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フィールド日記

2012年08月

2012.08.11

ピンク色のショウリョウバッタモドキとショウリョウバッタ

  2012.08.11 Saturday

  牧草地でピンク色のショウリョウバッタモドキ(1枚目の写真)とショウリョウバッタ
(2枚目の写真)に出会いました。バッタの色彩変異は実に多様ですが、目立つピンク色に
わざわざなる必要がどこにあるのか、不思議に思います。

 

            今日のことば
 

今日から逃れられないのに
心は昨日へ行きたがる
そわそわ明日へも行きたがる
今日は仮の宿なのだろうか

ここから逃れられないのに
心はここから出て行きたがる
どこか違う場所へ行きたがる
行けばそこもここになるのに

宇宙の大洋に漂う
小さな小さなプランクトン
自分の居場所も分からずに
心はうろうろおろおろ迷子です

                        谷川俊太郎

2012.08.10

オナガササキリ

  2012.08.10 Friday

 最近、牧草地の生態系の貴重さをますます強く感じるようになってきました。その一因は
そこに生息する直翅目の種類の多様さです。今日は、オナガササキリの幼虫を見つけました。
産卵管の長さから、オナガ(尾長)ササキリと名付けられています。ササキリは少し暗いと
ころを好みますが、オナガササキリは日当たりの良いところを好みます。近い種でも生活の
場を変えることで上手に棲み分けをしています。

 


今日のことば


だれにも気づかれずに消えていった生物はたくさんいるだろうと思う。それでも表面的に
は、人々の生活は何事も無かったように過ぎていく。日常の営みは人の生活を変え、便利に
なっていくだけのようにみえる。ただ、それは人間だけのものである。それが続けられるの
は、人以外の他の生物が人の生活によって新たに作り出された環境に、生きものの論理をあ
てはめて生きていくことができたからだ。だが、それも限界に近づいているような気がする。

                                 小林正明

2012.08.09

ガガイモの花とアリ  「夏休み子供自然体験教室」の記事が新聞に掲載

  2012.08.09 Thursday

 牧草地でガガイモの花が咲き始めました。写真には、アリの姿が写っていますが、送粉者
としての役割はほとんど果たしていないと言われています。ガガイモの主な送粉者は、不二
聖心の牧草地の場合、キンケハラナガツチバチです。つまり、花はアリに蜜を提供するだけ
で自分は利益を得ていないということです。自然界には時々、ギブ・アンド・テイクではなく、
一方がもう一方にひたすら与え続けるという関係があります。


 

 「夏休み子供自然体験教室」のことが岳麓新聞に掲載されました。


 
 
 
今日のことば

壁に残った らくがきの
おさない文字の あの子の名
呼んでひそかに 耳すます
ああ あの子が生きていたならば

          長崎で被爆した永井隆博士作詞の「あの子」より

 

                お知らせ

 いつも「不二聖心のフィールド日記」をご覧いただきありがとうございます。
この度、「不二聖心のフィールド日記」で紹介した内容を中心に不二聖心女子学院の校内
の自然を紹介した冊子「不二の自然4」(カラー写真30枚と解説)が完成しました。
購読を希望する方は、一冊につき切手400円分(送料込み)を同封し、下記の住所にお申
し込みください。(封筒にはお名前とご住所を必ずお書きください。)
なお、不二聖心のパンフレットを希望する方は、「パンフレットも希望」と書いた紙を同封
してください。「不二の自然4」を送る際に同封させていただきます。

 〒410-1126
 静岡県裾野市桃園198 不二聖心女子学院 「不二の自然」係

2012.08.08

ツノトンボ

  2012.08.08 Wednesday

 今朝は久しぶりに裏の雑木林の縁の道を歩いてみました。雑木林を歩いていて面白いと思
うのは、林の中よりも縁の方が生息する生物が多様だということです。今日は、宮城県と千
葉県で絶滅危惧Ⅰ類に指定されているツノトンボを見つけました。ツノトンボという名前で
すが、トンボとは全く違う種類です。トンボは不完全変態(蛹の時期がない)の昆虫であるの
に対し、ツノトンボは完全変態(蛹の時期がある)の昆虫です。

