フィールド日記
2012年03月
2012.03.22
春のきのこを食べるヤマナメクジ
2012.03.21 Wednesday
春のきのこを食べているヤマナメクジを見つけました。ヤマナメクジは人家の周辺ではあまり見られないナメクジです。人家の周辺で最もよく見られるのはチャコウラナメクジと言い、日本生態学会によって、「日本の侵略的外来種ワースト100」に指定されています。ナメクジの世界でも外来種問題は深刻であり、不二聖心で純国産のヤマメクジに出会うと少しほっとします。
今日のことば
リングでも人生でも
ダウンすることはなんら問題ではない。
ダウンしたままでいることが問題なのだ。
モハメド・アリ
2012.03.19
タマキクラゲ
2012.03.19 Monday
春の雨が降った日の次の日は雑木林に行く楽しみが一つ増えます。雨をたっぷり吸ったクヌギの枝々に発生したタマキクラゲが朝日に輝くのを眺めることができるからです。今日はまさにそのような日でした。立っている木だけではありません。昨年の台風で倒れた木にもたくさんのタマキクラゲがついていました。いつの年も変わることのない不二聖心の春の風景です。
今日のことば
どんなに医学が発達しても、生と死は単なる「問題」ではなく「神秘」であり、その前で
必要なのは、素直な驚き、謙遜、畏敬、開かれた心です。
アルフォンス・デーケン
2012.03.18
ウスベニスジナミシャク
2012.03.18 Sunday
中学校校舎の壁に擬態するようにはりついていた蛾の写真を2月27日に撮りましたが、その種名がウスベニスジナミシャク(Esakiopteryx volitans(Bulter,1878))であることがわかりました。早春に姿を現す蛾です。『日本産蛾類標準図鑑』には、ウスベニスジナミシャクの生態について次のような説明が載っています。
全国的に丘陵部から山地まで広く分布し、各地で多産する。年1化、関東地方周辺の低山地では3月下旬から出現し、1000m以上の山地では4月下旬から5月中旬まで見られる。
不二聖心で2月の下旬に見られたのは、異例のことなのかもしれません。
不二聖心初記録です。
今日のことば
浅き川も深く渡れ。
星野道夫
2012.03.17
オオイヌノフグリ
2012.03.17 Saturday
裏の駐車場の縁にたくさんのオオイヌノフグリが咲いています。オオイヌノフグリの学名は、Veronica persicaと言いますが、Veronicaは聖書に登場するヴェロニカという女性の名前からとられています。その由来について述べた稲垣栄洋さんの文章を次に引用します。
春を彩る可憐な花と聖書の登場人物との思わぬつながりに目を向けてみてください。
オオイヌノフグリの学名は「ベロニカ」という。重い十字架を背負って刑場に向かうキリストの顔の汗を拭いてあげた女性のハンカチに、キリストの顔が浮かび上がるという奇跡が起きた。この女性の名がベロニカである。オオイヌノフグリの美しい花をよく見ると、花のなかにキリストらしい人の顔が浮かび上がっている。これがベロニカと呼ばれるゆえんである。
なんと高貴な名なのだろう。
花に浮かび上がったこのキリストの顔は、実はハチやアブを呼び寄せるための模様である。
四枚の花びらには中央へ向かって蜜のありかを示すガイドラインが引かれている。まさに迷えるハチたちを導いているのである。
『身近な雑草のゆかいな生き方』より
今日のことば
何もかも失った人に
みんなから見捨てられた人に
あなたの痛みにつながりたいと
そっと差し出す一本の手を贈ろう
その手を握ってくれた
あなたそのものが
わたしへの最高の贈りものだから
その瞳の奥で
目には見えないはずの贈りものさえ
一瞬ゆらめくから
晴佐久昌英
2012.03.16
キジムシロの奇形
2012.03.16 Friday
今年もキジムシロの写真を撮りました。バラ科キジムシロ属の植物のほとんどは花弁が5枚です。キジムシロも例外ではありません。ところが昨年の3月に撮影した2枚目の写真の場合、花弁が6枚になっています。これはキジムシロの奇形ですが、もしこの株から出ている花がすべて花弁6枚ということになると、キジムシロの変種ということになります。
この1週間、駐車場の奥の雑木林では、次々にキジムシロが咲き始めました。この春もキジムシロの変種を探してみようと思います。
今日のことば
成功した人びとは、失敗した人びとがやりたがらないことをやる。
E・М・グレイ
2012.03.15
ヒメリュウキンカ
2012.03.15 Thursday
春になると不二聖心の正門はヒメリュウキンカの花に彩られます。そこにはホソヒラタアブなどの虫もやってきて多くの命が活発に動き始めたことを感じさせます。以前、札幌聖心女子学院のシスターからエゾノリュウキンカの絵葉書をいただいたことがありました。今ごろ札幌もリュウキンカの花で彩られているのでしょうか。いつか姉妹校の校内の植物を比較してみるのも面白いかもしれません。
