フィールド日記
2013.05.03
全国47都道府県で希少種に指定 エビネ


2013.05.03 Friday
5月2日に行われたオリエンテーリングのポストを回収している時にエビネの自生地を何か所か確認しました。1970年代以降、栽培目的の採取によって急激に数を減らしたエビネは今では全国47都道府県で絶滅危惧種に指定される希少種となってしまいました。このエビネについて2008年に「日本産ラン科希少植物エビネ及びキエビネにおけるウイルス発生状況」という非常に興味深い論文が発表されています。エビネの大敵はウイルス病であると言われますが、この論文は、自生地に生えていたエビネを栽培環境下に置くとウイルスの濃度が上昇するという実験結果を報告しています。こころない無秩序な採取が日本中のエビネをウイルス病に罹患させたことを思うと心が痛みます。林床に静かに咲くエビネの花々はどれも息をのむ美しさでした。
今日のことば
人間とゆうがは、自分の聞きたい理屈しか聞かんもんやきのう
『空の中』(有川浩)より
お知らせ
今年も8月に小学4年生から6年生を対象として「夏休み子供自然体験教室」を不二聖心女子学院で開催します。申し込み方法など詳しいことをお知りになりたい方は下記のURLをクリックしてください。
http://www.fujiseishin-jh.ed.jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=297
2013.05.02
高校オリエンテーリング大会 カヤランとクモラン





2013.05.02 Thursday
今日は高校のオリエンテーリング大会が行われました。約20万坪の敷地の中に設置された35のポストを探してクイズにも答え得点を競い合いました。保護者の方にも多数、参加をしていただきました。
オリエンテーリングのコースでカヤランとクモランの写真を撮りました。ともに樹上性の蘭で樹木から栄養を得ています。カヤランもクモランも全国の20以上の県で絶滅危惧種に指定されています。「夏休み子供自然体験教室」で講師を務める平本政隆教諭の植物調査によって希少な蘭の校内の自生地が次々に明らかになっています。
今日のことば
高校3年生の短歌より
やさしさのあふれる若葉日に透けてやわらかな風揺れるこもれび
感動の涙と笑顔は紙一重友の笑顔が涙でぬれた
叶うはず君が描いたその夢は頑張る姿ずっと見てきたから
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今年も8月に小学4年生から6年生を対象として「夏休み子供自然体験教室」を不二聖心女子学院で開催します。申し込み方法など詳しいことをお知りになりたい方は下記のURLをクリックしてください。
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2013.05.01
ガロアノミゾウムシの驚異の生態 夏休み子供自然体験教室




2013.05.01 Wednesday
コナラ(小楢)に形成される新種のゴール(虫こぶ)について、ゴールの研究者の方から調査依頼がありました。新種の登録をする際に日本各地の分布状況を合わせて記載するためです。残念ながら新種のゴールに出会うことはできませんでしたが、代わりにコナラの若葉に集まるさまざまな生き物と出会うことができました。コナラは里山の雑木林を代表する樹木であり、日本人とコナラとの長い関わりの歴史がコナラに集まる多くの生物の生存を支えてきました。コナラの若葉を好む虫たちの中でも驚異の生態を有するのがガロアノミゾウムシです。ガロアノミゾウムシはいわゆる絵かき虫(潜孔虫)で、葉の表裏の間に潜って葉の組織を食い進み、最後は葉の組織で円盤を作り、地上に落下していきます。その円盤には移動能力があります。円盤が動くのを始めて見た時には度胆をぬかれました。動画を見るとガロアノミゾウムシの幼虫が小楢の葉を使って円盤を作る様子がわかります。
今日のことば
昔の武蔵野は萱原のはてなき光景をもって絶類の美を鳴らしていたようにいい伝えてあるが、今の武蔵野は林である。林はじつに今の武蔵野の特色といってもよい。すなわち木はおもに楢の類いで冬はことごとく落葉し、春は滴るばかりの新緑萌え出ずるその変化が秩父嶺以東十数里の野いっせいに行なわれて、春夏秋冬を通じ霞に雨に月に風に霧に時雨に雪に、緑蔭に紅葉に、さまざまの光景を呈するその妙はちょっと西国地方また東北の者には解しかねるのである。元来日本人はこれまで楢の類いの落葉林の美をあまり知らなかったようである。林といえばおもに松林のみが日本の文学美術の上に認められていて、歌にも楢林の奥で時雨を聞くというようなことは見あたらない。自分も西国に人となって少年の時学生として初めて東京に上ってから十年になるが、かかる落葉林の美を解するに至ったのは近来のことで、それも左の文章がおおいに自分を教えたのである。
「武蔵野」(国木田独歩)より
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2013.04.30
ヒメハギと万葉集 名前のないヒメバチ


