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フィールド日記

2012.03.09

ミツバアケビ

  2012.03.09 Friday 

 ミツバアケビの冬芽が、日々少しずつ姿を変えています。上の写真は冬芽の今の姿、下の写真は2月20日に撮影したものです。ミツバアケビは、春たけなわになると、濃い紫色のユニークな形の花を咲かせます。

 アケビ科の植物については、前川文夫博士が実に興味深いことを『植物の進化を探る』
(岩波新書)の中に書いています。以下に引用してみましょう。

 

 アケビ科は日本からヒマラヤ、さらに南にかけてかなりの種類があります。それからひどくはなれて南米チリの南部の辺にほんの少し二属二種が分布しています。この分布はこれまた不思議な分布です。なぜ太平洋の全く反対側に生えているのかという疑問を禁じえません。
前回の調査の折に、中部チリの山の中でこれに出会いました。まさにミツバアケビとムベのちょうど合の子のような形の葉が付いていて、それまで一度も生品はもちろん、標本さえ見たことがなかったのに一目見てすぐわかりました。ということは東アジアのアケビ科との間に非常に血が濃いということを膚で感じとったからでしょう。それがこんなふうに飛び離れて分布しているのは、やはりこれはかつて古い赤道にずっと沿って分布していたのだけれども、赤道の移動に伴ってだんだん条件が悪くなり、多くのところでは絶滅してしまい、結局ヒマラヤ、日本、南アジアの一地域とチリの局所とにだけ残されたのであるとみるよりほかには理解ができないのです

この文章は、アケビ科の植物が大陸移動の生き証人であることを伝えています。一つの植物をじっくり見つめることは、時として地球の歴史に思いを馳せることにもつながるのです。

 


今日のことば


この一日一日を
大切に過ごしなさい
人生とは
この一日のことです
いのち、とは
この一日のことです
今まで沢山あるし
これからも沢山ある
と思って
何も考えず
ただ漫然と
同じことを繰り返しては
いけません

                 葉祥明