校長室から

2023年04月

2023.04.27

静岡市にて

 今日、出張で静岡市に出かけたところ、あちらこちらで大河ドラマ「どうする家康」に関連した展示等を目にしました。大河ドラマ館は家康が幼少時代と晩年を過ごした静岡市(https://www.shizuoka-ieyasu.jp/ieyasu.html)・青壮年期を過ごした浜松市(https://hamamatsu-ieyasu.com/doramakan/)、そして生誕の地である岡崎市(https://okazaki-kanko.jp/dousuru-taiga)に設置されたとのこと、いずれも本学院の生徒たちとつながりのある場所ですのでとても親しみを感じます。5月の浜松まつりの家康公騎馬武者行列では主人公の俳優の方が家康に扮するのだそうです。
 今年、駿府城公園の前にオープンした静岡市歴史博物館(https://scmh.jp/)や今川氏時代の駿府の様子等、名所のまわり方を含めて熱意をもって紹介してくださった方々のお話に耳を傾けながら、あらためて静岡の文化・歴史のすばらしさを感じ、とても興味をもちました。いつかこれらの場所を巡ってみたいと願っています。
 

 18都道府県から集まっている生徒・保護者の方々が、お互いの地域性や文化をより良く知りあっていくことができたら、すばらしいことでしょう。

 

2023.04.20

静けさに包まれて

 爽やかな風が吹く朝、今年も、『Heart Story』(キャンパス巡礼ハンドブック)を片手に、中学1年生とキャンパスのSilent Walkに出かけました。敷地内にある聖心会のお墓では、学院の創立に深くかかわってくださったマザーメアリ・シェルドンをはじめ天国のシスター方等に、生徒たちの成長を祈りました。墓石に刻まれたRIP(Rest in Heaven)の意味を知っている生徒たちもいて感心しました。創立以来、多様な国々のシスターたちの献身と祈りに支えられていることを実感したひと時でした。 

2023.04.14

目に見えない行い

 本学院の金曜日の下校は一大イベントで、ほぼ一斉に帰宅する通学生・寄宿生を迎える多くのバスや、お迎えの車がロッジ前に並びます。教職員も総出で、生徒たちを見送ります。本年度初めての金曜日であった先週7日は、雨風が強い日で、帰宅する生徒たちも大変だったことでしょう。特に、新入生のことを心配して見送りました。

 今週の月曜日、ある学校の校長先生から御礼のお電話をいただきました。7日の夕方、三島駅で迷っていたその学校の一人の生徒さんの様子をみた本学院の生徒が、声をかけ、雨風の中、その学校まで送り届けてくれた、ということでした。校長先生が御礼を言おうと玄関に行ったところ、生徒は名前も告げずに帰宅した後だった、ということでした。

 あの夕方に、そのようなことがあったとは、と思いつつ、私自身、名前も知らないその学校の生徒さん、そして本校の生徒を思い、感謝の祈りを捧げました。


偽善者たちが人から褒められようと会堂や通りでするように、自分の前でラッパを吹き鳴らしては
ならない。・・・施しをするときは、右の手のしていることを左の手に知らせてはならない。・・・
そうすれば、隠れたことを見ておられる父が、あなたに報いてくださる。
(マタイによる福音書6章) 

2023.04.06

2023年度 不二聖心女子学院 学校目標

実行力を養う   ~Set Our Hearts on Fire~

 聖心女子学院は、カトリックの精神のもと、生徒たちが「社会に貢献する賢明な女性」として成長していくことを目指します。そのためには、生徒自身が、また教職員、保護者の方々が、教育方針「魂を育てる」「知性を磨く」「実行力を養う」の各領域における成長を意識し、統合していくよう努めることが必要です。不二聖心女子学院では、毎年、一つの教育方針に焦点をあて、3年間の中で3つの教育方針をスパイラルに深めていきます。本年度は「実行力を養う」に焦点をあてる年で、学院目標は「Set Our Hearts on Fire」といたします。

1) 創立者ソフィー・バラの生涯を貫く炎 
 皆さんは、「炎」や「火」に対して、どのようなイメージをもちますか?「愛」「情熱」「革命」「苦難」――これらは創立者の生涯と結びついて連想されるものです。
 1779年12月12日、中世の面影の残る街ジュワニー(Joigny/フランス)は、大火に包まれました。街路から伝わってくる騒然とした雰囲気により、3人目の子供をみごもっていたバラ夫人は恐怖のあまり産気づき、夜、11時頃、出産予定日より2か月前にソフィーを生みました。火事が収まったのはバラ家のわずか3軒手前でした。 
 これはジュワニーの歴史に残る大火として、その恐怖の中で生を受けたソフィーのエピソードと共に語り継がれていきました。人々はソフィーを「奇跡の子」と呼び、たびたび「あなたはどのように生まれたのですか?」と尋ねたそうです。幼い時から「火によって」という答えが求められているのを理解していた、とソフィー自身が語っています。やがて物語は創り直され、ソフィーが炎から救われたのは、誕生の瞬間から果たすべき使命が彼女にあったからだともいわれました。このような誕生のいきさつは、ソフィーの生涯に強い影響を与えたと思います。   
 彼女の幼少時代は、革命前および革命そのものと密接にかかわっていました。

