フィールド日記
2013.05.05
オニシバリと鎌井松石と水谷豊文
2013.05.05 Sunday
林道でオニシバリの実の写真を撮りました。校舎周辺ではなかなかお目にかかることのできないオニシバリですが、林道に入るとたくさん目にすることができます。
幕末の三重で活躍した植物学者に鎌井松石という人物がおり、多数の植物画を残しています。オニシバリについても巧みな写生画を残していますが、そこに「鈴鹿三重の深山幽谷陰湿の地に多生」という言葉を添えています。やはり昔からオニシバリは人間の生活の場から少し離れたところに自生する植物であったようです。
ところで、先ほど引用した言葉にはまだ続きがあって、さらに「夏月落葉する故にナツボウズと呼ぶ。又ハナテウジと云ふ」と記されています。オニシバリの別名としてナツボウズはよく知られていますが、ハナテウジ(花丁子)はあまり目にすることはありません。しかし、一つだけハナテウジが大きく取り上げられている書物があります。それは『物品識名』という幕末の尾張の植物学者水谷豊文が編集した書物です。水谷豊文は伊藤圭介の植物学の師匠で、鎌井松石は伊藤圭介に私淑しています。つまり、伊藤圭介との師弟関係が縁で、鎌井松石が『物品識名』に目を通していた可能性は十分にあるわけです。オニシバリの別名を調べていると、名古屋を中心とした東海地方の植物学の伝統と歴史に思いをはせることができます。それにしても時代を代表する植物学者が重んじた「ハナテウジ」という名前はいったいいつどこへ消えていってしまったのでしょうか。
オニシバリは埼玉県と奈良県で絶滅危惧Ⅰ類に、徳島県と高知県で絶滅危惧Ⅱ類に、宮城県と京都府と広島県で準絶滅危惧種に指定されています。
今日のことば
We need to remember the wounds, never turn our gaze away from the pain, and—honestly, conscientiously, quietly—accumulate our own histories. It may take time, but time is our ally.
For me, it’s through running, running every single day, that I grieve for those whose lives were lost and for those who were injured on Boylston Street. This is the only personal message I can send them. I know it’s not much, but I hope that my voice gets through. I hope, too, that the Boston Marathon will recover from its wounds, and that those twenty-six miles will again seem beautiful, natural, free.
村上春樹
お知らせ
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