フィールド日記
2013.07.07
マユミの新芽 伊勢物語24段
2013.07.07 Sunday
「共生の森」に設置した電気柵のおかげで少しずついろいろな植物が息を吹き返しています。最も目立つのはマユミの新芽でしょうか。マユミは鹿がとりわけ好む植物のようで、被害がたいへんひどく、新芽が出ては食べられるという状況を繰り返していました。今度こそ順調な生育が期待できそうです。伊勢物語に「梓弓真弓槻弓年を経てわがせしがごとうるわしみせよ」という歌があります。都に宮仕えに行って三年ぶりに帰ってきた夫が、妻が再婚するという事実を知り、身を引こうとする際に妻に向けて詠んだ歌です。いつの日か、丈夫に育ったマユミを前にして伊勢物語の歌の話を生徒たちにしてみたいと思っています。
今日のことば
むかし、男、かたゐなかにすみけり。 男、宮仕へしにとて、別れ惜しみてゆきにけるままに、三年来ざりければ、待ちわびたりけるに、いとねむごろに言ひける人に、今宵あはむと契りたりけるに、この男来たりけり。この戸あけたまへと叩きけれど、あけで、歌をなむ詠みて出だしたりける。
あらたまのとしの三年をまちわびてただ今宵こそ新枕すれ
と言ひ出したりければ、あづさ弓ま弓つき弓年を経てわがせしがごとうるはしみせよ
と言ひて、いなむとしければ、女、あづさ弓引けど引かねど昔より心は君によりにしものを
と言ひけれど、男かへりにけり。女いと悲しくて、しりに立ちておひゆけど、えおひつかで、清水のある所にふしにけり。そこなる岩に、およびの血して書きつける。あひ思はで離れぬる人をとどめかねわが身は今ぞ消えはてぬめる
と書きて、そこにいたづらになりにけり。
伊勢物語24段