2013.04.30 Tuesday
動植物の世界で「ヒメ」が名前につくとその多くは「小さい」という意味を表します。今牧草地にたくさん咲いている紫の小さな花は「ヒメハギ」(東京都では絶滅危惧Ⅱ類に指定)です。萩に似ているので名前に「ハギ」とついていますが、萩はマメ科なのに対してヒメハギはヒメハギ科に属しています。よく見ると実に不思議な形をしている植物です。ヒメハギは古くから漢方薬の材料としても使われ、ヒメハギから作られた薬を「遠志」と言います。「遠志」はもともと中国から伝わってきた生薬です。天平勝宝8年(756)の聖武天皇崩御の時、冥福を祈願するために東大寺に収められた薬の中に「遠志」が含まれていたという記録が残っています。ところで、当時の人たちは「遠志」という字を何と読んでいたのでしょうか。読み方を考える一つの手がかりを万葉集の中に見つけました。万葉集に収められている山上憶良の挽歌の中に「伊能知遠志家騰」という万葉仮名の表現があります。「伊能知遠志家騰」は「命惜しけど」と読みます。このことから考えると薬の「遠志」も「おし」と読まれていた可能性があると言えるでしょう。「おし」は「命が惜しい」を連想させ、薬の名前としてもふさわしいように思います。
蜂の世界で「ヒメ」がつくといったら、ヒメバチです。不二聖心にもたくさんのヒメバチが生息していますが、ヒメバチというのは科名であって種名ではありません。写真のハチは、第二牧草地に向かう途中で見つけたマルヒメバチ亜科のヒメバチですが、国内未記載種であることがわかりました。まだ日本語の名前がついていないハチということです。このように名前がつけられていない種は、ヒメバチに限らず自然界に無数に存在します。自然界に存在していながら、まだ種名がつけられていない生物は2万種を超えるという説もあるほどです。
今日のことば
生きがいなどというのはまだ世俗に未練のある人が求めるものであって、成熟しきった人はそのようなものは求めない。野に咲く一輪の花のように静かである。
柳澤桂子
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2013.04.29
生物の世界の不思議をのぞく キンランとギンラン ゼンマイとゼンマイハバチ
2013.04.29 Monday
5月2日に行われる高校生のオリエンテーリング大会のコースにキンランとギンランが咲いているのを見つけました。ともに、ブナ科の樹木と菌根菌と蘭で三者の共生関係を築いている不思議な植物です。雑木林があるからこそ生きられる植物ですので、むやみに摘んだりしては絶対にいけない花です。キンランもギンランも全国各地で絶滅危惧種に指定されています。
下の写真が、キンランの写真です。

