フィールド日記
2012年09月
2012.09.09
「秋の30分ハイキング」の下見 クルマバッタ オトギリソウ ヒヨドリバナなど
2012.09.09 Sunday
9月22日(土)の学校説明会終了後に希望者を対象として行われる「秋の30分ハイキング」
(詳しくはホームページのトップページの「公開行事」をご覧ください)のコースの下見を
してきました。
今日も安定した晴れの一日でした。9月に入っても雨の少ない日が続きます。
東京都では絶滅したと言われるクルマバッタを100匹以上見ました。
ツルボの花やオトギリソウの花をいくつか見かけました。
オンブバッタはなぜかヒヨドリバナの上でよく見かけました。
クリスマスのバッタ、ツチイナゴの幼虫もだいぶ大きくなってきました。
当日も晴れてほしいと切に願っています。
今日のことば
自然写真を撮るためにもっとも必要なものは何かと聞かれたら、それは対象にたいする深い
興味だと思う。初めは漠然とした気持ちでいい。花、昆虫、ある種の生き物への興味、山へ
の憧れ、あるいはある土地への思い……。それが何であれ、まず、その対象に対するマイン
ドの部分での関わりである。そして次は、その気持ちをさらに深めていくことが必要になっ
てくる。言いかえれば、どんどん好きになっていくプロセスだと。それが、勉強をしていく
ことだと思う。
星野道夫
2012.09.08
ヤブガラシの花とキンケハラナガツチバチ
2012.09.08 Saturday
ヤブガラシの花にたくさんのキンケハラナガツチバチが集まってきていました。その名の通り、
金色の体毛が美しいハチです。
ツチバチはハナムグリやコガネムシなどの甲虫の幼虫に卵を産み付け、孵化したハチの子どもは
甲虫の幼虫を食べて育つことで知られています。集英社文庫の『ファーブル昆虫記2 狩りをするハチ』
(奥本大三郎編・訳)に収められている「コガネムシを狩るツチバチ」には、ファーブルがその事実を
つきとめていく過程が実に興味深く綴られています。その中から、ハチの子どもが甲虫の幼虫をどのよ
うにして食べていくのかを記した部分を引用してみましょう。
ツチバチの幼虫は、母親のハチがうみつけてくれたその場所から、用心しながら食べていきます。
小さいハチの幼虫のくびはのびて、すこしずつ奥のほうへと、大あごがとどくようになっていきます。
するとハチの幼虫は、ハナムグリの幼虫が生きていくために、それほど重要でないところから食べ
はじめます。
そうして、だんだんと、ハナムグリの幼虫が生きていくのにたいせつなところにうつっていくのです。
最初に幼虫がかみつくと、きず口からハナムグリの体液がにじみ出してきます。まずこれを飲めば、
消化にもいいし、栄養があるでしょう。ツチバチの幼虫にとっては、これが母乳のようになるわけです。
小さな幼虫がすこし体液を吸ったぐらいでは、大きなハナムグリの幼虫は、すぐには死んだりはしません。
次に食べるのは内臓の外側の脂肪です。これをかじり、それから皮の裏側の筋肉を食べます。
そしてその次が、たいせつな内臓です。このころには、ハナムグリの幼虫はとてもよわっていますが、
まだ生きています。
最後に神経と呼吸器です。ここまでツチバチの幼虫に食べられてしまうと、ハナムグリの幼虫はとうとう
死んでしまいます。そのときまで、生きたままの新鮮な肉を、ツチバチの幼虫は食べることができたのです。
以前にハチ学の権威の先生にキンケハラナガツチバチはどのコガネムシの幼虫を狩るのか質問したところ、
まだそれは明らかになっていないということでした。不二聖心はキンケハラナガツチバチの宝庫です。
ここでなら世界初の発見ができるかもしれません。
今日のことば
夏に冬を慕い、冬に夏をのみ思うは愚者なり。夏ありて夏を楽しみ、冬来たれば冬を味わう。
この心を神は嘉す。自然における草木の如く、正しき成長はそこにのみある。
浅川巧
お知らせ
ホームページ内の「不二の自然」(12エサキモンキツノカメムシと13ニホンザル)を更新しました。
