フィールド日記
2011年07月
2011.07.31
コガネムシの構造色・トノサマバッタの幼虫の擬態・ツマグロヒョウモン
平成23年7月31日 日曜日
今日は夏休み10日目です。
裾野の天気は曇りで、少し青空がのぞく程度でした。その青色を眺めながら、
以前に卒業研究で空の色はなぜ青く見えるのかを研究した中学3年生がいたことを思い出しました。
今日の読売新聞に昆虫の構造色の記事が載っていました。カナブンやチョウの羽などに見られ る、
色素ではなく構造で発色する仕組みが、新型の液晶パネルなどの開発に利用されているという話でした。
非常に興味深い内容の記事でしたが、添えられてい たコガネムシの写真の下に
「構造色による発色が美しいカナブン」と書かれていたのは少々気になりました。
今日も不二聖心ではたくさんの構造色が見られました。
色で驚いたのはトノサマバッタの幼虫です。ササの枯れ葉に見事に擬態していました。
7月14日にツマグロヒョウモンのオスの写真を載せましたが、今日はメスの写真を撮りまし た。
今日見かけた個体は、通常のツマグロヒョウモンのメスとは色合いがずいぶん異なります。
『不二の自然2』の34に載せた写真と比較するとその違いがよ くわかります。
何が原因でこのような色になったのでしょうか。色の不思議はつきません。
(上の蝶はヒメアカタテハでした。お詫びして訂正させていただきます。)
2011.07.30
ウスバキトンボ・ツノトンボ・クロコノマチョウ・ヘクソカズラ・ハナノミ
平成23年7月30日 土曜日
今日は夏休み9日目です。
第二牧草地で、今年初めてウスバキトンボの群れ飛ぶ姿を目にしました。下の写真の中央の点のようなものが
その中の1匹です。ウスバキトンボは5月頃九州南部に発生し世代交代を繰り返しながら北上を続ける
トンボとして知られています。
雑木林で久しぶりにツノトンボと出会いました。名前にトンボと付いていますが、トンボ目の昆虫ではなく、
アミメカゲロウ目に属しています。2つの県で絶滅危惧種に指定されている貴重な生物です。
雑木林のクヌギの樹液にはクロコノマチョウが来ていました。もともとは南の地方に生息するチョウですが、
今から10年ほど前に関西で目撃されはじめ、今では不二聖心でも普通に見られるチョウとなっています。
地球温暖化の影響で生息域を北に広げていると考える人もいます。
ヘクソカズラの花にはハナノミが来ていました。気の毒な名前を持つ花ですが、
虫たちにはなかなか人気があります。
2011.07.29
アブラギリ・アオバハゴロモ
平成23年7月29日 金曜日
今日は夏休み8日目です。裾野は曇りで、クーラーなしでも何とかしのげるほどの暑さでした。
5月18日のフィールド日記で紹介したアブラギリの花のその後の様子を確かめるために温情舎の跡地に
行ってみました。花は立派に実になっていました。
驚いたのは、アブラギリに多様な生き物が集まっていたことです。
コゲチャオニグモやアトボシ ハムシやヒメバチやアリなどの様子を写真に撮ることができましたが、
ひときわ目をひいたのはたくさんのアオバハゴロモでした。アオバハゴロモは三角形の美 しい姿をした昆虫で、ラテン語の学名はGeisha distinctissimaと言います。命名者はこの姿から芸者を連想したようです。
2011.07.28
ヒメオビオオキノコムシ・ササキリ
平成23年7月28日 木曜日
今日は夏休み7日目です。裾野は朝から雨でした。
しかし雨の中でも雑木林の中には活発に活動する生き物たちがいました。
下の写真はヒメオビオオキノコムシです。キノコを食べる甲虫として知られています。不二聖心の雑木林では
頻繁に姿を目にすることができます。築山の枯れ木に幼虫が大発生していた時には驚きました。
次の写真はササキリの中齢幼虫です。ササキリは名前の通り、ササの繁茂する場所によく見られます。
まだ可愛らしい姿ですが、バッタとしての体の構造はしっかりと整っています。実に長い触覚を持っていますが、いったい体の何倍ぐらいあるのでしょう。
2011.07.27
ハナイカダの実
平成23年7月27日 水曜日
今日は夏休み6日目です。
裾野では夕方に少し雨が降りました。
下の写真は雨に濡れるハナイカダの実です。(ハナイカダの花については、5月5日のフィールド日記で
紹介しました。)日に日に実の色が濃くなってきました。この姿から、ハナイガタには「嫁の涙」という
別名が付けられました。
自然教室から帰ってきてみたら、何枚かの葉から実が消えていました。理由はわかりません。
2011.07.26
中2自然教室・カジカガエル
平成23年7月26日 火曜日
今日は夏休み5日目です。中学2年生の自然教室は2日目を迎えました。
午前中は、中津川で生き物調査コンテストを実施しました。下の写真は絶滅危惧種のカジカガエルをつかまえて
喜ぶ生徒たちの笑顔です。コンテストを実施している間中、カジカガエルの鳴き声がよく聞こえていました。
カジカガエルは、生徒が逃がしたあとも名残惜しそうに、いつまでも石の上にたたずんでいました。
2011.07.25
トリノフンダマシ・中2自然教室
平成23年7月25日 月曜日
今日は夏休み4日目です。
朝は、生き物たちが動き始める時と私たちは思い込んでいますが、中には朝を休息の始まりの時ととらえる
