フィールド日記
2012.01.05
セイタカアワダチソウ ギングチバチ
2012.01.05 Thursday
要注意外来生物として長年、悪者扱いされ続けてきたセイタカアワダチソウは漢字で書くと「背高泡立ち草」となります。その花穂の泡立つ様子は花の時期が終って種子をつけるようにならないと観察できません。今の時期はまさに「泡立ち草」です。
昨日の朝日新聞の夕刊に「さらばセイタカアワダチソウ ―― 農環研 除草剤使わず駆除成功 ―― 」というタイトルの記事が載りました。次のような内容です。
農業環境技術研究所(茨城県つくば市)が、全国に広がっている外来植物のセイタカアワダチソウを駆除する新たな手法を開発した。
同研究所は、セイタカアワダチソウが土壌のPHが低い(酸性度が高い)土地にはほとんど広がらないことに注目。セイタカアワダチソウなどの茂みを刈り取っ たあと、塩化アルミニウム剤を1平方メートルあたり1.2キロ散布して土壌のアルカリ度を下げると、チガヤなどの在来植物は復活するが、セイタカアワダチ ソウは2年間観察を続けてもほとんど生えなかった。
この土壌処理を、道路わきや農地周辺などで行えば、除草剤を使わずに効率的に駆除できるという。山口県内の果樹園の跡地を使って行った駆除実験では、セイ タカアワダチソウが減り、在来植物の種数が増えた。土壌処理をしなかった場所は5平方メートルあたりの在来植物は22種だったのに対して、処理した場所は 2年後に31種に増えていた。
今後、土の中にすむミミズや細菌などに対する塩化アルミの影響を調べ、他の外来植物の駆除にも役立つかも探る。
在来植物の増加を可能にするうれしいニュースですが、少し複雑な思いもあります。これだけセイタカアワダチソウが幅をきかせるようになるまでに、日本の 生態系はセイタカアワダチソウを組み込むかたちで調和できるように変化してきました。例えばセイタカアワダチソウから供給される多量の花粉や蜜によって活 動時期を秋遅くまで延ばすことになった生物もいたはずです。その生物たちが、人為的な植生の変化によって再び翻弄されることになります。
2枚目の写真のセイタカアワダチソウの花の上にいるハチは、ギングチバチという比較的珍しい種類のハチです。この写真は、11月に裏の駐車場で撮りまし た。(顕微鏡で見ると本当に口の周りが銀色の毛で覆われています。)このハチもセイタカアワダチソウに何らかの形で依存している可能性があります。セイタ カアワダチソウの減少によって少なからぬ影響を受けることになるかもしれません。
今日のことば
新しき光を揺りて
湧く水の如きおもひに拠りて生きむか
菊地新