下の写真が、ギンランの写真です。
ギンランのすぐ近くでゼンマイがゼンマイハバチの幼虫に食べられていました。ゼンマイは葉を食べ尽くされると何とか子孫を残そうと再び芽を伸ばします。しかし十分に育ったところにゼンマイハバチの二代目が現れ、また幼虫に葉を食い尽くされてしまいます。ゼンマイはゼンマイハバチに操られているわけです。ゼンマイハバチとゼンマイの不思議な関係については日高敏隆の「蜂とゼンマイの春」というエッセイの中で詳しく紹介されています。下記のURLをクリックするとその全文を読むことができます。必読のエッセイです。
http://www.shinchosha.co.jp/books/html/116473.html

今日のことば
いっさいが虫けらの中にあるーー ファーブルの言葉である。
南フランスの片いなか、セリニアンの村はずれに小さな谷がある。ある夏の朝、谷底の石に腰をおろし、かわいた地面の一点を見つめている男がいた。
三人のブドウつみの女が通りすぎていく。そして夕暮れどき、ブドウでいっぱいになったカゴを頭にのせて家路を急ぐ彼女たちは、また、その男を見かけた。
朝と同じ場所で、同じ石に腰かけて、熱心に地面を見つめている男……。
「お気の毒に……。頭が変なんだね……」
そうつぶやく三人の女は、十字を胸元できって去って行った。
私は、このエピソードが好きだ。彼こそ、私たちに有名な昆虫記十巻を残してくれた人、ファーブルその人である。彼の足もとの地面では、ひとりぼっちのカリウドバチ、ラングドスアナバチが巣づくりをしていたのだ。
彼はこうしてたくさんの虫と友だちになった。そして知れば知るほど、一匹のムシケラの中につきることのない新鮮なおどろきを発見した。彼は、花のパリに見むきもせず、いなかにひきこもったきりの生活を送ったが、その毎日は退屈とはまったく無縁だったという。
昆虫記のどの一巻でもいい。キミが開いたそのページからは、少年のようなファーブルの心の高鳴りが伝わってくるだろう。
神秘の扉は、あけ放たれているのだ。私が、そしてキミがただそこにふみこんでいきさえすればよいのだ。そこから開けている光景は限りなく変化にとんで、奥が深い。しかし、きっかけは簡単だ。たった一匹の虫に心をとめることである。
矢島稔
2013.04.28
ハナミズキ 桐の花 ツチイナゴの鳴き声




2013.04.28 Sunday
一年の中でも4月の後半から5月にかけての新緑の季節は、とりわけ気持ちよく、過ごしやすい季節です。今日の不二聖心は、ハナミズキや桐の花が青空の青と新緑の緑に囲まれて美しく照り映えていました。一青窈は薄紅色のハナミズキを歌いましたが、不二聖心のハナミズキの花弁の色は純白です。桐の花は既に落花が始まっており、地上にはたくさんの花が落ちていました。地上に落ちた花の中には早速アリがもぐりこんでいました。
「共生の森」では成虫で越冬したツチイナゴが交尾をしていました。ツチイナゴは交尾の時にオスが後ろ脚をこすりあわせて音を出すことがあります。その瞬間を動画に収めることができました。動画をクリックすると、一瞬ですが、その音を聞くことができます。
今日のことば
高校3年生の短歌より
あざやかに空に舞う花見るために花筵の上にねころがりたい
やわらかい朝の日ざしがはだに溶け坂のじゃり道ここちよい音
大丈夫泣きたい時は泣けばいい私が君のそばにいるから
何気ない笑った声がこだまするみんなとずっと一緒にいたい
葉桜になりかけを見て思うのは一年後あるわれなき校舎
薄紅にゆらりゆらりと染まる風あとに残るはやさしいみどり
2013.04.27
クロホシツツハムシとバラルリツツハムシ


