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フィールド日記

2011年08月

2011.08.31

ハグルマトモエ・オスグロトモエ

平成23年8月31日 水曜日

 最近、不二聖心でよく目にする蛾について専門家に同定をお願いしたところ、返事が来ました。
上の写真がハグルマトモエ、下の写真がオスグロトモエだそうです。同じ種だと思っていたら全く別の種でした。
専門家はその違いをいとも簡単に見抜いてしまいます。勉強するということは、
物がよく見えるようになることだと改めて思います。

 

今日のことば 

自分を離れ他の生命力を見つめよ。   戸塚洋二

2011.08.31

ショウリョウバッタ・カマキリ・ケンポナシ

平成23年8月30日

 夏休みが終わり、生き物と親しむ生徒たちの姿がもどってきました。
ある生徒は、東京と裾野でツクツクボウシの鳴き声の音程が2.5度ぐらい違う気がすると話してくれました。
ある生徒は、つかまえたショウリョウバッタを見せに来てくれました。校舎の周辺にある、
草原に近い環境を代表する昆虫です。

 ある生徒は、ベランダでカマキリがアリを食べていますと教えてくれました。この写真を撮ったあとも
生徒たちは熱心に観察を続け、アリを食べ尽くしてフンをするところまで見届けたそうです。

 今日の午後、元用務員の中家さんから温情舎と不二聖心の歴史についていろいろと話をうかがうことが
できました。裾野を訪ねた大臣に岩下清周氏が馬上から挨拶をしたという話は当時の岩下清周氏の姿を
彷彿とさせましたし、イエズス会のエデルマン神父 から託されて中家さんが植えたケンポナシの木の立派な姿に昭和30年代の不二聖心をしのぶことができました。
ケンポナシの木はおいしい実がなることでよく知られています。今から秋が楽しみです。

 

 今日のことば

人が生命の織物を織るのではない。人は、その織物のひとすじの糸にすぎない。
生命の織物に対して人がすることは、それがなんであれ、自分自身にすることなのである。
                               酋長シアトル

2011.08.29

キンミズヒキ

平成23年8月29日 月曜日

 キャンプ場からススキ野原への道にキンミズヒキが咲いています。(長い花序がミズヒキと似ているので
キンミズヒキと名付けられましたが、キンミズ ヒキはバラ科、ミズヒキはタデ科に属しています。)
この道は今ではほとんど歩く人がいませんが、かつては馬と人の通り道でした。わずかに舗装されたあとも
残っています。ヤマケイポケットガイドの『野の花』には、「キンミズヒキは萼のとげで運ばれるので、
人や動物の通り道に沿って生えることが多い」と書かれ ています。かつてここは道であったと
キンミズヒキを見て改めて思います。キンミズヒキは人の暮らしの歴史を静かに語る花でもあったのです。

  今日のことば

いい日は幾らでもある。
手に入れるのが難しいのは
いい人生だ。
          アニー・ディラード

2011.08.28

マルバノホロシ

平成23年8月28日 日曜日

 キャンプ場への道にマルバノホロシの花が咲いていました。ひと目見てナス科とわかる特徴を備えている
花です。マルバノホロシは、福岡県で絶滅危惧Ⅰ類、鹿児島県で絶滅危惧Ⅱ類、東京都と鳥取県で
準絶滅危惧種に指定されています。

 「マルバ」と名前に付けられていますが、下の写真を見てわかるように葉は丸くありません。
この場合の「丸い」は「ギザギザのない」という意味です。日本語の「丸い」は「円形」のみを意味する
のではないことが、このような植物の名前の例からもわかります。

今日のことば

「より多く所有する」ことではなく、
「より深く存在する」ことが大切なのです。
                       ヨハネ・パウロ二世

2011.08.27

クズの花・オオフタオビドロバチ・シオカラトンボ

平成23年8月27日 土曜日

 今年はじめてアオマツムシの声を聞きました。樹上から聞こえてくる一年ぶりの声に耳を傾けつつ歩いていると今度は甘酸っぱい匂いが上から漂ってき ました。クズの花の匂いでした。クズの開花を確認しているときに視界を横切ったのはアサギマダラ、数百キロの渡りをするチョウとして知られています。
今日 もまた、季節のめぐりを実感する一日となりました。

 車で正門から上ってくるときに壁面に新しい穴を見つけました。車を止めて確認したところ、
穴の中でオオフタオビドロバチがせっせと作業をしていました。しばらくして穴から泥だんごを咥えて
出てきました。よほど重いらしく壁面をすべり落ちていきま したが、もう一度体勢をなんとか立て直して
飛び立ち、右の林に消えていきました。数秒後、同じ穴にオオフタオビドロバチが再びやってきました。
これもしば らくして穴から出てきましたが、今度は左の方角に飛んでいったのです。
全く別の個体が同じ穴から泥を集めていることがわかりました。

 シオカラトンボのオスとメスが連結して飛んでいるのを見かけました。
オスが腹端にある付属器でメスの後頭部をはさんでいるのがわかります。

 

今日のことば

知覚をみがくための方法はひとつだけだ。まことの深い知覚を開発するには、
とにかく自然のなかに出ることなのである。
                                     C.W.ニコル

2011.08.26

ヨウシュヤマゴボウ・ジガバチ・ナガコガネグモ

平成23年8月26日 金曜日

 久しぶりに青空の広がる一日となりましたが、夕方からはまた雨が降りだしました。
天気が安定しないだけに夏の青空がことさら貴重に感じられます。

 ヨウシュヤマゴボウの実が次々に熟してきています。外来種のなかでもとりわけ生命力に富む植物で、
不二の自然の生態系全体を考えた時には少々困り者の面もあるのですが、近づいてみれば実も花も
それぞれに美しく沢山の命を養っています。