 

                                            今日のことば

 生き物であれば、壊れることがある。時とともに古くなっていく。行き着く先は死である。
私たちは死ぬことを予知して恐れる。別離を悲しむ動物である。人生というのは過酷なもの
である。
 けれども、「人生は苦なり」と受け入れてしまえば、人生には喜びが満ちていることが見え
てくる。風で一枚の葉がそよぎ、それを私が見ることができるということにさえ、どれだけの
奇跡が満ちていることであろうか。
 まして、私が人間としてこの世に存在していることを思うとき、それが苦しい人生であろう
となかろうと、その偶然の積みかさねの重さに圧倒されて自然の前に平伏さざるをえない。
 自然に対する畏敬の念、三六億年という生命の歴史の時間に対する畏れは私の心を無限の感謝
で満たすのである。

                                                                                            柳澤桂子
 

                                               お知らせ

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静岡県裾野市桃園198 不二聖心女子学院 「不二の自然」係

 
 

                                     『不二の自然4』より

                                         不二の自然 95

                                                                 (裏の駐車場で撮影)
   ツノトンボ
  科名 アミメカゲロウ目ツノトンボ科
  学  名 Hybris subjacens

 不二聖心の生態系を変えつつある外来種の一つにメリケンカルカヤという植物がありま
す。第2牧草地は一時期、この植物にほぼ覆いつくされてしまいました。そのメリケンカル
カヤの茎に付いていたツノトンボの卵が孵化しました。ツノトンボは宮城県で絶滅危惧Ⅰ
類、千葉県で絶滅危惧Ⅱ類に指定されている希少種です。今回はさらにもう一か所、別のメ
リケンカルカヤの茎でも孵化を確認しました。外来種が希少種の保全に貢献している珍しい
例です。          

                                                                       (平成23年9月30日)

2012.08.07

夏休み子供自然体験教室  クルマバッタ  ウッドバーニング

  2012.08.07 Tuesday

 今日は不二聖心女子学院で、第1回「夏休み子供自然体験教室」が開催されました。小学
生が目を輝かせて生き生きと自然と触れ合う姿に触れ、この企画をしてよかったと心から思
える一日となりました。
午前中は生き物探しゲームをしましたが、ほとんどの小学生が東京都では既に絶滅したと
言われるクルマバッタを採集することができました。午後はつかまえたバッタなどを電熱ペ
ンで木の板に書く活動もしました。写真のバッタは下書きなしで、短時間で描ききった力作です。
一人の小学生が「命のつながりとその大切さがわかりました。」という感想を最後に発表
してくれたことが今も心に残っています。

 

              今日のことば

  神は、人間がその幼時を知恵のなかで取り戻すように待ちのぞんでいる。

                               タゴール

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 静岡県裾野市桃園198 不二聖心女子学院 「不二の自然」係

 

            『不二の自然4』より

             不二の自然111

                                                                      (校舎の裏の道で撮影)

  アケビ
  属名 アケビ科アケビ属
  学名 Akebia quinata

 植物学者前川文夫博士の著書『植物の進化を探る』にアケビについての興味深い記述があ
ります。アケビは、アジアと南米の遠く離れた二つの地域に同じ系統の種が見られるという
のです。博士は御自分の目でそれを確認なったそうです。考えられる理由は一つでしょう。
もともとその二か所は、ほぼ同じ場所にあり、それが大陸の移動によって離れ離れになった
という理由です。アケビという小さな植物が地球の歴史の一コマを私たちに伝えてくれてい
ます。                   

                                                                              (平成24年4月28日)