画像をクリックすると写真を拡大することができます。
2012.09.07
ムラサキシキブ オオセンチコガネ 「無言館の青春」の感想
2012.09.07 Friday
富士山の実に美しい朝でした。芙蓉の花の数も日に日に増えています。
ムラサキシキブの実が紫に色づき始めました。ムラサキシキブの学名はCallicarpa japonica
といい、「日本の美しい実」という意味を持ちます。日本では、昔から紫を格別高貴な色として
きましたが、ムラサキシキブの学名もその色の美しさを特に強調しています。
久しぶりに糞虫のオオセンチコガネの姿を接写することができました。これもまた美しい
紫色をしています。鹿が多い奈良公園はたくさんのセンチコガネが生息することでも知られています。
鹿の糞を食べて育つセンチコガネは糞の掃除屋としての役目も果たしているのです。不二聖心でも、
たくさんの鹿がいることが、センチコガネの数の多さと関係しています。
今日のことば
「無言館の青春」(窪島誠一郎)についての中学3年生の感想
◎「無言館」という言葉は小学生の時に一度聞いたことがありました。絵に少し興味がある
私は少しだけ行ってみたいなという気持ちがありましたが、それを誰かに言ったことはあり
ません。それは正直「戦争」が怖いからです。だから普通の美術館ではない無言館は私にと
って近寄りがたい場所でした。しかし、改めてこの作品を読んで、この絵を描いている画学
生は普通の画家と同じような気持ち、ただ絵が好きだという気持ちで描いていることがわか
り、それを恐ろしいと思っていた自分が情けなくなりました。いつ行けるかわからないけれ
ど、生きている間に一度は行けたらいいなと思います。
◎私は、この「無言館の青春」を読んで、「そういえば、兵士となった学生にも、今の私た
ちのような特技や趣味があったんだ。」と今頃になって気づかされた。それを不条理な戦争
によってあきらめ、またさらに家族とも離れ、二度と会えないというのを理解して戦争へ行
くというのは、本当にむごい。私には絶対にできない。夢をあきらめて死んでいった学生の
志は、今の日本には足りない志だと思った。画学生たちが私たちに教えてくれた「魂の静け
さ」を少しでも正しく心に留められたらいいと思う。
◎私は無言館について書かれた「春さんのスケッチブック」という本を小学四年の時に読ん
でから、ずっと無言館のことが気になっていました。いつか行きたいと思いつつ、未だ行け
ていません。今回もまた無言館とご縁があったので、絶対行きたいです。夢をあきらめ命を
捨てた彼らの絵を心におさめたいです。
◎私は戦争が、こんなにも若い人の、未来ある人々の命をうばっていったものだということ
を初めてここで知りました。むごいことをしたな…と思い、つらいです。でもみんな絵が大
好きで未来を信じていたように感じます。家族を大切にしていました。無言館に行ってみた
いです。現実を見つめなければならないと改めて知らされました。
私の祖父の兄はフィリピンで亡くなっています。しかし、みんなくわしく教えてはくれませ
ん。今はもういないから、六十年以上前のことだから、という思いが強いのだと感じます。
近年、平気で「死ね」などと言える人を見かけますが、何だか同じあやまちを犯そうとして
いるような気がしてなりません。今度、祖父の兄のことをきいてみようと思います。動かぬ
歴史をもっと知って、ちゃんと未来にも伝えられるようにならないといけないと思いました。
2012.09.06
ルリタテハの成虫と幼虫
2012.09.06 Thursday
ルリタテハの写真を撮りました。このチョウも樹液に集まるチョウですが、こちらに気づく
とワラビの葉の上へと移動してしまいました。いつみても美しいチョウだと思います。幼虫時代
の姿とのあまりの違いに驚いてしまいます。
ルリタテハはアジアに広く分布しています。軍医としてビルマ(ミャンマー)に赴いた人見勝氏は
次のような文章を残しています。
昭和19年の雨季7月頃でしたか、ビルマのアラカン山の自動車輸送路上に止っているルリタテハ
