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フィールド日記

2011年08月

2011.08.11

オオアオモリヒラタゴミムシ・ツチアケビ

平成23年8月11日 木曜日

 図書館で本を選んでいたら、日本最大のトンボ、オニヤンマが目の前を何度も横切っていきました。
どうやら図書館に迷い込んでしまったようです。8月の不二聖心ならではの出来事だと思いました。

 昆虫研究家の平井剛夫先生にゴミムシの同定をお願いしていたのですが、その返事が届き、
下の写真のゴミムシがオオアオモリヒラタゴミムシであることがわかりました。
不二聖心に生息する生物をまた1種確認することができました。平井先生には深く感謝申し上げます。
合わせて平井先生から「不二聖心のフィールド日記」の誤同定の指摘があり、7月31日のフィールド日記で
ツマグロヒョウモンのメスとして紹介したのは、ヒメアカタテハだとわかりました。
この場を借りて訂正させていただきます。
平井剛夫先生は最近、刊行された『恐るべし、外来生物』(しずおかの文化新書)の
昆虫の章を執筆なさっています。この本からもたくさんのことを学ぶことができそうです。
 

 7月6日のフィールド日記で紹介したツチアケビのその後の様子を、たくさんの蚊に刺されながら観察しました。ぜひ2枚の写真を比較してみてください。

2011.08.10

カヤキリ・ジャノメチョウ・エビイロカメムシ

平成23年8月10日 水曜日

 この夏、初めてツクツクボウシの鳴く声を耳にしました。昆虫学者の矢島稔氏は
「東京あたりでは八月の中頃から鳴き出し、この声を聞くと『宿題やったか』といわれているようで、
苦々しい奴だと思ったことがある」と書いています。

 今日は、不二聖心のフィールドのすばらしさを再認識することができました。
まずは下の写真をご覧ください。何かが隠れているのがわかるでしょうか。

 中央に写っているのがカヤキリというキリギリス科の昆虫で、10の都道府県で、絶滅危惧種・準絶滅危惧種に指定されています。草に見事に同化してしまっていて、
上に突き出ている産卵管の赤茶けた色だけが少し目立つ程度です。
カヤキリはススキ野原を好みますが、飛ぶことが苦手で移動能力が低いので環境破壊に非常に弱いと言われます。手入れの行き届いたすすき野原でしか生息できないのです。
その点で不二聖心のすすき野原は格好の生息場所です。
次は、ジャノメチョウです。東京都は、このチョウを絶滅危惧Ⅰ類に指定しています。幼虫の食草はススキです。

 ススキが養う命はまだまだあります。エビイロカメムシもその一つです。
今日は初めて幼虫を撮影することができました。

 これ以外にも何種かの希少種に出会うことができました。運が良ければ、
ごく短時間に絶滅危惧種にいくつも出会えてしまうフィールド、それが不二聖心のフィールドです。

2011.08.09

コマツナギ

平成23年8月9日 火曜日

今日も暑い一日でした。裾野市の最高気温は32.9度でした。

 不二聖心では今年もコマツナギがたくさん咲いています。「コマツナギ」の「コマ」は「瓢箪か ら駒」の
「コマ」と同じで「馬」のことを表しています。つまり、その茎に馬をつないでも大丈夫なほどに
茎が丈夫なことからこの名がつけられたのです。遠い昔、暑い夏の日に実際にコマツナギに手で触れ
その丈夫さを自ら確かめた人が何人もいたのでしょう。「駒繋ぎ」という名前が多くの人の共感を呼んだ
からこそ、和名として定着したのだと思われます。
コマツナギの花は、人間と自然との距離が今よりずっと近かった時代を、その花を見る者にしのばせます。


2011.08.08

ツマグロヒョウモンの幼虫と蛹

平成23年8月8日 月曜日

今日も不二聖心は快晴で、牧草地ではさまざまな生き物が活発に動いていました。

 チョウだけに限ってみても、モンキアゲハ、ジャコウアゲハ、サトキマダラヒカゲ、ツマグロ ヒョウモンなどを短時間で観察することができました。7月15日、31日に「フィールド日記」でも紹介したツマグロヒョウモンについては、幼虫と蛹も確認 することができました。
ツマグロヒョウモンは不二聖心に完全にすみついていることがわかります。

 1980年に刊行された学研の学習科学図鑑には「ツマグロヒョウモンは、
日本ではほとんど全 土で採集されるが、完全にすみついているのは四国、九州以南の暖地である。」
という記述があります。この30年で、人間がツマグロヒョウモンの生息域を変 えてしまったとしたら、
それは極めて憂慮すべきことです。

