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フィールド日記

2018年04月

2018.04.27

ホソミオツネントンボ

 先週、築山の池できれいな青いトンボが飛んでいるのを見つけました。図書館で調べたところ、ホソミオツネントンボというようです。オツネンとは越年のことで、成虫で越冬するというトンボとしては珍しい生態に由来しています。

 図鑑には、梅雨の終わりから盛夏にかけて羽化した未熟な個体は淡褐色をしていて、越冬し、春を迎えて成熟した個体は美しい青色をおびてくるとあります。つまり、この個体は昨年羽化し、越冬して成熟した個体だといえます。産卵は抽水植物や水面上にはりだした植物の葉などに行なわれるそうで、築山の池では水面上にはりだしたシダレザクラの葉に産卵している可能性がありそうです。

2018.04.24

ナベワリ

  先週、ヒノキ林の斜面にナベワリが咲いているのを見つけました。花は緑色で下を向いています。有毒植物で、舐めると舌が割れるという意味の「舐め割り」が訛ってナベワリとなったと言われています。

 ナベワリ属は日本にナベワリを含む2種と北アメリカ東部に1種が知られています。被子植物では60前後のグループでこのような東アジアと北アメリカ東部に隔離分布をする植物が見つかっています。これらの植物は古第三期 (約6500万年前~)の地球が比較的温暖だったときには北極圏を取り囲むように分布していましたが、その後の寒冷化に伴い南下してきて、現在見られるような隔離分布を示すようになったと考えられています。

2018.04.20

タチヒダゴケ

 学院内のクリの木の樹幹上にタチヒダゴケの群落が見られます。植物体の先端にある淡褐色のふくらみは「朔(さく)」と言い、中に緑色の胞子が入っています。


 コケ植物は乾燥しているときと湿っているときで姿形が大きく異なっていることが多いため、観察には霧吹きを持って行っています。下の写真は、上の写真の群落を霧吹きで湿らせたものです。あっという間に葉が開き、鮮やかな緑色になりました。


 タチヒダゴケと近縁の種を見分けるポイントの1つは、朔にある気孔が表面ではなく、凹みの中にあるということです。下の顕微鏡写真は朔の表面にピントをあわせたもの(左)と、やや奥にピントをあわせたもの(右)で、気孔が凹みの中にあることがわかります。

2018.04.17

スルガテンナンショウ

 校舎の近くにスルガテンナンショウが咲いていました。「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼ばれる筒状の葉に花の集まりが包まれており、独特の雰囲気があります。


 近縁の種には、草姿や模様がマムシに似ていることからマムシグサと呼ばれるものもあります。本種は仏炎苞の上部の内側に微細な突起が密生することや、付属体と呼ばれる棒状の部分の先端が前方に曲がり球状にふくらむことで区別されます。スルガテンナンショウの分布は中部地方の太平洋側とされており、『神奈川県植物誌2001』に記録がないことから、不二聖心がほとんど分布の東限と言ってよいかもしれません。

2018.04.13

サトザクラ

 職員室横の八重咲きのサトザクラが満開を迎えています。サクラの園芸品種は200種類以上あると言われていますが、これらを総称してサトザクラと呼んでいます。生徒と花弁の枚数を数えたところ、1つの花につき23~32枚の花弁がありました。


 ヤマザクラなど野生のサクラの花には5枚の花弁と多数の雄しべがあります。八重咲きのサトザクラは遺伝子の異常によって雄しべが花弁に変化したものと考えられています。花を分解してみると、下の写真のように花弁と雄しべの中間の形をしたものが見られました。確かに、雄しべが花弁に変化しているようです。

 木曜日には家庭科クラブの生徒たちが、開ききる前の花を摘み取って「桜の塩漬け」づくりをしていました。サトザクラは目で見て楽しむだけでなく、食用にも利用されています。この後、塩や酢に漬け込み、1か月ほどで出来上がるそうです。

2018.04.10

トサカホウオウゴケ

 裏道の石積みにトサカホウオウゴケが群生しています。ホウオウゴケ科の仲間は葉が左右2列に規則正しく並んでおり、その姿が鳳凰の尾の形に似ていることが科名の由来になっています。一万円札の裏面に描かれた鳳凰像の尾と比べると確かに似ています。


 コケ植物の種名を調べるには顕微鏡による観察が必要です。下は葉の先端部の顕微鏡写真です。葉の全周に明るい細胞が帯状に並んでいることと、種名の由来となった鶏のとさかのような鋸歯(ぎざぎざ)があることから、トサカホウオウゴケと判断しました。

2018.04.06

ジロボウエンゴサクとタチツボスミレ

 ジロボウエンゴサクとタチツボスミレが並んで咲いていました。写真の中央の淡紅紫色の花がジロボウエンゴサクで、そのまわりがタチツボスミレです。

 ジロボウエンゴサクとタチツボスミレは花の後方に「距(きょ)」と呼ばれる筒状の部分をもっているという共通点があります。江戸時代、子供たちがスミレとエンゴサクの距をひっかけて草相撲のような遊びをしたときに、スミレを「太郎坊」と呼び、エンゴサクを「次郎坊」と呼んでいたことが、ジロボウエンゴサクの由来と言われています。

2018.04.03

モミジイチゴ

 モミジイチゴが白い花を咲かせています。不二聖心ではいくつかのキイチゴの仲間が見られますが、このモミジイチゴが最も早く花を咲かせるように思います。花は下向きに咲くので、覗き込むように写真を撮りました。


 葉は変異が大きく、また、近い種との雑種をつくりやすいことから分類は難しいグループのようです。不二聖心に見られるものは下の写真のように、切れ込みが深いものが多いです。