校長室から
2020.10.26
新たな体育大会の形
毎年5月、学院のグランドに、多くの保護者の方々をお迎えし、縦割りの4色に別れて催される体育大会。全力で取り組むこと、協力すること、責任感、そして勝敗を越えた喜びを体験することを通して、数々の笑顔と涙のドラマが生まれる一日です。
5月に分散登校が始まって、寄宿舎の見回りをしていた時、高校3年生のキュービクル(寝室)に、本来なら着るはずであったであろう団長の衣装と思われるものが掛けてあるのを見た時は、言葉にできないような気持になりました。中学生の頃から、団長を目指してきた方もあるでしょう。高校3年生全員にとって、最後の体育大会です。悔しい気持ちはあったでしょうが、泣き言を言わずに、気持ちを切り替えた高校3年生はとても立派でした。それに従ってきた下級生も同様です。
今年は、登校が再開されてから、一定の期間をとって、色別に競う形となりました。体育委員の方々は、放課後、大量のデータ処理を継続してきました。明日は、いよいよ結果発表です。優勝杯をお渡しできるのは一つの組ですが、神様はすべての組の隠れた努力や思いに報いてくださることでしょう。
2020.10.19
富士山 世界文化遺産
2013年6月26日、「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」が、ユネスコ世界文化遺産に登録されました。これに伴い富士宮市に建設された富士山世界文化遺産センターと富士山本宮浅間大社を、修道院のシスター達と共に訪ねました。古来、日本人を惹きつけてやまない秀峰が、霊性や文学、芸術・芸能のみならず、自然環境、地質、災害等、様々な切り口からから学びの対象になる存在であることを再認識しました。
本学院では、3年に一度、姉妹校の生徒もお招きして富士登山が行われます。他県からの生徒達が、富士山をはじめ静岡の良さをより良く体験できるようにしていきたいと、改めて思いました。
富士山の可視範囲は、驚くことに20都府県にも及びます。地域は異なりますが、今年、学院には、20都道府県からの生徒達が在籍しています。学院の日常の中で、ごく自然に、それぞれが生まれ育った地域の魅力を分かち合っていることを生徒達も意識していますが、そこから生まれる豊かさの中で育ったことに、本当に気づくのは、卒業後のことかもしれません。
2020.10.12
Silent Walk Ⅱ
青空のもと、中学1年生と一緒に、2回目のキャンパス内サイレント・ウォ-クに出掛けました。今回の行程には、マリア修道院も入っていました。初めて中に入った生徒達は、修道院の雰囲気が新鮮だったようです。静かなオラトリー(小聖堂)で、前期の生活を振り返り、各自が沈黙で祈りました。
はっとさせられたのは、生徒達の祈りの雰囲気です。「沈黙」の大切さを理解し、味わうようになってきていることを感じました。コロナ禍の中、入学式以降、想定しない状況を過ごしてきた新入生ですが、その状況に負けることなく、夢を育み、他者を思いやり、世界に対する大きな好奇心をもって過ごしています。
下を向いていたら、虹を見つけることは出来ない ゲーテ
2020.10.05
フランシスコ教皇 国連総会演説
9月25日、フランシスコ教皇が、国連総会でビデオ演説を行われました。
https://www.youtube.com/watch?v=_exBwA3zsAo
教皇様は、コロナウイルスのパンデミックにあって、これまでと同じ方法で危機を脱することはできないこと、また、今、世界は、地球規模で責任を共有し連帯していく道を選ぶか、個人主義・自国中心主義の道を歩むのかの岐路に立っていること等を語られています。
学院も小さなグローバル社会です。これまで経験したことのない出来事の中で学院生活を送る生徒達と共に、世界が共有する課題に目を向けつつ、希望のうちに連帯を生きていくことができますように。
2020.09.28
時
9月6日にアルフォンス・デーケン先生(イエズス会司祭)が帰天されたとのニュースが、様々なメディアでも流れました。日本における死生学研究の第一人者として、長年、上智大学で教鞭をとられ、また大学を超えて多くの活動に携われた方です。信仰に根差したあたたかくユーモア溢れる語り口の講演会や多数の著書により、多くの人々が影響を受けました。
先生は、祖国ドイツでの少年時代、祖父にあたる方が、兵士によって射殺される光景を目の当たりにされました。にもかかわらず、後に家宅捜索のために自宅に入ってきた兵士に、自ら手を差し出して挨拶されたそうです。それは親から受け継いだカトリックの信仰を、自分で選び直した大切なカイロスの時であったと、語られています。
ギリシア語には時を表す言葉が2つあります。χρόνος (クロノス)が客観的に流れる時間をいうのに対し、καιρός (カイロス)は、決定的な瞬間を指す言葉です。ご帰天の報に接し、感謝の祈りのうちに、生かされている「時の重み」を感じています。
2020.09.23
気候変動とスポーツの祭典
聖心グローバル・プラザ(渋谷区広尾)では、2年間に渡って気候変動をテーマとした展示がなされています。現在は、「気候変動とスポーツの祭典」という観点から、バーチャルで展示を見るこができます。
https://www.u-sacred-heart.ac.jp/event/20200904/5547/
