フィールド日記
2013年03月
2013.03.11
キクイムシとの出会いと船上での貴重な調査経験の記録
2013.03.11 Monday
3月7日に第2牧草地の池で、この春初めて甲虫を採集しました。農学博士の平井剛夫先生に同定を依頼したところ、キクイムシの一種であるとのご教示をいただきました。キクイムシということは、牧草地の周辺の林から池に飛来してきたと考えられるでしょう。
3ミリ程度しかない小さな虫の移動能力に驚き平井先生に次のような内容のメールを送りました。
牧草地の両側はヒノキ林ですから、そこから飛来したものと思われます。風で飛ばされたのかもしれません。いずれにしても小さな虫の移動能力に驚きます。
このメールへの平井先生の返信を以下に引用します。
小さな虫の移動能力は、その行動が飛翔という自力によるものではなく、多くは風に飛ばされて起こる結果いかんなのですが、たどり着いてなお元気で生き抜いてゆくというたくましさにあると思います。20年も前、現役の頃、気象庁の観測船に乗って東シナ海で海を渡るイネの害虫のウンカ類の調査をおこなったことがあります。マストにくくりつけた直径1メートルの網3つに入る虫を2時間おきに回収するという調査でした。東シナ海で定点観測を行なっているあいだ、2週間続けました。
中国大陸から、海を渡るいろんな虫が、網に入ってきます。夜になると、観測船の灯りにも惹かれて船内に入ってきます。観測船で虫を採集するという楽しさも味わいましたが、こんなにして日本にやってくる虫たちのタフぶりを知りました。
移動能力に驚かれたというご感想で思い出したことを書いてみました。
平井先生のメールの内容に感動し、これを多くの方に読んでいただきたいと考え、先生の了解を得て掲載させていただきました。小さなキクイムシとの出会いが貴重な調査経験の記録との出会いにつながったことをたいへんうれしく思っています。
今日のことば
愛宕山入る日の如くあかあかと燃し尽くさん残れる命
西田幾多郎
2013.03.10
金色に輝くコガネコバチが水面を移動していました
2013.03.10 Sunday
第2牧草地の池で奇妙な光景を目にしました。水面を金色に輝く寄生蜂(コガネコバチの1種)が移動していたのです。3ミリ程度の小さなハチですが、画像を拡大すると産卵管がはっきりと見え、雌であることがわかります。水上の何かに産卵しようとしていた可能性があるわけです。動画のURLをクリックすると金色に輝く様子が一瞬ですが見られます。水面をハチが移動する例は珍しく、この観察例は日本で初めての記録かもしれません。
今日のことば
正しい信仰が必要だ。どんな信仰でもいいというわけじゃない。それから、いつもへりくだっていなきゃいけない。つつしんで宇宙の創造主の御業の一部を拝見させていただく気持ちで、実験をしなければならない。つまり、私たち科学者が実験室で実験しているのと、修道士が修道院で祈っているのと同じなのだ。実験は祈りだよ。
永井隆
2013.03.09
木製の素敵な木の名札を設置しました
2013.03.09 Saturday
「共生の森」の苗木に、株式会社インプル特製の木製の木の名札を、高校1年生がつけました。木製の名札には、今までつけてきたプラスチック製の名札とは違う味わいがあります。この木の名札が朽ちる頃、「共生の森」は立派な森に育っているはずです。
今日のことば
明日世界の終わりがきても
今日は私はオレンジの木を植える
そんなイスラエルの言葉を信じながら
高石ともや
2013.03.08
正門近くのヒメリュウキンカ
2013.03.08 Friday
昨年はプールでよく見かけたカルガモの夫婦が今年はいっこうに訪れないのを心配していましたが、今朝ようやくカルガモのつがいを見ることができました。
正門のところでは、ヒメリュウキンカがたくさんの花を咲かせています。花弁の光沢は独特の輝きを持ち、慣れると一目見てヒメリュウキンカだとわかります。
今日のことば
本当に美しいもの、人間的なものを発見し、そこにひそむ美しいルールを発見してゆくためには、理科の勉強はとても大切である。哲学、社会学、心理学など、人間にかかわる学問、さらには美を創造する芸術にたずさわる人たちも、人間がよって立つところの自然、宇宙の法則、そして遺伝子やDNAについて学ぶことは大切である。
そして何よりも、少年のころ自然にふれ、自然に感動したという体験を持つことが大切だと私は思う。理系とか文系とかは関係ない。そして、理系の学校に入って科学を研究するようになったとしても、その研究の原動力になるのは、少年のころ持った美へのあこがれではないかと思っている。
多田富雄
2013.03.07
築山の池のコカゲロウ
2013.03.07 Thursday
昨日に引き続き築山の池の生物を紹介します。今日はカゲロウの幼虫が元気に泳ぐ姿が見られました。すでに羽化している個体もたくさんいました。専門家の方からはコカゲロウ科のシロハラコカゲロウではないかというご教示をいただきました。シロハラコカゲロウは山地の渓流から平地の浅瀬まで広く分布する種のようです。カゲロウはきれいな水のある特定の環境に生息することから環境指標生物と呼ばれることがありますが、広域にわたって生息する種もいることがわかり勉強になりました。動画を見ると鰓を動かしている様子がよくわかります。