2012.08.06

雑木林のカブトムシ  『不二の自然4』の刊行について

  2012.08.06 Monday

 いよいよ明日、不二聖心で第1回「夏休み子供自然体験教室」が開催されます。今日の午
後は、遠方から手伝いに来てくれた生徒スタッフ3名もたいへん精力的に働いてくれて準備
はすべて整いました。
雑木林のカブトムシも小学生たちを待っています。

 

              今日のことば

希望の明日を拓くのは他人まかせではいけない。一人一人が、自分の命、愛する人の命、か
けがえのない遺伝子の細い絆を守るために、木を植え本物の森をつくる。これは、いつの時
代でもどこでも、人類が生きのびるための正攻法であると確信している。まず植える。植え
ながら議論しよう。机上の議論をいくら繰り返しても、それだけでは不十分である。実際に
木を植え、いのちを育てていこう。          

                                 宮脇昭

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『不二の自然4』より


不二の自然 110


 
                        
                        (東名高速道路の近くで撮影) 

ニホンザル
属名  オナガザル科マカク属
学名 Macaca fuscata

 久しぶりにサルの親子と出会いました。東名高速道沿いの斜面でおいしそうに若葉を食む
姿を目撃しました。実際には相当苦い葉もあると思われますが、ニホンザルには鈍感力があ
って、舌にある苦味成分を感じるたんぱく質が人間と比べて10倍も反応が鈍く、だからこ
そ苦い若葉を味わうことができるのです。このことは京都大学霊長類研究所の研究によって
最近、明らかになりました。「おいしそうな表情」には、ちゃんと理由があったということ
です。                  

                           (平成24年4月21日)

2012.08.05

オトギリソウとその伝説

 

2012.08.05 Sunday

牧草地と雑木林にオトギリソウが咲いています。オトギリソウは古くから薬草として知ら
れ、今から千年以上前に活躍した晴頼という鷹匠は鷹の傷薬として使用していました。この
薬は秘薬され、オトギリソウから作る薬であることを晴頼は秘密にしていました。ところ
が、その秘密を晴頼の弟が洩らしてしまいます。怒った晴頼は刀で弟を切ります。花弁につ
いている黒い染みは、その時に飛び散った弟の血だと言い伝えられています。
オトギリソウに薬効があることは事実で、2004年には、松岡絵理香、町田浩一、菊地正雄
の三氏によって「オトギリソウの化学成分について」という論文が発表されています。

 

 
今日のことば

日本の自然を保護するとか、日本の生物を守るとかは、今日大きな社会問題となっている。
日本の生物相は、第三紀型生物と第四紀型生物の混合である。人間が活動を広げるにつれ、
放っておけば必ず衰退してゆく第三紀型生物の占める割合は、ヨーロッパや北アメリカにく
らべて大きいのではないか。島国という条件や、氷河時代の気候変動がおだやかであったと
いう歴史的条件によるものだろう。人間の繁栄が第四紀を特徴づけるものであり、それ故に
第三紀型生物の温存を否定するのが当然であるならば、それは時代の必然の方向である。そ
んなひ弱いものをいちいち守ってやる必要がはたしてあるのか、という意見を吐く人もある
だろう。しかし、本当に、われわれ庶民のひとりひとりの生活にとって、物質生活と精神生
活の双方で、第三紀型生物は不要な、余計なものだろうか。弱いものを切り捨てるという論
理は間違っており、守り育ててゆく必要がわれわれにはあるのだ、ということになれば、そ
のための自然科学での方策は、第三紀型生物の生活の実態を知ることで建てていかなければ、
成功はおぼつかないだろう。


