フィールド日記
2013.03.30
『じかきむしのぶん』 羽化したスイカズラハモグリバエ
2013.03.30 Saturday
福音館書店から出ている『じかきむしのぶん』はいわゆる「絵かき虫」(潜孔虫)を主人公にした珍しい絵本です。きわめてシンプルな作りの本でありながら、ハモグリバエの幼虫が糞をしつつ進んでいく様子なども丁寧に描かれていて、児童への「絵かき虫」入門としての役割を果たし得る貴重な絵本となっています。このような絵本が出版されているのは世界でもあまり例のないことではないでしょうか。不二聖心にもたくさんの「じかきむし」(字書き虫)がいますが、その中の一つ、スイカズラハモグリバエが羽化しました。スイカズラという植物がなければ絶対に生きていけない生物です。生態系は、このような目に見えにくい、たくさんのつながりによって成り立っています。
今日のことば
わが国は世界でももっとも優れた多くの図鑑を出版している国と言ってもいい状況にある。それは植物、キノコ、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚、昆虫、エビ・カニ、貝類その他多くの生物群や岩石鉱物にわたり、現代の写真術を駆使した素晴らしいカラー写真によって印刷されている。
ヨーロッパ、アジアなどの外国の書店を覗いてみると、蝶、鳥、大型の甲虫、ランなど大型で美麗 な動植物の図鑑は多く置いてあるが、わが国で出版されている一般の関心がそれほど高いとは思えないクモ、ダニ、蛾、土壌動物、蘚苔類、海藻などの図鑑はほとんど見当たらない。このことは、日本におけるナチュラルヒストリーの広範囲な発展の下地が整っていることを示しているような気がする。
青木淳一