今日のことば
美しいとは、そもそも何だろうか。私は、自然が時間とともに作り出したものこそ美しさの原型なのではないかと思う。あらゆる芸術は、自然を眺めたときの人間の感動から始まる。何十億年もの時間をかけて、私たちの宇宙が作り出され、そこに生き物が生まれた。私たち人間はその究極の産物である。人間の美への欲求は、進化の歴史の中で作り出されたに違いない。
多田富雄
2013.03.06
移入種のサカマキガイを発見
2013.03.06 Wednesday
今日は急に気温が上がりました。裾野市の夕方の5時の気温が13度ありました。静岡市では最高気温が20度を超えたということです。
急に生き物が動き始めた築山の池でサカマキガイが見つかりました。北アメリカからの移入種です。
いったいどのような経路で不二聖心に侵入してきたのか、興味深いです。多くの貝が右巻きであるのに対し、サカマキガイ(逆巻き貝)は左巻きです。
中学2年生が行ったサカマキガイについての非常に面白い研究がネット上で公開されています。
http://www.shizecon.net/sakuhin/42jhs_minister.html
今日のことば
人間はだれでも、なんらかの聖なるものがある。しかし、それはその人の人格ではない。それはまた、その人の人間的固有性でもない。きわめて単純に、それは、かれ、その人なのである。
シモーヌ・ヴェイユ
2013.03.05
開花した河津桜 虫こぶに住むアリ
2013.03.05
今日は啓蟄です。不思議とこの日を境に自然界はいっそう春めく気がします。河津桜も可憐な花を咲かせました。
昨日の「不二聖心のフィールド日記」で紹介したタマヤドリコバチはクヌギエダイガフシという虫こぶの形成者に寄生する蜂でしたが、この虫こぶが空き家になったあとでその空き家を利用する生き物がいます。その代表はアリとクモでしよう。第2牧草地の上の雑木林で空き家に新たに集団で住みついているアリの一族を見つけました。テラニシシリアゲアリではないかと推測していますが、中に白色の個体がまじっているのが興味深いです。
今日のことば
息を吸うと、酸素が入ってきます。それは植物と太陽からやってくる光によって生み出され、私たちの活動のエネルギーを生み出します。私たちは、個々の独立した生命体ではありません。自然の大きな生命の中に織り込まれている。誰でも知っていることですが、それをただ知識として知っているのと、それを肌で実感することの間には大きな違いがあると思いませんか?
星川淳
2013.03.04
南アフリカからのメールでタマヤドリコバチ科(Ormyrus)と判明
2013.03.04 Tuesday
すすき野原のクヌギから採集したクヌギエダイガフシという虫こぶから寄生蜂が羽化しました。タマヤドリコバチ科のハチではないかと思い、いろいろ調べたところ、南アフリカのケープタウンにある博物館のホームページの中にタマヤドリコバチ科のハチだけを集めたページを見つけました。ホームページの製作者であるSimonさんに不二聖心のハチを見ていただいたところ、間違いなくタマヤドリコバチ科のハチだと教えていただきました。一匹のハチがきっかけで南アフリカの研究者とつながれたことをうれしく思っています。件のホームページは下のURLをクリックすると見られます。
http://www.waspweb.org/Chalcidoidea/Ormyridae/Ormyrus/index.htm
今日のことば
文章の品格というものは、技術を超えたところにあります。文章技術はむろん大切です。が、それだけでは「品格」という巨大なものを肩にかつぐわけにはいかない。人間全体の力が充実しないと、肩にかつぐことはできないもののようです。
辰濃和男
2013.03.03
薩摩紅梅の花弁 築山の池のプランクトン
2013.03.03 Sunday
築山の池に薩摩紅梅の花弁が浮いていました。その周りにあるのはカゲロウの抜け殻です。水中のプランクトンの動きも活発になってきました。池の水面の風景にもいろいろな春を感じることができます。
今日のことば
寒い日が続くがやはり時期がくると梅、桃などが咲き始める。時々、不思議に思う。葉も無く棒切れのような木の枝からこんなに寒いのにきれいな花が咲く。毎年繰り返されていることだし当たり前といえば当たり前なのだが、やはり自然はまだまだ分からないことが多い。われわれはまだまだ潜在能力を秘めた自然とうまく付き合えているのか?とふと考えさせられる。
青木嘉孝
2013.03.02
河津桜の蕾
2013.03.02 Saturday
講堂の横の河津桜の蕾がふくらんできました。今年の寒さに影響されてか、例年より開花が遅いように感じます。今日は新入生学校説明会が行われましたが、河津桜は花期が長いと言われますので、4月4日の入学式の頃にもまだ花が見られるかもしれません。
今日のことば
小雨の降る日、籬の梅のしろく咲きて、そこらおぼつかなきほどに見え侍りければ
雨雲の梅を星とも昼ながら
鬼貫