2)「私の中には2つの炎が燃えている」
 16歳になると、ソフィーは兄ルイ(神父)に連れられてパリに上り、学問と祈りの生活を続けました。18歳の時には、カルメル会という修道会に入り、祈りと観想のうちに神に生涯を捧げることを考えていたようです。しかし、新しい修道会の構想を描いていたジョゼフ・バラン神父様から、ソフィーが授けられた高い学問は修道院の奥深くに埋没させるものではなく、革命後の危機的な状況あって、若い女性の教育を通してイエスの聖心(みこころ)に奉献する新修道会の創立に参与するように、と説得されます。
 後に、ソフィーは、祈りのうちに抱いたビジョンについて述べています。「もし、私たちが24人集まって交代で一昼夜<礼拝する>としたらそれはすばらしいことかもしれない。けれども<礼拝の精神に生きる人を育てる>ことができたなら・・・」これが、聖心女子学院の建学の精神へとつながっていきました。  
 ソフィーは1800年11月21日に創立された修道会(後の聖心会)の院長となり、翌年1801年にアミアン(Amiens/フランス)に初の聖心学院が開校、1865年5月25日に天に召されるまで、総長として、ヨーロッパ諸国、アメリカ大陸へと炎のように広がっていった聖心会の修道院と学院を導きました。「私の中には二つの炎が燃えています。イエスの聖心(みこころ)に対する愛の炎と生徒に対する愛の炎です」(Madeleine Sophie Barat)
 皆さんは、このような創立者の思いによって集められた方々です。偶像や虚構ではなく、真に価値あるものを理解し、それを望むような生き方へと呼ばれています。

3) Set Our Hearts on Fire! 
 ソフィーは、この二つの炎を燃え立たせながら、フランス革命、ナポレオン帝国、王政復古、七月革命等、歴史上の大事件にいろどられた変化の時代を、未来への揺るぎないビジョンをもって生き抜きました。
 私たちの住む地球もまた、皆さんが取り組んでいるSDGsで取り上げられているような課題が山積しています。国連は1月24日の「教育の国際デー」(International Day of Education)で、2023年のテーマを「To invest in people, prioritize education(人に投資を、教育を最優先に)」を掲げました。この日の事務総長のスピーチでは、アフガニスタンにおいて女児が中等・高等教育の機会を奪われている現実に言及がなされています。昨年の今頃、世界中の聖心ファミリーが一つになってウクライナ支援の活動を始めましたが、いまだ戦争が続く中で500万人以上の子どもの教育が妨げられています(2023年1月24日:UNICEF(国連児童基金))。
 豊かな学びの機会を与えられている皆さん、ソフィーのスピリットを学び、自らの使命について考えてください。不二聖心の6年間は、Foundation ⇒ Originality ⇒ Vocationという3つのステージから成っています。それぞれの段階での学びについて、また6年間の中で学びをどのようにデザインし、統合していくかを主体的に考えていくことができますように。お一人おひとりに、他の人では代わることができない神様から託された使命が必ずあります。それを探し、確かめ、具体的にはどのような形をとるのかを見つけるのはあなたにしかできないことです。在学中にすべてが見えるわけではないでしょう。けれども、問い、探し続けることには意味があります。

 創立者のうちに燃え続けた愛の炎が、この学院の中で常に燃え続けていますように。今の地球が抱える課題にどう向き合っていくのか、学院全体としても考えてまいりましょう。「学院」とは、建物や敷地のことをいうのではなく、創立者が「聖心(みこころ)の子供」と呼んだ生徒たち、そして教職員や保護者の方々も含めたコミュニティ全体のことをいいます。お互いの心に、学びに、行動に、火を灯し合い、炎を燃やし合うようなかかわりを心がけましょう。イースター(復活祭:今年は4月9日)の力強い灯が、私たちを内から強め、照らしますように。
 秀峰富士を仰ぐ、静謐で不二なる(二つとない)学び舎から、世界に向けて愛の灯を掲げましょう! 

「子どもたちを通してこの世界に、愛の力が花開くように」(Madeleine Sophie Barat) 

2023年4月6日 始業式 校長講話より シスター大原 眞実

2023.04.03

新年度を控えて

 3月下旬にフランスに行ってまいりました。ジュワニーの創立者のご生家のオラトリー、またご遺体が安置されているパリの教会等で、2023年度の始まりを待つ全ての不二聖心生のためにお祈りしました。入学式、始業式で皆さんにお目にかかることを楽しみにしています。

フランス「ルーツへの旅」再開に向けては、さまざまな準備が必要です。まさに手作りの旅ですので、現地のシスター方や卒業生等、多くの方々の善意あるサポートによって具体化されていきます。コロナ前とは状況が変わっている面がありますが、すべての準備が整い再開にこぎつけられますようにと願っています。