 まだまだ咲き続ける花にはジガバチなどの虫が集まり、その虫を捕らえようとナガコガネグモが
巣を張っていました。

 

今日のことば

もし今日が自分の人生の最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?
If  today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?
                               スティーブ・ジョブズ

2011.08.25

ヤマトタマムシ・カタツムリ

平成23年8月25日 木曜日

 中学校校舎の中庭でヤマトタマムシを見つけました。残念ながら生きてはいませんでしたが、
構造色は簡単に色あせることはありません。

 ススキ野原のカタツムリはススキの葉裏に隠れてじっとしていました。カタツムリは移動能力が低いため
種分化しやすく、日本に600種以上いると言われています。同じ種の中でも亜種が多く、その土地固有の遺伝子を持っているものも多いようです。こ のカタツムリも何か目には見えない個性を備えているのかもしれません。

 

今日のことば

世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない。
                                  宮沢賢治  1926年

 宇宙には、たくさんの生物がいます。地球にさえも途方もなくたくさんの生物がいます。虫も草 も木も、
賢治の場合は、岩でさえも生物のようだと思っていました。だから、そういうものが全体幸福にならなければ、結局、個人は絶対、幸福になれないこと を、最近の公害、その他は、はっきりと証明しているようで
毎日毎日公害は押し寄せてきております。
もし、原爆のヘドロのようなものを海へなげたり、宇宙の方へなげたりしますと、宇宙のバランスがくずれて、たいへんなことになるということは、科学者がすでに言いはじめていることであります。
                                      宮沢清六  1974年

2011.08.24

フヨウ・フタトガリコヤガ

平成23年8月24日 水曜日

今日の不二聖心は、朝は曇り、昼は晴れ、夕方から雨が降るという変化の多い一日でした。

 芙蓉の花を毎日楽しめる季節となりました。今日の、晩夏の青空を背景にした芙蓉の花弁の美しさは
格別でした。以前に不二聖心で国語を教えていらした西山民雄先生は「富士の冴え祈りの心諭しけり」という
名句を残されましたが、青空と芙蓉の花の間に 立つ聖母子像もまた、
祈りの心をさとしているように感じられました。

 葉に顔を近づけてみると、簡単にフタトガリコヤガの幼虫が見つかりました。
フタトガリコヤガはアオイ科の植物につく蛾の幼虫で、毎年この時期に芙蓉の葉の上で見ることができます。

 今日のことば

葉末の露がきらめく朝に
何を見つめる子鹿のひとみ
すべてのものが日々新しい
そんな世界を私は信じる
信じることは生きるみなもと
             谷川俊太郎

2011.08.23

ツバメ・ウスバキトンボ・羽アリの大発生

平成23年8月23日 火曜日

 夕暮れのすすき野原を歩いていて驚くべき光景に出くわしました。
十羽以上のツバメが空を飛びまわり、その下を何十匹ものウスバキトンボの大群が飛び回っていたのです。
ツバメはウスバキトンボを食べているようでした。

 ウスバキトンボは網で追いかけてもなかなかつかまえることができないトンボです。
そのウスバ キトンボが次から次にこちらの顔に体当たりしてくるのです。群は興奮状態にありました。
下の写真の、横に入った線のようなものがすべてウスバキトンボで す。360度、周りはこのような状態でした。

 これには原因がありました。さらにその下で羽アリが大発生していたのです。しかも全く異なる2種のアリが
大発生していたのです。1種はキイロシリアゲアリでしたが、もう1種は同定ができませんでした。
違う種が全く同じ時に大発生していたのです。 これも非常に不思議なことです。

 ツバメが飛び、トンボが群れをなし、アリが大発生する。
一生に一度しか出会えない風景の中に立ちつくしていたのかもしれません。

2011.08.22

トノサマバッタ

平成23年8月22日 月曜日

 朝日新聞の1面に「しつもん!ドラえもん」というコーナーがあり、そこには小学生向けのいろいろな質問が
書かれています。答えは新聞のどこかに隠れています。それを探す過程で自然に他の新聞記事にも
目を向けることになる、そういう工夫です。
8月18日の質問は「アフリカやアジアで、虫の大群が農作物を食べ尽くすことがあるよ。どんな虫かな。」で、
答えは「バッタ ―― バッタは大量に発生 することがあるんだ。群れを作って飛び回りながら作物を
食い荒らすから、人間が食べるものがなくなってしまうほどなんだよ。」でした。
不二聖心のフィールドでも今、バッタがたくさん発生しています。車で走ると何匹も車に飛んできます。
下の写真は8月16日に撮影したものですが、この日は何匹ものトノサマバッタがフロントガラスに
飛んできました。
実はこの写真を撮った直後、困ったことがおきました。腹部の先端から糞が出てきたのです。
このままでは車のフロントガラスが汚れてしまうと思いました。 ところが、糞が出尽くすその瞬間
驚くべきことがおこりました。トノサマバッタが糞を蹴飛ばしてしまったのです。
瞬時に糞は空中を飛んでいきました。このト ノサマバッタはフロントガラスのほぼ中央にとまっているのですが、糞はフロントガラスの端を超えてさらに飛んでいきました。フロントガラスは汚れずにすん だのです。
糞を蹴飛ばすのは、糞が近くにあるとその臭いで外敵に自分の居場所を教えてしまうからだそうです。