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フィールド日記

2018年10月

2018.10.30

ヤマノイモ

 ヤマノイモにムカゴ(珠芽)が見られるようになりました。ムカゴは茎の一部が太ったもので、地面に落ちるとそこから新たな植物体が生じます。ヤマノイモの肥大した根は自然薯(じねんじょ)と呼ばれて食用にされますが、このムカゴも食用になります。

 夏から秋にかけムカゴをつけることは、オニドコロやヒメドコロなどの近縁の種と見分けるときのポイントにもなります。

2018.10.26

ヒキオコシ

 ススキ野原にヒキオコシが咲いています。和名は弘法大師が草の絞り汁を重病人に飲ませたところ、起き上がったという伝説に由来しています。古くから薬草として用いられたようでエンメイソウ(延命草)という別名もあります。

 花はシソ科らしい「唇形花(しんけいか、花びらが上下に分かれ唇のような形の花)」で、雄しべや雌しべが花びらより長く飛び出しているのが特徴です。個体によって雄しべが長く雌しべが短いもの、雄しべが短く雌しべが長いものの2形があり、上の写真の個体は前者のようです。

2018.10.23

コシオガマ

 共生の森からオークヒルに向かう途中のススキ野原にコシオガマが咲いています。ハマウツボ科の半寄生植物で、自ら光合成をしながらも、根では他の植物にとりつき栄養分を奪っています。


アフリカでは同じハマウツボ科の植物が農作物に寄生して甚大な被害をもたらしています。そこで、日本の研究グループはこのコシオガマをモデル植物として寄生に関する研究をしているそうです。近い将来、コシオガマの研究から得られた知見によって寄生植物による深刻な農業被害が解決する日がくるかもしれません。

2018.10.19

アキグミ

 数年前に高校1年生が共生の森に植栽したアキグミがたくさんの実をつけています。同時に植えた他の樹種に比べ、鹿の食害も少なく、大きく育っています。

 グミの仲間の葉や枝は白銀色の特徴的な輝きをもっています。下の写真はアキグミの葉の裏面を双眼実体顕微鏡で観察した様子です。「鱗状毛(りんじょうもう)」と呼ばれるうろこ状の白い毛が密に生えています。

2018.10.16

シロスジカミキリ

 先月の台風の後に共生の森に行ってみると、コナラの木が根元から折れてしまっていました。折れた部分をよく見てみると、シロスジカミキリがいました。5cmほどの大きなカミキリムシで、国内最大種だそうです。

 シロスジカミキリの幼虫は木の中で2年以上も材部を食べながら成長します。そのため、シロスジカミキリが食い入った木は強度が低下し、台風などで折れてしまうことがあるそうです。このコナラには複数のシロスジカミキリが食い入った形跡があり、内部はすでにぼろぼろになっていました。

2018.10.12

ブドウトリバ

 オークヒルでマツカゼソウの蜜を吸っている最中の蛾を見つけました。細い羽に、トゲのある脚が目立つ特徴的な姿をしています。一見すると蚊やガガンボの仲間のようですが、トリバガ科に属する蛾の仲間です。


 トリバガとは鳥羽蛾の意味で、下の写真のように羽には細かい毛が密に生え、鳥の羽のようにも見えます。この写真のトリバガは羽の模様からブドウトリバだと思います。名前の通り、幼虫の食草はブドウ科の植物だそうです。

2018.10.09

ウデブトハエトリ

 高校3年生の生徒に、昼礼広場のベンチに見慣れない虫がいますと呼ばれて行ってみると、4mmほどの小さなハエトリグモがいました。ハエトリグモはいわゆるクモの巣を作らずに、歩き回って獲物を探し、捕らえます。そのため、眼が大きく、良い視力をもっているといわれています。

 今回のハエトリグモは、上の写真のように第一脚が太く膝節と脛節の間がくびれること、腹部に白い帯が見られることからウデブトハエトリと判断しました。樹林地の地表で見られる種とのことです。

2018.10.05

ヒメガンクビソウ

 キャンパス内のヒノキ林の林床にヒメガンクビソウが見られます。キク科の仲間で1つの花に見えるものは「頭花(とうか)」と呼ばれる花の集まりです。ガンクビ(雁首)とは,昔のタバコを吸う道具であるキセルの先端部分のことです。近縁の種のなかで小型なことと、頭花が下向きに咲く様子がキセルの雁首に似ていることが和名の由来です。

 ガンクビソウにはいくつか似た仲間がありますが、「根生葉(こんせいよう、地面近くから出る葉のこと)」が「ロゼット状(地面に放射状に張り付いている様子)」に花の時期まで残っていることが本種と近縁の種を見分けるポイントの1つです。

2018.10.02

ムカゴイラクサ

 裏道のやや湿った場所にムカゴイラクサが生えています。上方の「葉腋(ようえき、葉の付け根の内側部分)」には雌花の集まり、下方の葉腋には雄花の集まりが見られます。

 和名の通り、むかごをつけています。むかごとは栄養繁殖器官のひとつで、地面に落下するとここから新たな植物体が生じます。


 また、茎や葉には刺毛があります。ヒスタミンなどの化学物質が含まれているといわれており、触れると強い痛みを感じるので注意が必要です。しかし、春の若芽は近縁のミヤマイラクサとともに山菜として利用されます。ゆでたり、天ぷらにしたりすると、刺毛は気にならなくなります。

2018.10.01

9月の野鳥の調査

 日本野鳥の会東富士副代表の滝道雄先生が9月の不二聖心の野鳥について調査をしてくださいました。調査の報告が届きましたので、掲載いたします。 

9月度の調査で確認された野鳥は下記の通りです。

 1.キジバト     5羽
 2.ヒヨドリ      14羽
 3.メジロ      9羽
 4.ハシブトガラス    6羽
 5.ヤマガラ     5羽
 6.コゲラ        1羽
 7.ハシボソガラス    2羽
 8.イカル        1羽
 9.シジュウカラ     4羽
10.ウグイス       1羽
11.コジュケイ     1羽
12.ガビチョウ     3羽
【特記事項】
1.野鳥の種数は外来種を入れて12種類と少ない。ウグイスの地鳴きが聞かれ、秋になったことを実感させられた。 
2.第2オークヒルに隣接する、以前ソバを栽培したと聞いた場所にナンバンギセルが咲いていた。3本の内1本は通常の高さだが、2本は全長が2cm程度と短かった。「温情坂」近くの東名高速道路沿いの孟宗竹が生えている所で新たにナンバンギセルの生息地を見つけた。
3.8月25日の調査では第2オークヒルからゴルフ場に続く山道で15個のクモの巣を払いながら調査を行ったが、今回は25個のクモの巣があった。
4.今月の調査ではサワガニを6匹とヤマアカガエルの子(約1cm)を3匹確認した。ヤマアカガエルは今年の初認となった。
5.第2オークヒルでツマグロヒョウモンが多く見られた。メスの数に対してオスの数が極端に多いことは興味深い。
6.エントモファガ・グリリ(昆虫病原菌)に侵され草の途中まで登り死んでいるバッタが見られた。エントモファガ・グリリに侵されたバッタ類はススキなどの高い所に誘導され、死を迎える。高い所に誘導する理由は菌をより遠く、広い範囲に拡散させるのが目的であると、蒔苗博道先生から教えて頂いた。