を見出した時の感激は忘れられません。故郷の知人に逢った時のような懐かしさを覚え、廻診任務
を忘れて赤土の上に舞戻ってくる蝶の姿に見入っていました。
これが幼虫の姿です。
今日のことば
この世の生において、おまえの肉体は力つきぬのに、そのなかで魂のほうがさきに力つきるとは、
恥ずべきことである。
マルクス・アウレリウス
2012.09.05
樹液の雫 ヒカゲチョウ
2012.09.05 Tuesday
今朝も樹液とそこに集まる虫の様子を観察しました。
樹液は雫がたれるほどよく出ていました。まだまだボクトウガの活動は活発なようです。
カナブンも貪るように樹液をなめていました。
ヒカゲチョウがいました。ヒカゲチョウは樹液に集まる、常連のチョウです。よく似た仲間に
クロヒカゲがいますが、標高200メートル程度の不二聖心でよく見られるのは、ヒカゲチョウの方です。
ヒカゲチョウやクロヒカゲは、大陸にも日本にも生息していますが、ヒカゲチョウは北海道にはいません。
チョウの研究家として著名な高橋真弓先生は、「クロヒカゲより遅れて生息域を北に広げたヒカゲチョウ
が本州の北端のあたりに到着した時には、津軽海峡によって本州と北海道が分断されていたので北海道に
渡れなかった可能性がある」と述べられています。
大地の歴史に運命を変えられたチョウという視点を含めると、この地味なチョウがとても魅力的なチョウ
に見えてきます。
今日のことば
「センス・オブ・ワンダー」というのは、何かに対して感動する心であり、驚きの気持ちですね。
美しい地球の景色に対して、素直に驚ける、素直に感動できるような心を持つことが大事だと思います。
「別に珍しくないんじゃない」なんて白けずに、「あ、すごい」と感じられるかどうか。「こんな景色
は見たことがない」と感じるかどうかですね。「ふーん、別に、そんなに」って言ってしまうことで逃
してしまっている感動って、かなりあるんじゃないかなと思います。
野口聡一
2012.09.04
ボクトウガと樹液 カブトムシ
2012.09.04 Tuesday
夏休み子供体験教室に参加した小学生から、体験学習で実際に観察した「ボクトウガの幼虫と樹液」
についてのすばらしいレポートが送られてきました。ボクトウガの幼虫がクヌギの材に穴をあけることで、
クヌギの木は樹液を出し、その樹液に近寄ってきた虫をボクトウガの幼虫は食べると考えられています。
その関係が見事にとらえられているレポートでした。
今朝、9月に入ってボクトウガの幼虫と樹液の様子に変化は見られるか、確認してみました。
最初に目に入ったのはカブトムシでした。
次に見つけたのはクワガタでしたが、その頭の先にボクトウガの幼虫の頭部が確認できました。
別の木ではボクトウガの幼虫が移動しているところにでくわしました。まだまだ活発に活動して
いるようですから、樹液の季節はしばらく続くかもしれません。
今日のことば
地球上で人間は、自分たち一種類だけが増え、オオカミなど天敵を滅ぼし続けている。でも、
昆虫はそんなことしません。天敵を滅ぼし、自分たちの数が増えれば、餌の植物を食べ尽くして
全滅してしまいます。もっと自然が全体的に、有機的につながっていることを考えなくては。
奥本大三郎
2012.09.03
大豆の母 ツルマメ
2012.09.03 Monday
すすき野原からキャンプ場へ向かう途中にツルマメ(Glycine soja)の花が咲いていました。
ツルマメを改良して栽培化することによって、大豆は作られたと考えられています。学名の
sojaには「醤油の」という意味がありますが、醤油も味噌も納豆も、始まりはこの小さな花
からということなのだと思います。
今日のことば
置かれた場に不平不満を持ち、他人の出方で幸せになったりしては、私は環境の奴隷でしかない。
人間と生まれたからには、どんなところに置かれても、そこで環境の主人となり自分の花を咲かせよう。
渡辺和子
2012.09.02
「秋の30分ハイキング」のコース紹介 マルバノホロシの実