今日のことば
空のようにきれいになれるものなら
花のようにしずかになれるものなら
価値なきものとして
これも捨てようあれも捨てよう
八木重吉
2012.03.14
馬酔木
2012.03.14 Wednesday
職員室の横の庭で、馬酔木の花がしばらく前から咲き始めています。これは園芸種の馬酔木で、こちらの方が毎年早く花をつけます。これは不二聖心に限ったことではなく、裾野市より標高の高い御殿場のような地域でも園芸種の馬酔木は既に開花しています。
馬酔木は万葉の時代から日本で見られた植物ですが、なぜこの花を食べると馬が酔うのかという点について、『折節の花』(栗田子郎)という本に前川文夫の興味深い説が紹介されています。その説によると、4世紀に東北アジアから日本列島にもたらされた馬は大陸にはアセビが分布しないためにその有毒性を知らず、これを食べてしまった馬が中毒症状を起こしたのだろうということです。
馬が日本にいなかった時代から馬酔木は日本の春を彩り続けてきたということです。
今日のことば
学んだことのたった一つの証は、変わることである。 林竹二
2012.03.13
ヒメクモバチの巣
2012.03.13 Tuesday
すすき野原の木の根につくられたヒメクモバチの巣を見つけました。すでにハチは巣立ったあとでしたが、巣の中には、ハチの親が子に与えたクモの死骸が残っていました。親は子にクモを与える時、脚をすべてとってしまいます。脚をとると血が流れますが、ハチが傷口をなめると血は止まるそうです。ハチの唾液に止血作用があるというのです。驚異の世界としか言いようがありません。
今日のことば
きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。
須賀敦子
2012.03.12
ジャゴケの雌器托 ノミハニワゴケの蒴
2012.03.12 Monday
今朝は7時35分にキツツキのドラミングの音を確認しました。リズミカルな音が春の空に響き渡り、それに呼応するかのようにシジュウカラが鳴き交わしていました。春の朝の平和なひとときでした。
講堂の裏に生えているジャゴケの雌器托が柄を伸ばしていました。ジャゴケの雌器托は早春に柄を伸ばすことで知られています。
裏の駐車場で見つけたノミハニワゴケにも蒴がしっかりとついていました。これも早春の風景です。2月25日のフィールド日記で紹介したノミハニワゴケと比較するとその成長ぶりがわかります。
コケたちもまた静かに春を告げています。
今日のことば
ひとりでいられるという能力は、愛する能力を持つことへの条件である。
エーリッヒ・フロム
2012.03.11
河津桜 メジロ
2012.03.11 Sunday
東日本大震災から一年の今日、新聞各紙はさまざまな震災関連の記事を載せていました。
その中で朝日新聞の天声人語が心に残りました。その後半を引用してみましょう。
被災地ばかりでなく日本全体にとって、「3・11以前」はもはや戻れぬ対岸になってしまった。振り向けば橋は消えて、隔てる川の流れは深い。だれもが心細い肩を寄せ合いながら、「絆」という焚火に心の手をかざしてきた1年だったように思う。
その「絆」の文字も過剰な使用に摩耗気味だ。井上ひさしさんが健在なら「つるつる言葉」と呼ぶかもしれない。便利に使われすぎて意味も実体もすり減ってしまう言葉を、そう称していた。
スローガンで何が片づくわけでもない。だが私たちの社会がこれほど他者を思ったのも、史上まれなことではなかったか。ともに悲しみ、「絆」の一語に魂を入れ直す日としたい。
同じ朝日新聞の書評欄では、震災を論じる言葉の貧困の問題が取り上げられていました。
この1年は、私たちの語る「ことば」が改めて問われた1年であったように思います。
さて、不二聖心は、校内のあちらこちらで春の花々を楽しめる季節を迎えています。プールの近くの河津桜も徐々に花が開き今は三分咲き程度になっています。河津桜は、1955年に静岡県賀茂郡河津町田中で飯田勝美氏が偶然発見した原木がその後、新種であると認められ、河津桜と命名されたものです。不二聖心でも毎年、美しい花を咲かせ春の訪れを告げています。今日はメジロが来て花の蜜を吸っていました。3枚目の写真には、小さくですが、目の回りが白いメジロの姿が写っています。
今日のことば
そうだ うれしいんだ
いきる よろこび
たとえ むねのきずがいたんでも
なんのために うまれて
なにをして いきるのか
こたえられないなんて
そんなのは いやだ!
いまをいきる ことで
あつい こころ もえる
だから きみは いくんだ
ほほえんで
そうだ うれしいんだ
いきる よろこび
たとえ むねのきずがいたんでも
やなせたかし