校長室から
2023.04.14
目に見えない行い
本学院の金曜日の下校は一大イベントで、ほぼ一斉に帰宅する通学生・寄宿生を迎える多くのバスや、お迎えの車がロッジ前に並びます。教職員も総出で、生徒たちを見送ります。本年度初めての金曜日であった先週7日は、雨風が強い日で、帰宅する生徒たちも大変だったことでしょう。特に、新入生のことを心配して見送りました。
今週の月曜日、ある学校の校長先生から御礼のお電話をいただきました。7日の夕方、三島駅で迷っていたその学校の一人の生徒さんの様子をみた本学院の生徒が、声をかけ、雨風の中、その学校まで送り届けてくれた、ということでした。校長先生が御礼を言おうと玄関に行ったところ、生徒は名前も告げずに帰宅した後だった、ということでした。
あの夕方に、そのようなことがあったとは、と思いつつ、私自身、名前も知らないその学校の生徒さん、そして本校の生徒を思い、感謝の祈りを捧げました。
偽善者たちが人から褒められようと会堂や通りでするように、自分の前でラッパを吹き鳴らしては
ならない。・・・施しをするときは、右の手のしていることを左の手に知らせてはならない。・・・
そうすれば、隠れたことを見ておられる父が、あなたに報いてくださる。
(マタイによる福音書6章)
2023.04.06
2023年度 不二聖心女子学院 学校目標
実行力を養う ~Set Our Hearts on Fire~
聖心女子学院は、カトリックの精神のもと、生徒たちが「社会に貢献する賢明な女性」として成長していくことを目指します。そのためには、生徒自身が、また教職員、保護者の方々が、教育方針「魂を育てる」「知性を磨く」「実行力を養う」の各領域における成長を意識し、統合していくよう努めることが必要です。不二聖心女子学院では、毎年、一つの教育方針に焦点をあて、3年間の中で3つの教育方針をスパイラルに深めていきます。本年度は「実行力を養う」に焦点をあてる年で、学院目標は「Set Our Hearts on Fire」といたします。
1) 創立者ソフィー・バラの生涯を貫く炎
皆さんは、「炎」や「火」に対して、どのようなイメージをもちますか?「愛」「情熱」「革命」「苦難」――これらは創立者の生涯と結びついて連想されるものです。
1779年12月12日、中世の面影の残る街ジュワニー(Joigny/フランス)は、大火に包まれました。街路から伝わってくる騒然とした雰囲気により、3人目の子供をみごもっていたバラ夫人は恐怖のあまり産気づき、夜、11時頃、出産予定日より2か月前にソフィーを生みました。火事が収まったのはバラ家のわずか3軒手前でした。
これはジュワニーの歴史に残る大火として、その恐怖の中で生を受けたソフィーのエピソードと共に語り継がれていきました。人々はソフィーを「奇跡の子」と呼び、たびたび「あなたはどのように生まれたのですか?」と尋ねたそうです。幼い時から「火によって」という答えが求められているのを理解していた、とソフィー自身が語っています。やがて物語は創り直され、ソフィーが炎から救われたのは、誕生の瞬間から果たすべき使命が彼女にあったからだともいわれました。このような誕生のいきさつは、ソフィーの生涯に強い影響を与えたと思います。
彼女の幼少時代は、革命前および革命そのものと密接にかかわっていました。
2)「私の中には2つの炎が燃えている」
16歳になると、ソフィーは兄ルイ(神父)に連れられてパリに上り、学問と祈りの生活を続けました。18歳の時には、カルメル会という修道会に入り、祈りと観想のうちに神に生涯を捧げることを考えていたようです。しかし、新しい修道会の構想を描いていたジョゼフ・バラン神父様から、ソフィーが授けられた高い学問は修道院の奥深くに埋没させるものではなく、革命後の危機的な状況あって、若い女性の教育を通してイエスの聖心(みこころ)に奉献する新修道会の創立に参与するように、と説得されます。
後に、ソフィーは、祈りのうちに抱いたビジョンについて述べています。「もし、私たちが24人集まって交代で一昼夜<礼拝する>としたらそれはすばらしいことかもしれない。けれども<礼拝の精神に生きる人を育てる>ことができたなら・・・」これが、聖心女子学院の建学の精神へとつながっていきました。
ソフィーは1800年11月21日に創立された修道会(後の聖心会)の院長となり、翌年1801年にアミアン(Amiens/フランス)に初の聖心学院が開校、1865年5月25日に天に召されるまで、総長として、ヨーロッパ諸国、アメリカ大陸へと炎のように広がっていった聖心会の修道院と学院を導きました。「私の中には二つの炎が燃えています。イエスの聖心(みこころ)に対する愛の炎と生徒に対する愛の炎です」(Madeleine Sophie Barat)
皆さんは、このような創立者の思いによって集められた方々です。偶像や虚構ではなく、真に価値あるものを理解し、それを望むような生き方へと呼ばれています。
3) Set Our Hearts on Fire!