日浦勇

2012.08.04

アブラゼミの羽化  アブラゼミの学名について

  2012.08.04 Saturday


今朝、7時50分に、第1牧草地から第2牧草地へと向かう道を通ったところ、アブラゼ
ミが羽化しているのに出会いました。普段見かける姿とは全く違いますが、すでに翅脈がく
っきりと浮き出ているのがわかります。
「アブラゼミ」は標準和名で、鳴き声が油の煮えたぎる音を想像させるところから付けら
れた名前です。学名は、Graptopsaltria nigrofuscata  (Motschulsky,1866)です。この学
名をめぐって1971年に書かれた「アブラゼミとヒグラシの学名の先取権」(成瀬幹也)とい
う、たいへん興味深い論文があります。この論文では先ず、偶然にも1866年に二人のヨー
ロッパ人によって、アブラゼミに学名が付けられた話が紹介されます。一人はスウェーデン
人のStal、もう一人はロシア人のMotschulskyです。現在はMotschulskyのつけた学名が採
用されているわけですが、実はこの学名が載った出版物の日付が不明確なのです。一方、
Stalの発表した出版物は7月に発行されたことが明らかになっています。成瀬氏は以上の事
実を根拠として、Stalのつけた学名を採用すべきだと主張しています。
日本の一部の地域でアブラゼミが減少していると言われていますが、その原因はよくわか
っていません。
 

 

 

               今日のことば

 178の国や地域が参加したリオの地球環境サミットから今年で20年。地球環境は、今も予
断を許さない。1990年から2010年までの20年で二酸化炭素濃度は10%も上昇した。同じ
20年間で森林は約8860万ヘクタールも消失した。これは日本の面積の2.3倍に相当する。
さらに、今確認できているだけで世界で1万9570種もの生物が絶滅の危機にひんしている。
環境問題の特効薬は、これからも簡単には見つからないだろう。                   

                                山口佳子

2012.08.03

第2牧草地  ジェミニ・ウイルスに感染したヒヨドリバナ

  2012.08.03 Friday

 今日は久しぶりに第2牧草地まで行ってみました。一時は外来種のメリケンカルカヤで覆
われてしまった草地も草刈りのおかげで元の状態に近く戻っていました。

牧草地に行く途中で、ヒヨドリバナの写真を撮りました。ただのヒヨドリバナではなく、
ジェミニ・ウイルスに感染しているヒヨドリバナです。万葉集には、葉の変色を黄葉と勘違
いした歌が載っています。その歌は、世界最古の、植物のウイルス感染例としてイギリスの
科学雑誌「Nature」に紹介されました。


 
 



  今日のことば

 西暦752年の奈良時代に、孝謙天皇によって詠まれた歌――
「この里は継ぎて霜や置く夏の野にわが見し草はもみちたりけり」
「もみちたりけり」とは「黄化している」という意味。この歌に登場するのが、ウイルス
で変色したヒヨドリバナではないか、とされています。ずいぶん歴史のあるウイルスなんで
すね。
この病気に感染すると、葉の光合成の効率が落ち、成長できずに他の植物に埋もれて枯れ
てしまうことが多いようです。
宿主を弱らせながらも、千年以上も前から生き残っているウイルスって不思議ですね。

                                野坂佑一

2012.08.02

ツマグロヒョウモン  成虫と蛹

 2012.08.02 Thursday

 今日も暑い一日でした。温暖化の影響がなければいいがと懸念してしまうほどの連日の
暑さです。

 「夏休み子供自然体験教室」の活動場所となる牧草地では、連日のようにツマグロヒョウ
モンの姿を目にします。今日は成虫のほかに蛹も見つけました。ツマグロヒョウモンは代表
的な温暖化指標の昆虫で、かつては静岡県には生息していなかったと言われるチョウです。
「夏休み子供自然体験教室」では温暖化の問題についても考えることができれば思ってい
ます。




  

 

                                             今日のことば

   自然は、人間を含めて、すべての生き物を育んできた故郷である。土・水・空気、そして
緑を抜きにして、私たちの暮らしを語ることはできない。
しかし私たち人間は、いつのころからか自然を蝕む「鬼っ子」になってしまった。
そしてそのことは、毎日のように世間を騒がせている陰惨な事件と、決して無関係ではない。
故郷を失った人々の心は、知らず知らずのうちに病み始めている。                            

                                                                                      澤口たまみ