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フィールド日記

2012年11月

2012.11.20

水面を移動するハエ  ミギワバエ

 

 2012.11.20 Tuesday

 11月18日に第2牧草地の池で撮影した、水の上を移動するハエが、専門家の方の同定によってミギワバエ科の1種で、Brachydeutera属の可能性が高いことがわかりました。
脚をよく見ると水の上を移動しやすい構造になっていることがわかります。

今日のことば

How wonderful life is while you are in the world.
君がいてくれるだけで、人生がどんなに素晴しくなるか。

                      Your Song(Elton John)より

2012.11.19

変形したヤブムラサキの実

  2012.11.19 Monday

 第2牧草地のヤブムラサキの木にたくさん美しい実がついていました。ヤブムラサキの実は通常、直径3ミリ程度の小さな球形ですが、第2牧草地では変形した実を見つけることができました。
なぜ変形したのかは、現在調査中です。

 
 

                今日のことば

 モンテ・セナリオは、フィレンツェの北にある海抜八百メートルほどの山で、その頂上に、セルヴィ・
ディ・マリア修道会をはじめた、七人の聖人の由緒ある、大きな森にかこまれた、古い修道院があります。
ジョバンニ神父さんは、その森に点在する、昔、修道士の住んでいた小さな家のひとつを仕事場にしてお
られて、一年のうちの何ヶ月かを、そこで祈りと書きものにすごされるのだということでした。
やっと春のきた杉の木立には、すみれが咲きはじめたばかりでした。ながい冬のあいだに、そこかしこい
たんだ山の家に着くと、神父さんはすぐに、持ってこられた大きな聖母の絵を、壁にかける仕事にとりか
かられ、私には、庭をみてくれないかといわれました。大分雨が降らなかったので、白いあらせいとうや、
ばらのうわった花畑の土は、すっかり乾いてひびわれていました。庭のすみの天井井戸から、私は何杯水
を運んだでしょうか。何時間たったか、一応全体に水をかけおわったとき、家のなかから神父さんが声を
かけられました。「今日はこれぐらいでいいでしょう。召しあがりませんか」。窓ぎわの新聞紙のうえに
は、いくつかのリンゴとオレンジが、灰色の空気のなかで、ふしぎなほどあかるくみえました。つめを立
ててオレンジの皮をむいていると、雨が降ってきました。ほねおって水をまいた庭は、見る見るうちに、
しっとりとうつくしく濡れてゆきます。屋根や木の葉にあたる音をききながら、神父さんは、ぽつりとこ
う云われました。
――音がする。わたし達は、あまりさわがしい中にばかり住んでいて、おと、ほんとうの音とはどんなも
のだったか、わすれているくらいだ――
なにか、奈良の田舎の古寺にでも春雨を聴くおもいで、私も耳をすませるのでした。

                                 須賀敦子

2012.11.18

オナガグモの驚異の擬態

2012.11.18 Sunday

 校舎の裏で松の葉に擬態しているオナガグモを撮影しました。
オナガグモはクモを食べるクモとして知られます。文一総合出版の『日本のクモ』には、「糸には粘性が無く、その糸を伝わって来るクモを捕える」と書かれています。

 

 

                 今日のことば

人間の自由は、諸条件からの自由ではなくて、それら諸条件に対して、自分のあり方を決める自由である。
             
                               ヴィクター・フランクル

2012.11.17

ヌルデの紅葉

 

 2012.11.17 Saturday
不二聖心にはかつて京都から取り寄せたと言われるイロハモミジの木がたくさんあり、紅葉をたっぷり楽しむことができますが、モミジの紅葉の盛りにはまた少し時間がかかるようです。今の時期に紅葉の盛りを迎えているのはウルシ科の植物です。すすき野原ではウルシ科ウルシ属のヌルデが美しく紅葉していました。ヌルデは奇数羽状複葉で葉軸に翼があるので簡単に他の樹木と見分けることができます。
聖徳太子が残したエピソードに、味方が苦戦に陥った時にヌルデの木を刻んで四天王の像を作り、敵を滅ぼした暁には寺と塔を建立しますと願をかけたという話があります。ヌルデは長い間、特別な神通力を持った木であると信じられてきました。



