フィールド日記
2013.07.10
ヤブキリの鳴き声の不思議
2013.07.10 Wednesday
図書館の花壇のチェリー・セージの葉の上にヤブキリがとまっているのを見つけました。群馬県で絶滅危惧Ⅱ類に指定されているキリギリス科の昆虫です。ヤブキリは地域によってオスの鳴き声が異なることで知られています。メスは自分の生息している地域のオスの鳴き声にしか反応しません。ということは、他の地域の個体との交雑が起こりにくく、それぞれの地域の個体が持つ遺伝子の固有性が保持されやすいということになります。不二聖心のヤブキリも不二聖心独特の鳴き声を持っているのかもしれません。
全国各地のヤブキリの鳴き声を根気強く調べて、地域による鳴き声の違いを明らかにした小林正明先生の論文はすばらしく、昆虫学の持つ魅力の奥深さを私たちに教えてくれます。
今日のことば
ヤブキリは残念ながら鳴き声はあまり良い声ではない。初夏の夕方に大きな声でシリシリシリシリ……またはキリキリキリキリ……と長く鳴くが、普通の人は意外に気づかない。ところがこのヤブキリは、形は同じなのに鳴き声は場所によって違っている。メスを呼ぶ鳴き声が違っていれば、それぞれの鳴き声の個体の間で交雑が起らないのではないだろうか。
小林正明