ソフィーは、この二つの炎を燃え立たせながら、フランス革命、ナポレオン帝国、王政復古、七月革命等、歴史上の大事件にいろどられた変化の時代を、未来への揺るぎないビジョンをもって生き抜きました。
私たちの住む地球もまた、皆さんが取り組んでいるSDGsで取り上げられているような課題が山積しています。国連は1月24日の「教育の国際デー」(International Day of Education)で、2023年のテーマを「To invest in people, prioritize education(人に投資を、教育を最優先に)」を掲げました。この日の事務総長のスピーチでは、アフガニスタンにおいて女児が中等・高等教育の機会を奪われている現実に言及がなされています。昨年の今頃、世界中の聖心ファミリーが一つになってウクライナ支援の活動を始めましたが、いまだ戦争が続く中で500万人以上の子どもの教育が妨げられています(2023年1月24日:UNICEF(国連児童基金))。
豊かな学びの機会を与えられている皆さん、ソフィーのスピリットを学び、自らの使命について考えてください。不二聖心の6年間は、Foundation ⇒ Originality ⇒ Vocationという3つのステージから成っています。それぞれの段階での学びについて、また6年間の中で学びをどのようにデザインし、統合していくかを主体的に考えていくことができますように。お一人おひとりに、他の人では代わることができない神様から託された使命が必ずあります。それを探し、確かめ、具体的にはどのような形をとるのかを見つけるのはあなたにしかできないことです。在学中にすべてが見えるわけではないでしょう。けれども、問い、探し続けることには意味があります。
創立者のうちに燃え続けた愛の炎が、この学院の中で常に燃え続けていますように。今の地球が抱える課題にどう向き合っていくのか、学院全体としても考えてまいりましょう。「学院」とは、建物や敷地のことをいうのではなく、創立者が「聖心(みこころ)の子供」と呼んだ生徒たち、そして教職員や保護者の方々も含めたコミュニティ全体のことをいいます。お互いの心に、学びに、行動に、火を灯し合い、炎を燃やし合うようなかかわりを心がけましょう。イースター(復活祭:今年は4月9日)の力強い灯が、私たちを内から強め、照らしますように。
秀峰富士を仰ぐ、静謐で不二なる(二つとない)学び舎から、世界に向けて愛の灯を掲げましょう!
