フィールド日記
2012年01月
2012.01.31
クロハナビラタケ
2012.01.31 Tuesday
今日の朝日新聞の静岡歌壇に不二聖心の生徒の作品が4首、掲載されました。その4首を転載します。
古くても気になるものは気になりますテレビで言ってる
「やらさせていただきます」 芹沢美咲
ふと空を見上げてみれば別世界力をくれる星のきらめき 勝又美咲
もし今日が最後の日だと言われたらあなたはどこで何をしますか 鈴木梨沙
バイバイと手を振り君がこちら向くはにかむ私も小さくバイバイ 大倉照美
お茶畑の横の雑木林でクロハナビラタケを見つけました。クヌギの倒木の上に生えていました。倒木が土に還るために菌類は重要な役目を果たしています。
今日のことば
魂に光をそそいでくれることばは、どんな宝石よりも貴重である。
ハズラト・イナーヤト・ハーン
2012.01.30
ヒイロタケ
2012.01.30 Monday
栗畑では、昨日、紹介したクリオオアブラムシをはじめとして、さまざまな生物を観察することができますが、下の写真のヒイロタケのその一つです。残念ながらヒイロタケが生えている木はもはや樹木としての生命力を失いつつあります。腐朽菌の力によってやがて材はぼろぼろになっていくことでしょう。しかしこれも自然界にはなくてはならない現象であり、ヒイロタケは分解者としての大切な役割を果たしています。
今日のことば
ぼくは読書から生きるヒントをもらってきた。「勝ち」と「負け」の間にほんものの幸せはある。読書のなかから多様な生き方があることを学べば、どんなに辛い人生でも、負けと思わず、意味があると思うことはできるのだ。いい本のなかにはそのヒントが詰まっている。
鎌田實
2012.01.29
ヒラタアブ類の蛹とクリオオアブラムシ
2012.01.29 Sunday
校舎裏の栗の木についたクリオオアブラムシについて何度かフィールド日記でも紹介してきましたが、さらに3か所でクリオオアブラムシの卵が密集している場所を見付けました。今年は例年になく集団産卵場所が多いように感じます。今回は卵だけでなくヒラタアブ類の蛹も見つけることができました。幼虫の時に、産卵のために集まったクリオオアブラムシを食べ、クリオオアブラムシの卵の密集地の真ん中で蛹化したものと思われます。ヒラタアブはこのようにアブラムシを食べるので益虫としての扱いを受けています。
今日のことば
コノ本ハ深イケレド、コチラノ本ハ深クナイ。アサイ、デス。私が少女時代のすべてを過ごした学校の西洋人の修道女たちは、そういうふうに、いっていた。深イ、は賞讃のことばで、浅イ、はペケだった。深イカンガエヲモツ人ニナッテクダサイ。ことあるごとに、彼女たちはそうくりかえしていた。
深イ、がどういうことなのか、私にはながいこと理解できなかった。深い考え。深い本……。それは、真実、というのとも、すこしずれているようだった。修道女たちがこれもよく口にのぼらせた、真理、というのともちがった。なにが、どういうふうに、すぐれているとき、深い、という形容にふさわしくなるのだろう。学校を出てから、遊んでいても、本を読んでいても、ふと、深イ、という、私には意味がわからなかった彼女たちの判断の基準が胸に浮かんでは私を萎えさせた。それがわからないまま進むのは、まるで洞窟の扉をあけるための呪文を知らない泥棒たちのように、たよりないことだった。
須賀敦子
2012.01.28
ヤママユガの繭
2012.01.28 Saturday
お茶畑の近くの雑木林でヤママユガの繭を見つけました。ヤママユガは野生の蚕で天蚕とも呼ばれます。ヤママユガと聞いて、中学1年生で学習したヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」を思い出す人もいるでしょう。ヤママユガは雑木林のクヌギの葉を食べますので、雑木林が私たちの生活の身近にあったころは、ヤママユガもよく見られる生き物でした。(雑木林に植えられているクヌギやコナラが大昔から身近な樹木であったことは、クヌギやコナラの総称として「ははそ」という古語が残り、そこから「ははそはの」という枕詞が生まれたことからもわかります。)今は生活の場所の多くを奪われてしまったヤママユガですが、不二聖心ではまだその姿を身近に見ることができます。
天蚕は明治時代から皇居内でも飼育が続けられ、現在は美智子皇后様がその飼育を引き継いでいらっしゃいます。
今日のことば
子に告げぬ哀しみもあらむをははそはの母清やかに老い給ひけり
美智子皇后様
2012.01.27
マラソン大会 トウゲシバ
2012.01.27 Friday
今日はマラソン大会が行われました。よく晴れた冬空の下、生徒たちは一生懸命に走り、完走後は達成感を味わいつつ母の会のお母様方の手作りのうどんとお汁粉をいただきました。
今年度の最高タイムは、15分46秒でした。
不二聖心の林内でよく見られる植物の写真を撮りました。ワラビやゼンマイと同じシダ植物の仲間でトウゲシバといいます。「シダらしくないシダ」の代表と言えるでしょう。
今日のことば
Perhaps we don’t realize enough how hard it is to listen to one another. We are so busy with ourselves and with our affairs that we don’t hear others or listen to them. How much harder it is for us to hear God and to listen to him! He loves us, he speaks to us, mainly through his written word in the scriptures, in the voice of the Church, in his commandments, in other people, especially in prophets and the poor, in the events of life. Pay attention, try to hear him and say: “Speak, Lord, your servant listens.”