2011.08.07

イチモンジカメノコハムシの偽装とツノトンボの卵

平成23年8月7日 日曜日

 今日は衝撃的な出会いを経験しました。
図鑑でしか見たことがなかったイチモンジカメノコハムシの幼虫に、第二牧草地から東名カントリーまでの間の
林道で出会ったのです。イチモンジカメノコハ ムシの幼虫は自分の糞を背中に乗せて擬装します。
どのような進化の過程を経てこのような擬装をするようになったのか、
その不思議と姿のあまりの奇妙さに思 わず唸ってしまいました。

 7月30日の「フィールド日記」で紹介したツノトンボの卵を見つけました。
希少種のツノトンボですが、来年の夏もきっと姿を見せてくれることでしょう。

2011.08.06

井坂洋子の「存在が語る」とダイミョウセセリの幼虫

平成23年8月6日 土曜日

詩人の井坂洋子さんの「存在が語る」というエッセイを読み、次のような一節に出会いました。

 植物が優しく思えたり、犬や猫をはじめ動物たちがあわれでいじらしく思えたりするのは年齢のせいだろうか。存在そのものが何かを語っている者の方が、言葉で語る者より、胸にぐっとくるのである。

 不二聖心にも、その営みにいじらしさを感じる生き物がたくさんいます。
今日はその中からダイミョウセセリの幼虫を紹介します。

 今の季節、野外で植物を観察していると、下の写真のように一部分がめくれている葉をよく見かけます。
ぜひ一度、その葉をそっと裏返してみてください。


 するとそこには一匹の小さな虫が隠れています。7月23日の「フィールド日記」で紹介した
ダイミョウセセリの幼虫です。こんな小さな体で既に自分の身を隠すすべを体得しているのです。
この小さな命が無言で語りかけるものも決して少なくないように感じます。
 

2011.08.05

ヒグラシ

平成23年8月5日 金曜日

 今日も不二聖心はいいお天気でした。
学校にも何人かの生徒が登校し、卒業研究などに励んでいました。

 朝、校舎の壁にヒグラシがとまっているのを目にしました。
数年前に、ヒグラシの鳴きはじめる時間を毎日記録したことがあります。
時計が4時半を過ぎると必ずヒグラシが鳴きだすのに驚いたものでした。
そしてしばらくするとすべてのヒグラシが鳴くのをやめてしまいます。
このヒグラシも鳴き疲れてしばし休憩といったところだったのでしょう。

 詩人の清水哲男はヒグラシについて次のように書いています。

 法師蝉が昼のセンチメンタル派だとすれば、朝夕のそれは蜩(ひぐらし)である。私の故郷の山 口県では
「かなかな」と呼んでいた。詩人の川崎洋さんによれば「ひぐれおしみ」という地方もあるそうで、
ネーミングの素敵さからいえば、この「ひぐれおし み」が最良だろう。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は、蝉の鳴き声のなかで蜩がいちばん美しいといった。

2011.08.05

ハチのユニークな行動・アオオビハエトリ

平成23年8月4日 木曜日

今日の不二聖心は快晴でした。雑木林にも気持ちの良い風が吹いていました。

 ユニークな生態のハチを見つけました。ススキの葉の間の狭い空間に身を潜める習性のあるハチです。
約1年前にも同じ場所で同じ姿を見ました。

 アオオビハエトリのメスを見つけました。アリを食べるクモです。アリの行列を前にして万歳をしていました。不二聖心初記録です。

2011.08.03

ヒルガオ

平成23年8月3日 水曜日

 牧草地にたくさんのヒルガオが咲く季節となりました。花びらの上の黒い点はアリです。
牧草地にヒルガオが多いのは受粉昆虫の多さにもよるのでしょう。
ヒルガオについては、稲垣栄洋の『身近な雑草の愉快な生き方』という本に次のような興味深い記述があります。

 ヒルガオは古くから日本に自生していた。『万葉集』では容花(かおばな)の名前で登場する。
「容」とは美しいという意味である。万葉時代の人々は、ヒルガオの美しい桃色を愛でていたのだろう。
しかし、間もなくライバルがあらわれた。遣唐使が大陸からヒルガオによく似たアサガオを持ち帰ったのである。やがて、江戸時代には一大ブームを巻き起こ すまでに、アサガオの人気は急上昇した。
こうしてアサガオに対して容花は昼限定のヒルガオと呼ばれるようになってしまったのである。

2011.08.03

エンマコオロギ

平成23年8月2日 火曜日

 8月に入り、鳴く虫の季節が待たれる頃となりました。
不二聖心に生息するバッタ目の虫の中で最もよく声が聞かれるのはエンマコオロギです。写真のコオロギは
エンマコオロギのオスです。今の時期はまだ羽が生 えておらず、白い帯のようなものがあります。
この白い帯が消えるとき、牧草地はエンマコオロギの美しい声に満ちることでしょう。