day the horizon dips lower and our stars rise higher, or we are explorers by land, and new wonders reveal themselves on each day's march. "

私たちは、日々、未知なる未来に向かって、自らの人生を創造しています。新しく与えられた一日をどう生きるかは、自らの価値基準や目的、そこからくる態度や選びにかかっています。計画的であることは必要ですが、それだけにとらわれないようにいたしましょう。思いがけない変更を強いられる時、かえって回り道に見えたことに意味があったと後で気づくことも多いのです。与えられた時を真に生きたものとするため、先ほど朗読された聖書のように、「若き日にこそ、あなたの創り主である神を心に留め」(コヘレト書12:1)、永遠に価値ある愛のまなざしに基をおいて生活するよう心がけていきましょう。

3) より良い未来に向けての使命
"We must remember that each one of our children is destined for a mission in life. Neither we nor they can know what it is, but we must know and make them believe that each one has a mission in life and that she is bound to find out what it is, that there is some special work for God which will remain undone unless she does it, some place in life which no one else can fill. "

一人ひとりは、神様から、その人にしか果たせない使命が与えられています。一人の人の日々の学びや在り様は、周りの人々や、この世界の現実と深くかかわっていきます。私たちは皆、この世界の未来に対して責任があるということです。“Your Future”とは、あなた自身の未来であると同時に、共に生きる人々や地球の未来でもあるのです。皆さんには、世界の現状について考える機会が多く与えられています。どのような未来を創造していこうとするのか、他者と共に生きることを学びつつ(UNESCO「21世紀国際委員会」学習の4本の柱より)、固有の使命を見出していこうという気概をもって、日々の学びを深めてまいりましょう。

"It is always here and now, there is always the present moment to do the very best we can with,
and the future depends on the way these moments are spent. "  J. Stuart

イースター(復活祭)が近づくこの季節に、一人ひとりの思いを神様が守り、強め、導いてくださいますように。
2019年4月4日始業式 校長講話より(シスター大原 眞実)

2019.03.12

日本画家によるマーテル・アドミラビリス

 パーラーにかけられているマーテル・アドミラビリスの絵。19世紀にシスターポーリーヌ・ペルドゥローによって書かれたフレスコ画の原画はローマにあります。やがてこの聖マリアの姿が、聖心の生徒の理想像と結びつけてとらえられるようになり、A. Solinasという画家によって描かれた模写が世界中の聖心で見られるようになりました。本学院にも幾つかSolinas作があるのですが、本館のパーラーにあるマーテルは、歴代天皇の肖像画や、旧紙幣の聖徳太子、伊藤博文、岩倉具視の肖像画を描かれた馬堀法眼画伯の手によるものであることは刻印から知っていました。でも、なぜ画伯がマーテルを描かれたのか理由はわからず、国内外からのお客様から尋ねられても答えることができないでいました。先日、ある卒業生の方が、シスター木村すみ子の校長時代にご家族が馬堀画伯に依頼し学院に寄贈されたものであるということを話してくださいました。聖書に、「右の手のしていることを左の手に知らせてはならない」(マタイ6章3節)とあるように、一切、公には話題にされなかったようです。そろそろ補修が必要な時期と思われての告白でした。いずれ、画伯がどのようにこの絵を描かれたか等、エピソードを書いていただきたいと思っています。

2019.02.01

愛あればこそ

 先週、かつて学院で養護教諭をされていた村井先生のご葬儀に参列いたしました。ご遺言により供花はご辞退。それだけに中央に置かれた十字架が印象的でした。両側には故人が愛されたフリージア、凛とした白衣姿で、愛をもって生徒に接していらっしゃった故人が強く偲ばれました。
70代から入院直前まで13年にわたって続けていらしたという韓国語。先生がご在職中、学院が韓国へのプログラムを始めたことともつながっていたのかもしれません。病室に掛けられていた額は、不二聖心に大きな虹がかかった時の写真であったとのこと。先生は、牧師様がお見舞いに訪れ、耳元で賛美歌を歌って差し上げている間に、安らかにご帰天されたそうです。
ご葬儀の間、学院に関する二つの気がかりなことを、自然に先生にお話していました。戻ってみると、どちらも解決していることがわかりました。学院の歴史は、不二聖心を大切に思ってくださる方々の愛の歴史であることを思い、感謝の祈りを捧げています。

2019.01.01

新春

青空の中に凛とそびえる富士を仰ぎ見つつ、初春のお慶びを申し上げます。

新春のキャンパスは、とても静謐で澄んだ空気が流れています。
生徒たちが冬休み中の中、聖心会のマリア修道院(リトリートハウス)には、全国から人々が祈りに訪れています。このキャンパスには、人々の思いを清め、願いを深めてくれる力があると感じます。

冬休みを過ごす生徒たちのために、修道院では、毎日、お祈りが捧げられています。下の写真は、クリスマス・キャロル後に、お客様が退場された後、理事長のお話を伺う様子です。この生徒たちの妹になる未来の聖心ファミリーの誕生を心待ちにしつつ、入試を控えた方々が、十分に力を発揮されますよう願っております。

皆様と、ご家族の方々の上に、新年の祝福が豊かにありますようお祈り申し上げます。
本年も、どうぞ、宜しくお願い申し上げます。

2018.12.26

冬休みの祈り

 12月22日、ハリー・ポッターのように大きな荷物を抱えて生徒たちが帰っていきました。この日を心待ちにしていらしたご家族のお迎えで帰った生徒たちもいます。学院はひっそりとして、先生方はほっとするやら寂しいやら・・・。一年の締めくくりの大掃除や、増加傾向にある寄宿舎のリフォーム、増設に向けての準備が進んでいます。
 修道院では、シスター方が、毎日、冬休みを過ごす生徒たちのために祈ってくださっています。