「サンデー・リタジー」より
2012.01.26
雪の富士 薩摩紅梅の蕾
2012.01.26 Thursday
ここ数日の寒波で富士山にさらに雪が積もりました。遠くからでも山肌の雪が厚みを増しているのがわかります。
築山の薩摩紅梅の蕾が膨らんできました。春が近いことを感じます。
今日のことば
大阪国際に向けて調整してきましたが、帰国直前に痛めてしまいショックでした。 しかし、少し休めば良くなる程度の症状なので気持ちを切り替え、最後の選考会である名古屋に向けて頑張ります。私は諦めません。
野口みずき
2012.01.25
キイロスズメバチの巣
2012.01.25 Wednesday
校内で見つかったキイロスズメバチの巣の写真です。すでに危険性がないように処理されたあとですが、そのあまりの大きさに思わずたじろいでしまいます。
今日のことば
真の愛と呼ばれるものは、誰もが愛せるものを愛することではなくて、誰からも顧みられない価値なきかに見えるものに注がれる愛である。
三浦綾子
2012.01.23
不二聖心の美林 モグリチビガ科の絵かき虫
2012.01.23 Monday
牧草地の横に美林としてかつて賞を受けた林があります。その林床には多くの植物が生息していますが、最も多いのはフユイチゴです。その葉に潜っている絵かき虫については「不二聖心のフィールド日記」でも紹介したことがありますが、絵かき虫の種類が、専門家の方の同定によって、モグリチビガ科の Stigmella属の「イチゴモグリチビガStigmella alikurokoi Kemperman et Wilkinson」か「イチゴアカガネモグリチビガStigmella ichigoiella Kemperman et Wilkinson」であることがわかりました。
今日のことば
今日散れる葉にすら深き彩りを賜えるものを天と思うも
田井安曇
2012.01.22
リョウブの冬芽
2012.01.22 Sunday
日本で見られる樹木で木肌が最も個性的なのは、リョウブではないかと思います。(1枚目の写真参照)冬の時期は一際その木肌が目をひきますが、それとともに最近は冬芽の白が目立つようになってきました。芽鱗がついていた時は茶色く見えていた冬芽(3枚目の写真参照)が、芽鱗がはがれると冬空に白い輝きを放つようになります。(2枚目の写真参照)写真はすべてキャンプ場で撮影しました。
今日のことば
一、 一日一日をていねいに、心をこめて生きること
二、 お互いの人間存在の尊厳をみとめ合って(できればいたわりと愛情をもって)生きること
三、 それと自然との接触を怠らぬこと
結局のところ人の世の詩も幸せもこの他になく、それ以外はすべて空しいことにすぎないのではないかな。
細川宏
2012.01.21
スミレモ
2012.01.21 Saturday
半田信司さんという方の「21世紀初頭の藻学の現況」という文章の中に次のような一節があります。
陸上の岩や樹皮表面などの水のない場所にすむ藻類は「気生藻類」と呼ばれる。ところが,ワカメやコンブのように水の中にすむ藻類はあえて「水生藻類」とは呼ばれないのはなぜか。いうまでもなく,“藻類は水の中にすんでいる”という先入観によるものに違いない。
確かに藻類と言えば水中をイメージしてしまうような先入観が私たちにはありますが、陸上に生活する藻類も多数いて、その代表がスミレモです。不二聖心の裏道の石垣にはこのスミレモがたくさん生息しています。
この種の藻類は水生藻類が陸上に進出して生まれたものですが、進出の理由について半田信司さんは以下のような興味深い仮説を「21世紀初頭の藻学の現況」の最後に述べていらっしゃいます。
最後に,藻類が陸上に進出したのは,炭素の利用効率を上げるためであるという仮説をとりあげたい。シャジクモ類は,CO2の利用効率の良さを求めて大気中にすむことを選択したという歴史がある。「気生」という,藻類にとっては厳しい環境に生きているものたちには,何か計り知れない潜在能力があるのかもしれない。今,人間の生活しやすい大気環境を維持するためにCO2 排出量の削減が叫ばれている中で,気生藻類には,その役割を担う救世主としての可能性が秘められている。
今日のことば
その思想がたとえ高潔なものであっても、人間の最終目標は思想ではなく行動である。
トマス・カーライル
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