フィールド日記
2012.08.28
コモリグモ
2012.08.28 Tuesday
ニホンカワウソが、正式に、絶滅危惧種ではなく絶滅種に規定されたというニュースを今朝見ました。
希少種の保全の必要性を改めて意識させるニュースでした。
腹部にイボ状の突起のあるクモを見つけたと思ったら、イボに見えたものはすべて子グモでした。
子グモを腹部に乗せたコモリグモのメスだったのです。子グモの中には、母グモの顔のところまで移動してきてしまっているものもいます。
クモの専門家に問い合わせたところ、種の同定には子グモによって覆われてしまっている腹部の斑紋の確認が不可欠ということでした。子グモたちをどけてまで同定をするのはしのびないと思い、今回は種名を確かめることを断念しました。
今日のことば
ニホンカワウソがすでに絶滅していたとは。本書(『ニホンカワウソ ――絶滅に学ぶ保全生物学――』)
を読んで衝撃をうけた。私はカワウソがどこかで細々と生きていると信じ、土佐の海に探しにいったこと
もある。だが本書の内容は真実だ。データは1990年代に絶滅した事実を示していた。しかも最後の
一頭が消えたちょうどその頃、DNAから、ニホンカワウソは日本にしかいない固有種と判明したという。
動物園にいるのはユーラシアカワウソやコツメカワウソ。現代日本人は、日本固有種を絶滅させる、とり
かえしのつかないことをしてしまったのだ。読みながら悔しくて涙が出た。(中略)
読んで思った。希少生物の保護には、行政のためらいがあってはならない。とくに都道府県知事の決断が
重要だ。地元の知事が即断し、保護センターをつくり、専従の保護職員を置いて、人工繁殖に踏み切ら
ねば、すぐに手遅れになる。
理工系の専門書なのに、読めば読むほど、泣けてくる。ニホンカワウソの絶滅を無駄にしてはいけない。
磯田道史
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