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フィールド日記

2012.01.21

スミレモ

  2012.01.21 Saturday

 半田信司さんという方の「21世紀初頭の藻学の現況」という文章の中に次のような一節があります。

 陸上の岩や樹皮表面などの水のない場所にすむ藻類は「気生藻類」と呼ばれる。ところが,ワカメやコンブのように水の中にすむ藻類はあえて「水生藻類」とは呼ばれないのはなぜか。いうまでもなく,“藻類は水の中にすんでいる”という先入観によるものに違いない。

 確かに藻類と言えば水中をイメージしてしまうような先入観が私たちにはありますが、陸上に生活する藻類も多数いて、その代表がスミレモです。不二聖心の裏道の石垣にはこのスミレモがたくさん生息しています。
この種の藻類は水生藻類が陸上に進出して生まれたものですが、進出の理由について半田信司さんは以下のような興味深い仮説を「21世紀初頭の藻学の現況」の最後に述べていらっしゃいます。

 最後に,藻類が陸上に進出したのは,炭素の利用効率を上げるためであるという仮説をとりあげたい。シャジクモ類は,CO2の利用効率の良さを求めて大気中にすむことを選択したという歴史がある。「気生」という,藻類にとっては厳しい環境に生きているものたちには,何か計り知れない潜在能力があるのかもしれない。今,人間の生活しやすい大気環境を維持するためにCO2 排出量の削減が叫ばれている中で,気生藻類には,その役割を担う救世主としての可能性が秘められている。

 

今日のことば

 その思想がたとえ高潔なものであっても、人間の最終目標は思想ではなく行動である。

トマス・カーライル