フィールド日記
2011.08.18
ハリギリの樹皮・ベニイグチ
平成23年8月18日 木曜日
幸田文の名著『木』(新潮文庫)の中に「木のきもの」という随筆が収められています。
その中に次のような一節があります。
木は着物をきている、と思いあててからもう何年になるだろう。北海道へえぞ松を見に行ったとき、
針葉樹林を走りのぼるジープの上で当惑したこと は、どれがえぞ松だか、みな一様にしかみえず、
見分けができないことだった。仕方がないので、目的地についてから、教えを乞うた。あなたは梢の葉っぱ
ばかり見るから、わからなくなっちゃう、幹の色、木の肌の様子も見てごらんといわれた。
つまり、高いところにある葉や花にだけ、うつつを抜かすな、目の高さに ある最も見やすい元のほうを見逃すな、ということである。そのときに、これは木の装いであり、樹皮をきものとして見立てれば、おぼえの手掛かりになると知った。
不二聖心の森を歩きながら、木々の樹皮の様子の実にさまざまであることに気づき、幸田文の文章を
思い出しました。とりわけ印象的だったのは、鋭い棘の生えるハリギリの木肌です。
棘があるのは若木の時だけで成長とともに木肌の様子は変わります。
写真のハリギリはかなりの樹高に達しており、いくつかの 棘は手で触れると簡単にとれてしまいました。
樹皮を見ること以外にも樹形を見たり、洞を見たり、森の楽しみは尽きません。
足元にはいろいろなキノコが生えています。今日はワインレッドのベニイグチと出会いました。