フィールド日記
2013.04.10
アケビと前川文夫博士
2013.04.10 Wednesday
校舎の裏の道にアケビの花が咲いていました。毎年、この花を見ると、植物学者の前川文夫先生が『植物の進化を探る』(岩波新書)にお書きになっていたことを思い出します。先生は、アケビの仲間が遠く離れた南米のチリに見られることを指摘し、なぜ日本とチリに似た植物が見られるのかという疑問を提示なさっていました。さらに、そこには大陸の移動が関係しているという仮説を示し、その立証に将来発見される化石が一役買うだろうと推測なさっていました。生物地理学の世界のロマンを感じたことを思い出します。
今日のことば
アケビを含むアケビ科は日本からヒマラヤ、さらに南へかけてかなりの種類があります。それからひどくはなれて南米のチリーの南部の辺にほんの少し二属二種が分布しています。この科の学名はこのチリーに算するラルジザバラ(Lardizabala)という属の学名から導かれています。この分布はこれまた不思議な分布です。なぜ太平洋の全く反対側に生えているのかという疑問を禁じえません。
前川文夫