この中に、「世界で最も早く朝日が昇る国」と言われるキリバス共和国のオリンピック選手(重量挙げ)からの強いメッセージも掲載されています。キリバスは、クリスチャンが多く、クリスマス島も含めた諸島群から成る美しい国です。海抜はわずか2メートル。地球温暖化の影響による海水位の上昇から、国土の水没危機が深刻な課題となっています。
気候が穏やかで住みやすいと言われる静岡も、今年は例年にないような大雨に見舞われることが多く、キャンパスや校舎にも様々な影響が出ています。日常の変化を体感しながら、見えない世界のより重い現実に目を向け、サステナブルな未来に向けての教育を推進していきたいと思います。
2020.09.15
祈りの丘
生徒たちが好きな場所の一つに、体育館とマリア修道院(黙想)の間の十字路付近があります。360度、見晴らしがよく、富士が正面に見える場所でもあります。
今日の日中は、くっきりと紺色がかった富士が美しく、夕方にまた訪ねました。雲にかかって見えませんでしたが、息をのむような美しい夕焼けと、楽しそうに語り合う中学1年生達に出会うことができました。
富士の冴え祈りの心諭しけり
旧職員の西山民雄先生の作です。無言のうちに、心を神に向けさせ、落ち着きを与え、清めてくれる富士に見守られながら、生徒達と過ごす日々に感謝しています。
2020.09.08
「責任」の感覚
アンジェラスの鐘の音を聴きながら祈った後、放送で、委員任命式が行われました。学院生活においては、全員が、何らかの委員や係としての役割を担います。誰も傍観者はいません。頼もしい最上級生の方々が、任命式をリードし、下級生にメッセージを伝えてくれました。
将来の生活への推移の段階にある高等学校では、上級生がより広い独創性と責任をもって、
各自の学習を編成するようになっています。それゆえ、上級生は、義務の念をもって自由を行
使することを習いながら、いつも学校内で、家庭の「姉」としてとるべき任務をよく自覚していな
ければなりません。
今から60年ほど前に、全世界の聖心学院の生徒に向けて書かれた小冊子(「聖心女子学院の生活」)からの引用です。時代は変わりましたが、今も同じ精神が息づいているのを感じ、清々しい気持ちで一日を始められました。
生徒の皆さんへの期待と感謝をこめて
2020.09.01
ルドベキアのように
キャンパスには、季節ごとに様々な花が咲きます。初夏から秋にかけて目を引く花の一つがルドベキア。小さなひまわりにも似た花弁が、夏の到来を感じさせてくれます。今年のような猛暑の中でも、生き生きと黄色い花を咲かせ続けています。ルドベキアの花言葉は「正義」、「公平」、そして「強い精神力」――、名の由来となっているスウェーデンの植物学者オロフ・ルドベックに由来するそうです。
この花々に、生徒たちの姿が重なりました。コロナ禍での生活様式や熱中症を心配して迎えた夏休み明けでしたが、思いのほか元気で、日々たくさんの笑顔がみられます。学校でも寄宿舎セントマドレーヌでも、夏休み前以上に、自分たちで感染対策を心がけようという意識の向上が感じられます。11月の「秋のつどい」(学院祭)もオンライン開催に変更されましたが、実行委員長の高校3年生は、学院史上初めてとなる第1回「オンライン秋のつどい」を成功させましょうと、全校生徒に力強く呼びかけています。10代の輝くエネルギーに、力をもらっています。
2020.08.24
夏休み明けのさわやかな朝に
一か月以上の夏休みを経て、本日から、授業が再開されました。先週までと異なり、今朝は涼しさも感じられるようなさわやかさ、そんな中、笑顔で生徒たちが戻ってきました。
最初の2週間は、ハイブリッド授業から入り、学校・寄宿舎という集団生活における「新しい生活様式」を確認する期間を設けます。全員が一斉に登校する場合も、様々な事情でオンラインを選択せざるをえない生徒のためにオンライン配信を継続いたします。職員による指導と共に、年齢に応じたリーダーシップを育て、各人の自主的な対策行動を推進していくことが、今後、ますます求められていきます。
登校初日にあたり、感染対策に向けての意識を共有すると共に、文科省のホームページに掲載されている吉野彰氏(2019年ノーベル化学賞受賞)から、コロナ禍にある青少年に向けてのメッセージ動画を紹介しました。
まだ今回の出来事を総括する時期ではありませんが、一つ
確実に言えるのはまだまだ人類は無力な面をたくさん残し
ているということです。これは文系、理系を問わず人類が
解決しなければならない課題が山積していることを再認識
させられたということかと思います。これらの課題を実際
に解決していくのはこれからです。そして、その原動力に
なるのは若い皆さん方だと思います。学習、勉強、研究の
遅れなどで不安に思われているかも知れませんが、逆に天
から大きな使命を与えられたと捉えてください。それをモ
チベーションにして頑張っていただきたいと思います。力
強いモチベーションがあれば、どんな困難も乗り越えるこ
とができます。 https://www.mext.go.jp/a_menu/coronavirus/mext_00030.html
生徒たちが、未知なる未来に向かって夢を実現していくモチベーションを持ち続け、また社会に対する使命を自覚していくようでありますように。
創立者 聖ソフィア・バラへの祈りとともに