フィールド日記
2014.06.27
タケニグサの花
「共生の森」では、栗の花が盛りを過ぎ、タケニグサの花が咲き始めました。
タケニグサの茎は長く伸び、「クサ」という名に似つかわしくない大きさまで成長します。
この茎の中にギングチバチが巣を作ることがあります。ギングチバチの姿は不二聖心のフィールドで既に確認されていますので、いつか巣も見つかるかもしれません。
今日のことば
岩田氏の本を読んでから間もなく、私はギングチバチの巣を偶然に見つけることができた。終戦の年の冬で、たまたま青山墓地の附近を歩いていたとき、空襲警報が鳴った。昼間の空襲であった。すでに哨戒機の爆音がとどろき、なんとなく大規模な空襲のように思われた。私は墓地のなかへはいっていった。人家のある場所より樹木と墓石のつらなった人家のない墓地のほうが安全そうに思えたからである。敵機を待ついくばくかの時間に、私は立枯れているタケニグサの茎をさしたる期待もなく割っていった。茎の中には越冬中のトビイロケアリの雌がひそんでいたりした。そして一本の茎を割ったとき、なかからバラバラと黒いものがこぼれおちてきた。十数匹の蠅の残骸である。私の手はふるえた。この巣をつくった蜂は、たしかにクララギングチバチか、それに近い種類にちがいない。私はなおタケニグサの茎を割り、もう一つの巣の跡を見つけだした。しかしそれは過ぎ去ったものの残骸にすぎなかった。乾からびた蠅のキチン質が、おそらくは前の夏の、ふしぎな狩猟蜂の生活を暗示しているにすぎなかった。
『どくとるマンボウ昆虫記』(北杜夫)より