フィールド日記
2012.01.17
クヌギエダイガフシ
2012.01.17 Tuesday
今朝は、校舎の上にうっすらと雪が積もっていました。
不二聖心の雑木林のクヌギやコナラの枝にはクヌギエダイガフシという虫こぶがたくさんついています。これは、クヌギエダイガタマバチという小さなハチが植物の組織内に化学物質を注入し、その結果細胞が異常な発達をしてできるものです。虫こぶの中でハチの卵は幼虫となり、やがて外の世界に成虫となってでてきます。そのあとは、虫こぶは空き家となりますが、その空き家をさまざまな生物が越冬場所として利用しています。不二聖心の雑木林だけでもテラニシシリアゲアリやモリチャバネゴキブリなどが越冬している様子を今月に入って確認することができました。テラニシシリアゲアリは女王を中心としたコロニーを小さな虫こぶの中で形成していて、たいへん驚きました。
いくつかの生物の中でとりわけ目立つのがクモの幼体です。わずか数ミリの幼体を4種類ほど採集しましたので、クモの研究者の方に同定を依頼したところ、ネコグモとアマギエビスグモとアリグモとフクログモの幼体だということがわかりました。やがてこれらのクモは成長して樹木の害虫を食べるようになることでしょう。虫こぶとクモと植物の興味深い関係がそこから見えてきます。
今日のことば
私は現代の人間が、もっとも多く失った感情が尊敬の感情だと思うのである。あまりに安価で猥雑な知識の吸収になれて、人は、世界にはまだ自分の理解出来ぬ深い秘密が隠れているという感情を失ってしまったのである。
梅原猛