2013.04.27 Saturday
2種のツツハムシと出会い写真を撮りました。1枚目の写真は、クロホシツツハムシです。この虫は他に例をみないような面白い生態を持っています。卵を自分の糞で包んで産み落とすのです。糞で守られつつ成長した卵はやがて孵化し、幼虫もその糞ケースを背負って育ち、しばらくして糞の中で蛹となります。これを汚いなどと言ってはいけないのでしょう。どの生き物も生きていくためにさまざまな工夫を凝らしています。
2枚目はバラルリツツハムシです。名前の通り、バラの葉を食べるハムシですが、一方で栗の葉も食べます。薔薇しか食べない虫もいれば栗しか食べない虫もいて、薔薇と栗と両方食べる虫もいる。昆虫の食草の選び方も実に多様です。バラルリツツハムシは不二聖心初記録です。
今日のことば
もし誰かに言ってほしいことがあれば、男に頼みなさい。やってほしいことがあるときは女に頼みなさい。
"If you want something said, ask a man. If you want something done, ask a woman."
マーガレット・サッチャー
2013.04.26
シャクナゲとネパールの国旗

2013.04.26 Friday
キャンプ場のシャクナゲが咲き始めました。ネパールの国花でありヒマラヤにも多くの種が自生するシャクナゲは、標高によって見られる種類が異なり、ネパールでの垂直分布についての研究もあります。ネパールの国旗の真紅はシャクナゲの花の色に由来しますが、不二聖心のシャクナゲは淡いピンクです。シャクナゲは、種類もさまざまで、花の色もいろいろです。
今日のことば
あなたがこの世の偉大なものとともに、ささ
やかなものにも歓びを見出すことをわたしは願
っています。
一輪の花、ひとふしの歌、あなたの手のひら
にとまる蝶にも。
エレン・ラヴァイン
2013.04.25
ヤマギシモリノキモグリバエとスミソニアン博物館


2013.04.25 Thursday
高校1年生が間伐体験学習を行う校内の森の一角にアラカシとシラカシの交雑種と思われる樫の木が生えています。なぜかその木には他の樫の木以上にさまざまな生き物がやってきます。先日はヤマギシモリノキモグリバエを確認しました。ヤマギシモリノキモグリバエについて詳しく知るためには、1983年に出た上宮健吉博士の英文の著書を読むしかないと言われています。この本はアメリカで出版され、当時はスミソニアン博物館に購入を申し込むことができました。それから30年経った今でもスミソニアン博物館は上宮博士の著書を所蔵しているだろうかと思って問い合わせたところ、本は今もあることを教えてくださり、さらにその本のコピーを送ってくださるという返事が来ました。コピーを入れた荷物は今朝、スミソニアン博物館を出て日本に向かったそうです。上宮博士の著書が、不二聖心の生物相の一面をどのように照らしてくれるのか、今から楽しみにしています。
今日のことば
著者上宮健吉博士は本研究をほぼ2年も前に完成し、その出版刊行費の補助を申請するなど日本での出版に努力されたが、それは遂に実現されなかった。いうまでもなく、農業環境の生態構造の解明には分類学の進歩が不可欠であるが、巷には軽薄短小な出版物が氾濫している反面、こういう優れた基礎的研究成果の出版が困難になった日本の現状を、何とか改善できないものであろうか。
西島浩(上宮健吉博士の著書の書評より)
2013.04.24
成虫で越冬したツチイナゴ


2013.04.24 Wednesday
今の時期に草原を歩いていてトノサマバッタのような飛び方をしているバッタを見つけたらそれはツチイナゴです。この時期に力強く飛ぶことができるのは成虫で越冬したあかしです。「共生の森」では今の時期、少し歩けば必ずツチイナゴに出会うことができます。あの寒い冬を乗りこえて、よくこれだけの力が残っているものだと感心するほどの力強い飛翔力です。よく似たバッタは他にもいますが、目の下の黒い模様がツチイナゴの大きな特徴だと覚えたら一目で見分けられるようになるでしょう。
今日のことば
Life is sacred,at every stage;and in suffering we can find the truth.(人生はどの段階においても尊く聖なるものである。そして、私たちは苦しみのなかにおいてこそ真実を見出す。)
ヨハネ・パウロⅡ世
