フィールド日記
2011.10.02
マツムシ・ショウリョウバッタモドキ
平成23年10月2日 日曜日
ススキ野原で、マツムシの接写に成功しました。文部省唱歌の「蟲のこゑ」でおなじみの
「チンチロチンチロチンチロリン」という鳴き声を毎日、耳に していましたが日中は姿を見せることが少なく
警戒心も強いため、撮影はなかなか困難でした。それが今日は雌雄合わせて3匹の撮影に成功したのです。
マツム シのレッドデータリストは以下の通りです。
絶滅危惧Ⅰ類 群馬県
絶滅危惧Ⅱ類 東京都 千葉県
準絶滅危惧種 埼玉県 茨城県
下の写真は、1枚目がメスで2枚目がオスです。
実は昨日の夕方に、もう1種、直翅目の希少種の撮影に成功しています。ショウリョウバッタモドキです。
同じようにレッドデータリストを示します。
絶滅危惧Ⅰ類 群馬県
準絶滅危惧種 山形県 茨城県 千葉県 埼玉県 東京都 奈良県 高知県
以前から、矢島稔先生が1983年にお書きになった『昆虫ノート』(新潮文庫)という本を愛読していますが、
その本にはショウリョウバッタモドキについて以下のように書かれています。
とにかく四十年近く東京のまわりを虫を探して歩きまわっているから、いつどこで何に会えるかという
「昆虫ごよみ」が私の中にはできている。ところが近頃さっぱり会えなくなった種類がいくつかある。
直翅目ではキリギリス科のカヤキリとクツワムシ。バッタ科のショウリョウバッタモドキである。
特に後者は十年も会っていない。どれほど少なくなったかといわれても定量的に測定していないから、
いわば狩人のカンとしかいいようがないのだが……。
最後に出会ったのは四十八年夏で、しばしば訪れる相模湖に近い丘陵だったと記憶している。
その場所もすっかり変ってしまって、去年も遂にその姿を見出せなかった。私が特に鮮明におぼえている
のは触角から頭、胸、翅の背中側がピンク色で、イネ科の細長い葉の中にいると、
実に巧みなカムフラージュ効果があって、一瞬その姿が消えてしまうからだ。
ショウリョウバッタも、オンブバッタもたしかに保護色だが、決してそれに劣らない。
予想以上に細長い体、頭の尖っている角度など形も姿をかくすのに役立っている。
近年、保護色をテーマに調べているので、もう一度是非会いたいのだが願いがかなうだろうか。
べつにこのバッタがいなくなっても話題にならない。人間とは何の関わりも無いから。
でもこうした生物が他にもいるだろう。という事は自然界のバランスが くずれている証拠である。
人はまだ気づかない。次々に音もなく消える生物が天然記念物だと大問題になるが、その時はもうおそい。
この文章が28年前に書かれていることに注目したいと思います。1983年に既に著しく数を減らしていた
ショウリョウバッタモドキを、2011年 の不二聖心で普通に見ることができるのです。
しかし、その姿はいかにも弱々しく人が近づくと瞬時に葉裏に姿を隠してしまいます。
もし不二聖心のススキ野原 が適正に管理されなくなったらあっという間に絶滅してしまいそうです。
ショウリョウバッタとショウリョウバッタモドキの違いに気付ける目を持ち、希少種の数の増減を意識する
ことは実に大切なことだと思います。聖心の教育 は、世の中の弱い立場にあるものに目を向ける心を育てる
ことを目的の一つにしていますが、マツムシやショウリョウバッタモドキのような急激に数を減らし
つつある生き物を慈しむ心を持つことが、弱者への温かいまなざしを育てることにもつながるのでは
ないかと思っています。
今日のことば
夢をまことにと思うならば、焦らずに築きなさい。
その静かな歩みが遠い道を行く。
心を込めれば全ては清い。
この世に自由を求めるならば、焦らずに進みなさい。
小さいことにも全てを尽くし、飾らない喜びに気高さが住む。
日毎に石を積み続け、焦らずに築きなさい。日毎にそれであなたが育つ。
やがて天国の光があなたを包む。
アシジの聖フランシスコ