今日のことば


一晩で
何億というお金を
あっちだこっちだと
動かす若社長より

北国の干潟で
泥に塗れ
黙々と何かを
捕っている
茶髪の青年の方が
美しい

と、思える人は
決して
負け組では
ありません

                      山城美奈子

2012.11.16

アシナガバチの巣   不二の自然63コアシナガバチ

 2012.11.16 Friday

すすき野原でアシナガバチの巣を見つけました。もう子育てがすべて終わった巣です。

『不二の自然3』という冊子の中で以前に紹介したアシナガバチの記事を再録しておきます。

               不二の自然63

コアシナガバチ
科名 ハチ目スズメバチ科
学名 Polistes snelleni
 

 レイチェル・カーソンの『沈黙の春』の中に次のような一節があります。

 アシナガバチの雌は、受精卵をいだいて人もこない屋根裏の片すみにかくれている。その卵に彼女の
コロニーの未来のすべてがひそんでいる。ひとりさびしく冬をすごした彼女は、春になると小さな紙の
巣をつくり、そのなかに二つか三つ卵を産みつけ、働きバチを何匹か、大事に育てる。働き蜂の助けを
かりて、やがて巣は大きくなり、コロニーがひろがってゆき、働きバチは、暑い夏の日が続くかぎり休
むことなく餌をさがし集める。

 レイチェル・カーソンによって描かれた自然の営みを不二聖心の中でつぶさに観察することができます。『アシナガバチ一億年のドラマ』(山根爽一)には「普通は約7割のコロニーがワーカーの羽化を待たず
に失われる」とあります。不二聖心に生息するコアシナガバチの巣作りが無事に成功することを願ってい
ます。
                                   (平成22年6月12日)

                 今日のことば


地球は、ひとつの大きないのち。歌い手としての活動を始めて15年あまり、このごろ私の心には、
そんな思いがこだまするようになりました。この星の反対側で、1人のいのちが奪われるときその
悲しみのため息は、私たちの奥深くにきっと、小さな震えを起こす。
すべてのいのちは、つながっているから。

                                鈴木重子

2012.11.15

初霜  球技大会  ハラビロカマキリ  コカマキリ

 2012.11.15 Thursday

 今朝7時の不二聖心の気温は3度でした。「共生の森」では初霜が見られました。

 

 しかし昼間はよく晴れ、絶好の球技大会日和となり、生徒たちの生き生きとプレーする姿が
 たくさん見られました。

 

 今日は、ハラビロカマキリとコカマキリを校舎の裏のほぼ同じ場所で見かけました。
 背中の白い点がハラビロカマキリの目印です。


 

 

 キリンビール株式会社のホームページの中で、不二聖心の自然の写真が紹介されました。
 ご覧になりたい方は以下のURLをクリックしてください。
 
 http://www.kirin.co.jp/csr/env/special/suigen/forests/fuji/
 


             今日のことば

 高校3年生の短歌

 気づいたら今週私の誕生日さよなら私の十七歳(セブンティーン)    
 壮大な秋の絵画が美しい窓という名の巨大なキャンバス         
 将来はやりたいことが多すぎて収拾つかない頭のノート         
 覚悟して離れた道を選んでもさよならなんてまだまだ言えない      
 平和への一歩を担う大統領核なき世界へ新たな四年           
 繰り返し間違うことの何が悪い七度転んで八起きればいい        
 噛み締める間もなく日々を駆け抜けて全てが最後の実感沸かず      
 肩寄せる友に感じるぬくもりが心に積もる憂いを溶かす         
 ありきたりだけどみんなに伝えたい泣かずに言えるかこの「ありがとう」を

2012.11.14

クサギアブラムシ

キリンビール株式会社のホームページの中で不二聖心の自然の写真が紹介されました

2012.11.14 Wednesday

「共生の森」に生えているクサギの葉の中に縮れてしまっている葉がいくつかありました。それらの
葉の裏には必ずクサギアブラムシが潜んでいます。クサギアブラムシが葉の汁を吸うことによって、
葉の形が変形してしまうのです。「共生の森」以外でも、不二聖心のフィールドでは、このような
クサギの姿をたくさん目にすることができます。

 

 キリンビール株式会社のホームページの中で、不二聖心の自然の写真が紹介されました。
ご覧になりたい方は以下のURLをクリックしてください。
 
http://www.kirin.co.jp/csr/env/special/suigen/forests/fuji/
 


                今日のことば


「鳥飛んで鳥となり、魚泳いで魚となる」という禅語があります。とすれば、「人祈って、人となる」
といえるのではないでしょうか。というのも、万物の霊長といわれる人間を、動物と確実に区別する
ものは、結局、「祈る」ということしかないと思われるからです。

                                                