「子どもたちを通してこの世界に、愛の力が花開くように」(Madeleine Sophie Barat)
2023年4月6日 始業式 校長講話より シスター大原 眞実
2023.04.03
新年度を控えて
フランス「ルーツへの旅」再開に向けては、さまざまな準備が必要です。まさに手作りの旅ですので、現地のシスター方や卒業生等、多くの方々の善意あるサポートによって具体化されていきます。コロナ前とは状況が変わっている面がありますが、すべての準備が整い再開にこぎつけられますようにと願っています。
2023.03.20
花開く季節に
学年末も近づきました。一年の終わりに行われた学校保健員会で、校医の先生方から、この3年間、コロナ陽性者が少なかったと誉めていただきました。「一人ひとりがコロナを広げるのに加担するのではなく、収束に向かわせる力となっていきましょう」という意識のもと、生徒たちも教職員も努力しましたし、保護者の皆様の多大なるご協力があってのことと思います。
今日、卒業を控えた中学3年生は、中学校生活の振り返りもこめて祈りの会を行っています。中1・中2はAOで入学して来られる方々と共に始める来年度に向けて準備しています。高校生は、聖心女子大学の方々による出張講座に参加しています。入学式・始業のためにと母の会の皆様が植えてくださったチューリップが開き始めたのを見つめながら、一人ひとりの開花に向かう鼓動を感じています。
2023.03.10
卒業生の来校に
コロナ前は、卒業生が頻繁に訪れている状態が常の学院でした。この3年は寂しい日々でしたが、徐々に以前のように戻っていくことでしょう。今年、大学の卒業式を迎える全ての卒業生の方々が、真理を求めて歩み続け、平和な未来への道を拓いていらっしゃるよう祈ります。
2023.03.03
桃の節句に
幾つかある桃の花の花言葉の中に、「忍耐」とあります。前校長が「風雪に耐えてこそ、花は美しく咲く」と何かに書かれていたのを思い出しました。温かな笑顔を思い出します。今日も天国から見守っていてくださることでしょう。
2023.02.24
聖心インターナショナルスクールより
初めて会った生徒たちも、同じスピリットに生かされていることを即座に実感しているようです。2月18日の卒業式に、ローマ総本部から総長顧問のお二人をお迎えできたことも含め、改めてワールドワイドな聖心ネットワークの力を実感しています。
明日は、新入生ガイダンス、新しい聖心ファミリーの誕生を心から歓迎いたします。
2023.02.16
Taiwan Cultural Camp
日本でもコロナの扱いが変化していく中、台北の聖心主催のCultural Campや、ソウル聖心と共催で行われてきた韓国体験学習の対面によるプログラム再開の動きが進んでいます。
かつて上海フランス租界にあった聖心が政治的な理由から続けられなくなった後(1950年閉校)、上海にいらしたシスターたちは日本と台湾に渡りました。その流れの中で誕生したのが台北の聖心と不二聖心です。中国式の壮麗な本館をもつ台北の聖心の校舎建設にあたっては、全世界の聖心関係者の寄付が寄せられました。Taiwan Cultural Campには、アジアだけでなく世界中の聖心から生徒たちが集まり、台湾の歴史や文化を学びつつ交流します。
2023.02.10
春の鼓動
来週は卒業式、ここで高校3年生に出会える日々も少なくなってきました。彼女たちの思い、育んできた伝統の灯、学院への愛は、高校2年生をはじめとする下級生に受け継がれていきます。高校2年生は、来年度の「マナーブック」を考案したり、エンジェルとして新入生をお迎えすることを思いながら、その準備を進めてくれています。
2023.02.03
LIFE AT THE SACRED HEART
今、中学1年生が書いた文章を読んでいます。みずみずしい感性、自らを正直に見つめ、日々の経験を振り返る力に驚いています。内容をここに書くことは控えますが、もしかしたら保護者の方にも見せないような一面を表現してくれているかもしれません。一人ひとりが書いている内容は異なるのですが、自ら成長しようとする意志には共通するものがあり、思わず『LIFE AT THE SACRED HEART』を開きました。
あなたが聖心で受けている教育は、ひとつの生き方そのものなのです。それは、あなたに変化していくことを求めており、英知と高潔さに満ち、時代と共に成長していくようにと呼びかけています。
『LIFE AT THE SACRED HEART』1985年版
聖心会は1800年にパリで創立され、1801年にアミアンで学校が始まりました。学校では最初から現代でいう校則のようなものが存在したと考えられています。初めは口承や模範によってから学ばれ、1833年には聖心会の学習指導要領と同じ時期に文章化され、幾多の変遷を経て、『LIFE AT THE SACRED HEART』(聖心女子学院の生活)というものにまとまっていきました。現代ではアーカイブの中に保管されている書物ですが、私自身はいつも身近に置いています。折にふれて開くと、色褪せることのない考え方に出会い、時を超えて伝わってくるスピリットが現代の生徒たちの中にも息づいているのを実感し、感動させられます。中学1年生の方々が、これからも素直に自分らしく成長していらっしゃいますように。