2012.09.02 Sunday
今日は、9月22日(土)の学校説明会終了後に予定されている「秋の30分ハイキング」
(詳しくはトップページの「公開行事」を参照してください)の下見をしてきました。
まずお茶畑を通って、牧草地へと向かいます。途中でギンヤンマの姿を見かけました。
不二聖心ではオニヤンマと並んで、比較的よく見られるヤンマ科のトンボです。
牧草地からは富士山が少しだけ見えました。
牧草地を通ってすすき野原へと向かいます。東京都では絶滅したと言われるクルマバッタ
がたくさん飛んでいました。写真から確認できるクルマバッタは赤丸の部分ですが、これは
ほんの一部です。
すすき野原の手前は丈の低い笹を中心とした植生です。この植生はススキと混在すること
なく安定した状態を保っています。
徐々に植生の中心がススキへと変わっていきます。
すすき野原が終ると、高校1年生が環境学習で作っている「共生の森」が見えてきます。
坂道を下って裏の駐車場へ向かいます。
坂道の途中に、福岡県で絶滅危惧Ⅰ類、鹿児島県で絶滅危惧Ⅱ類、鳥取県で準絶滅危惧種
に指定されているマルバノホロシの実がなっていました。9月22日には少し色づいているか
もしれません。
最後に裏の駐車場で大楠を眺め講堂へと戻ります。
9月22日には一人でも多くの方に不二聖心の自然を味わっていただけることを楽しみにしています。
今日のことば
この人だから毒がある。でも、よく分かる。ビートたけしさんは書いた。「ほんとに、ヤンマ
の姿を見つけると必死になって追いかけまわしてさ。目がもうヤンマばっか見てるから、ドブの
中落っこっちゃったり、クソだめに落っこっちゃったりなんかするんだよね」
「オニヤンマと川遊び」から引いた。さすがにあちこちに落ちなくなったが、いまもオニヤンマ
を見ると胸が騒ぐ。先日、琵琶湖畔で水面近くを滑るように行ったり来たりする雄姿だけでなく、
杭に止まって抱え込んだバッタを一心に貪る猛者にも出会った。もう「旅はこれにて足れり」と
いう気になるのが不思議だ。
ヤンマとは大形のトンボのこと、とは、昔は誰でも知っていた。トンボの古名「エンバ」が語源
ともいう。オニヤンマはなかでも日本最大で、緑の目と黒に黄の縞をあしらった体が美しい。
コラムニストの泉麻人さんが「オニヤンマは田舎のバスと同じように、なかなかやってこない」
と書いたのも、そうそうと読んだ。
カブトムシみたいな養殖話はないから数も減っているはずだ。それでも、終わりに近づいた夏の
思い出にオニヤンマの姿を刻んだ少年がいよう。いや、心ときめいたおじさんもきっとある。
子どもの頃を振り返っているようで、たけしさんは一文をこう始めている。「俺、ヤンマが好き
なんだ」。もちろん現在形である。
「春秋」(日本経済新聞・2012.08.26)
2012.09.01
ツユクサ
2012.09.01 Saturday
ツユクサの花をじっくり観察してみました。
ツユクサの花というのは、実にユニークな構造をしています。雄しべに目を向けてみてください。
雄しべは6本ありますが、葯がついているのは手前の2本だけで、あとの4本は黄色く変色して
いて花粉をつけていません。この黄色は何の意味を持っているのでしょうか。実は昆虫を引き寄
せる役目を果たしているのです。花びらの青には昆虫はあまり反応しません。そこで雄しべの黄色
が代わって昆虫を引き寄せる役目を果たしているのです。ツユクサを見ていると、多くの花の構造
が昆虫との関わりで生まれてきたことがよくわかります。
今日のことば
かへる日もなきいにしへを
こはつゆ草の花の色
はるかなるものみな青し
海の青はた空の青
三好達治
お知らせ
9月22日(土)の学校説明会終了後、希望者を対象に「秋の30分ハイキング」を不二聖心女子学院
の校内で実施することになりました。詳しくはトップページの「公開行事」をご覧ください。
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