                                奥村一郎

2012.11.13

ベニバナボロギク  ショウジョウクロバエ

 2012.11.13 Tuesday

 不二聖心の今朝7時の気温は、7度でした。朝晩の冷え込みがだいぶ厳しくなってきました。
「共生の森」には多くの帰化植物が生えていて、寒さの中でも元気に花を咲かせています。写真の植物はベニバナボロギクで、戦後あっという間に、日本各地に広がりました。戦時中は東南アジア各地に出征した兵士が南陽春菊と呼んで食用にしていたそうです。


 

  すすき野原に咲いている野菊にショウジョウクロバエがとまっていました。夏にやや高い山に現れるハエですが、11月に不二聖心で見られるとは驚きです。個体レベルでも寒さに対する耐性はそれぞれで異なるのかもしれません。


 

 

                今日のことば

A級戦犯の夫 思いやる夫人   無職 升水 一三 (東京都大田区 77歳)

「時の墓碑銘 此人等信念もなく理想なし」(5日朝刊)が、私を半世紀前にタイムスリップさせました。
私は戦後、隅田川のほとりにあった、進駐軍に接収された病院の受付でアルバイトをしていました。
朝鮮戦争が始まると、米軍の負傷兵が搬送されてきました。そのうち、日本人の患者も運ばれてきて、
日本人もこの戦争を手伝っているのかと、驚いた覚えがあります。
当時、巣鴨拘置所から日本人の戦犯容疑の人たちも数人きていました。A級戦犯では大川周明、東郷茂徳
両氏が一階の病棟に入院していて、ご家族の方が面会に通われていました。そんな中に、ブロンドのドイツ
婦人がおられました。東郷茂徳夫人でした。
ある時、面会日以外の日にみえたので「今日は面会出来ない日ですが」と声をかけました。すると「わかっ
ています。夫と同じ建物の中にしばらく居たいだけです」と受付前のソファに座り、手提げ袋から毛糸の玉
を取りだして、静かに編み物をされていました。
ここにも、戦争に翻弄された人の姿を見る思いでした。             
                                   朝日新聞「声」の欄より

2012.11.12

カタバミ  ハナカタバミ  コバネイナゴ  ムジナタケ

  2012.11.12 Monday

 生きものにとっては、厳しい季節に向かいつつあります。今週は後半にいくにつれて寒さがいっそう増してくるという予報も出ています。そのような中で、不二聖心のフィールドでたくましく生きる動植物を紹介しましょう。
先ずは「共生の森」にたくさん咲いているカタバミです。その旺盛な繁殖力から子孫繁栄を願って家紋のデザインとされることも多いカタバミですが、寒さに対しても相当な耐性があります。


 

 次はハナカタバミです。カタバミの仲間ですが、花の少なくなる季節に不二聖心の正門付近を
 美しく彩っています。


 

 次は「共生の森」のコバネイナゴです。植樹のために高校1年生が打ち込んだ杭が多くの生きもの
 の日向ぼっこの恰好の場所となっています。


 

 最後はムジナタケです。この表皮が狸の毛皮のようなキノコということでムジナ(狸)タケとい
 う名前がつけられました。ムジナタケの生えていた場所のすぐ近くで狸を目撃したことがあります。


 

 

                今日のことば

生物は細胞からなり、細胞はたくぱく質からなる。それらはすべて分子からなり、分子は原子から、
原子は核と電子からできている。もしそういうことがわかったとしても、生命の神秘は消え失せない。
寺田寅彦の言葉を借りれば、「生命の不思議を細胞から原子に移したというのみで原子の不思議は少し
も変りはない」。

                                中谷宇吉郎

2012.11.11

「共生の森」の看板  ナガコガネグモの卵のう

  2012.11.11 Sunday

 昨日の「不二聖心のフィールド日記」で紹介した「共生の森」の看板について、もっとデザインをしっかり見たいという声がありましたので、再度写真を掲載します。

  

 すすき野原で11月9日にナガコガネグモの卵のうの写真を撮りました。近くには母グモと思われるナガコガネグモがいましたが、昨日、そのクモが忽然と姿を消しました。何らかの理由で個体としての一生を終えたものと思われます。しかし、卵のうは残り、種としてのナガコガネグモはこれからもすすき野原で生き続けていきます。

 

              今日のことば

   ぼくが ここに いるとき
   ほかの どんなものも
   ぼくに かさなって
   ここに いることは できない

   もしも ゾウが ここに いるならば
   そのゾウだけ
   マメが いるならば
   その一つぶの マメだけ
   しか ここに いることは できない

   ああ このちきゅうの うえでは
   こんなに だいじに
   まもられているのだ
   どんなものが どんなところに
   いるときにも

   その「いること」こそが
   なににも まして
   すばらしいこと として
                             まどみちお