フィールド日記
2012.10.30
アシダカグモ
2012.10.30 Tuesday
生徒が、アシダガグモがでたと教えてくれました。不二聖心では時々姿が見られるクモで、久しぶりの
再会となりました。アシダカグモについては、大利昌久さんの「わが国におけるアシダカグモの地理的分
布」という非常に興味深い論文があります。その中には次のような一節があります。
本種はインドが原産地で、貿易とくに交通の発達に伴い次第にその分布域を広げ、現在では全世界の熱帯、
亜熱帯、温帯の各地に生息しているといわれ、わが国からはKochが、1878年に長崎県ではじめて本種の
生息を報じた。
今日のことば
小さいクモたちは、晩秋の小春日和に地上に突き出た枯草や棒杭などに登ってゆく。先端に達すると後ろ
向きになり、尻を天に向け、三対の系イボのたくさん吐糸管(としかん)から糸をふきあげる。事実は、糸
をふきあげるのではなく、蛋白質状のせんどう粘液を分泌し、それを脚のせん動と上昇気流によって空中
へ放出するのだ。糸が伸び、その浮力がクモの体をひきあげるほどになったときクモは脚を放す。クモは
青空にのぼってゆき視界から去ってしまう。それらのクモのいくつかは、ジェット気流にまぎれこんで太
平洋を横断し、アメリカ大陸に移動することも、じゅうぶん考えられることだ。クモには国籍などあろう
はずがない。どこへでも生存地を広げる自由をもっている。しかし、目的地を指定することはできない。
気流任せのあてどのない放浪と冒険の旅でもある。このような空中移動を行なうクモは60種以上も確認さ
れており、多くは水田に生息する普通のクモで、コモリグモ科、フクログモ科、カニグモ科など、徘徊
(はいかい)性の小グモでしめられている。
錦三郎