生き物たちがいます。いわゆる夜行性の生物です。写真のクモは夜行性のトリノフンダマシというクモです。
夜間に活動し、昼間は鳥の糞に化けてじっとしています。
今日から中学2年生の自然教室が始まりました。
下の写真は「生命の星地球博物館」で35億年前の最古の生命化石に見入る生徒たちの姿です。
2011.07.24
アブラゼミの羽化の失敗
平成23年7月24日 日曜日
今日は夏休み3日目です。高校1年生のキャンプがスタートしました。
最近、梅雨が過ぎても蝉が鳴かないという声があちこちで聞かれています。
職員室でも今年の蝉の鳴き始めの遅さが話題になりました。
昨日の朝日新聞の夕刊には「セミの大合唱 遅れ気味」という記事が載りました。一部引用してみます。
今年はセミの羽化、鳴き始めが遅れているのか。北海道、埼玉、大阪、福岡、鹿児島、沖縄の6都道府県の
昆虫学者ら6人に各地の状況を聞いたところ、全地域で「遅め」との回答が寄せられた。沖縄では、
チョウの発育も遅れ気味という。
「春先の温度が低かったことが発育などに影響している可能性が高い。全国的な傾向のようで、
放射能や地震の影響とは考えられない」と、九州大学の紙谷聡 志准教授(昆虫学)は話す。
遅れている理由について、研究者の間では、春先の低温で幼虫の最後の成長に遅れが出た影響が大きいとの
見方でほぼ一致してい る。
気候の変化が生き物に与える影響について考えさせる記事でした。
春先の気候の変化と恐らく関係はないと思いますが、昨日珍しい光景を目にしました。
アブラゼミの羽化の失敗です。あの生命力にあふれた鳴き声を聞かせるアブラゼミが殻から抜け出せずに
アリの餌食となっていました。
2011.07.24
ダイミョウセセリとゴシュケビッチ
平成23年7月23日 土曜日
今日は夏休み2日目です。裾野市は快晴の一日でした。朝は涼しいくらいでしたが、
また明日からうだるような暑さが戻ってくるようです。
中学校校舎から本館へと向かう廊下にダイミョウセセリが迷い込んでいました。
ダイミョウセセリはラテン語の学名にも「Daimio」と入っています。
この学名は幕末に日本にやってきたロシア人ゴシュケビッチがつけたものなのです。
大名が着る黒い着物が当時のロシア人にとってよほど印象深かったのでしょう。
このゴシュケビッチという人については、静岡昆虫同好会の枝恵太郎氏がお書きになった
非常に面白くわかりやすい文章があります。以下に引用しておきましょう。
ゴシュケビッチ夫妻 ―― 伊豆下田の昆虫 ――
一八五四年、日米和親条約により開港されたばかりの下田港にロシア船ディアナ号が来航し、停泊中に津波に遭い、大破した船を修理のために戸田港へ回航する途中で沈没してしまった話はあまりにも有名である。
これに乗船していた中国語通訳のロシア人ゴシュケビッチは翌年の春まで、下田に滞在を余儀なくされた。
この時に下田近辺で採集したたくさんの昆虫標本は セントペテルブルグの王立科学アカデミー博物館に寄贈され、昆虫学者モチュルスキーやメネトリーによって研究、記載された。
静岡県の昆虫研究の幕開けは、約百五十年前の下田港の開港とともに来日外国人によって始まったといえる。
その後、伊豆天城山などの昆虫類が日本人学者の手で記載されるが、
昆虫相が詳しく解明されるのは静岡昆虫同好会の設立(一九五三年)以降となる。
ゴシュケビッチによって下田で採集され、新種として記載されたものに、シロチョウ科のスジグロシロチョウ、カミキリムシ科のノコギリカミキリやヒメスギカミキリなどがある。
また、ジャノメチョウ科のサトキマダラヒカゲ(里黄斑日陰、学名Neope goschkevitschii)のように
種名に彼の名が付けられたり、セセリチョウ科のダイミョウセセリ(学名Daimio tethys)のように属名に
「大名」と付けられたりしている。河原や海岸の砂地に生息するエリザハンミョウ(学名Cylindera elisae)は
ゴシュケビッチ夫人エリザの名が付けられている。
このように生物の学名にはよく人の名が付いたものがある。その標本を採集した人や関連する研究者に
敬意を表して献名されたものである。
モチュルスキーは異国から送られてくる多数の珍しい昆虫に驚喜し、
それらを採集したエリザ夫人の功績を讃えて命名したのであろう。
その後、一八五七年にロシア領事として再来日したゴシュケビッチ夫妻は盛んに昆虫を採集したと言われている。(枝恵太郎・静岡昆虫同好会)
1854年に津波が下田を襲うことがなかったら、おそらくこの蝶には違う名前がつけられていたことでしょう。
ちなみにこの文章に出てくるノコギリカミキリは、7月15日の「不二聖心のフィールド日記」で紹介されています。
2011.07.22
ベニシジミ(夏型)・ウスバカゲロウ
平成23年7月22日 金曜日
牧草地で夏型のベニシジミの写真を撮りました。
6月12日の「不二聖心のフィールド日記」に掲載した春型の個体の写真と比べると違いがよくわかります。
ここのところウスバカゲロウをよく見かけます。幼虫はアリジゴクです。
子どもと親の姿がここまで違う生き物も珍しいでしょう。
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