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フィールド日記

2013.04.30

ヒメハギと万葉集  名前のないヒメバチ



 

2013.04.30 Tuesday
動植物の世界で「ヒメ」が名前につくとその多くは「小さい」という意味を表します。今牧草地にたくさん咲いている紫の小さな花は「ヒメハギ」(東京都では絶滅危惧Ⅱ類に指定)です。萩に似ているので名前に「ハギ」とついていますが、萩はマメ科なのに対してヒメハギはヒメハギ科に属しています。よく見ると実に不思議な形をしている植物です。ヒメハギは古くから漢方薬の材料としても使われ、ヒメハギから作られた薬を「遠志」と言います。「遠志」はもともと中国から伝わってきた生薬です。天平勝宝8年(756)の聖武天皇崩御の時、冥福を祈願するために東大寺に収められた薬の中に「遠志」が含まれていたという記録が残っています。ところで、当時の人たちは「遠志」という字を何と読んでいたのでしょうか。読み方を考える一つの手がかりを万葉集の中に見つけました。万葉集に収められている山上憶良の挽歌の中に「伊能知遠志家騰」という万葉仮名の表現があります。「伊能知遠志家騰」は「命惜しけど」と読みます。このことから考えると薬の「遠志」も「おし」と読まれていた可能性があると言えるでしょう。「おし」は「命が惜しい」を連想させ、薬の名前としてもふさわしいように思います。 
 
蜂の世界で「ヒメ」がつくといったら、ヒメバチです。不二聖心にもたくさんのヒメバチが生息していますが、ヒメバチというのは科名であって種名ではありません。写真のハチは、第二牧草地に向かう途中で見つけたマルヒメバチ亜科のヒメバチですが、国内未記載種であることがわかりました。まだ日本語の名前がついていないハチということです。このように名前がつけられていない種は、ヒメバチに限らず自然界に無数に存在します。自然界に存在していながら、まだ種名がつけられていない生物は2万種を超えるという説もあるほどです。
 

今日のことば

生きがいなどというのはまだ世俗に未練のある人が求めるものであって、成熟しきった人はそのようなものは求めない。野に咲く一輪の花のように静かである。

柳澤桂子   

 お知らせ

今年も8月に小学4年生から6年生を対象として「夏休み子供自然体験教室」を不二聖心女子学院で開催します。申し込み方法など詳しいことをお知りになりたい方は下記のURLをクリックしてください。
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