校長室から

2021.03.08

思いがけない贈り物

 学年末試験最終日(4日)に、保護者の方々から、生徒達一人ひとりにサプライズがありました。一人ひとりに「母の会特製ジャム」が配られたのです。学院の本館のイラストが描かれた瓶に詰められたストロベリー、ブルーベリー等のジャムには、保護者の皆様の愛情が詰まっています。瓶には、次のようなメッセージが記されたカードが添えられていました。


 生徒の皆さんへ
 今年度は例年とは違う学院生活となりました。そのような状況でも、前向きに乗り越えようと励んでいる皆さんにエールの気持ちを込めて、ささやかですが母の会グッズ人気NO.1のジャムをお届けします。これからもお健やかに過ごされますように。
母の会より

 お心尽くしの贈り物に、生徒たちは、とてもうれしそうでした。教職員もいただきました。保護者の皆様の寛大なるご協力のもと、今日まで過ごしてまいりしたことに、改めて心より感謝申し上げます。

2021.03.01

4月からの入学生を迎えて

 2月27日(土)、新入生を迎えてのガイダンスが行われました。前日の会場準備は、生徒たちと共に行われました。卒業した高校3年生が残してくれた手作りのホーム・ルーム ノートカバー、エンジェルとなる高校2年生の心がまえ、地区毎の保護者の方々による歓迎会、修道院の祈り、開花を待つ桜そして入学式の準備等、目に見えない様々な思いや希望が、新入生の皆さんを包んでいます。

 コロナ対策により、身体的な距離をとっての着席となりましたが、実際に出会ってみて、心の距離は少し近づいたでしょうか?



蒲公英(たんぽぽ)の絮(わた)吹いてすぐ仲良しに

                 堀口  星眠

2021.02.22

1832年の頃

 日本の新型コロナウイルス感染者数の発表は、累計で40万人を超えました。学院のある裾野市では、2月20日(土)に、市内で37例目となる感染症患者の発生が発表されました。一日も早い収束を願ってやみません。

創立者の時代も、様々な伝染病に悩まされました。たとえば、1832年にパリを襲い、全国に蔓延したコレラの影響により、パリだけで2万人、フランス全土で10万人が亡くなったといわれます。フランスの聖心学院でも、生徒たちの健康を守るために様々な対応がなされ、なんとか大事を免れたようです。パリの学院では、この疫病で保護者を失った子供たちを15人、引き取ったとの記録も残されています。1830年の革命の影響とも絡み合って、非常に困難な時でした。
https://rscjinternational.org/news/epidemics-society-sacred-heart-lifetime-madeleine-sophie-barat-1779-1865

同年5月、コレラの流行による検疫の厳しい中、創立者は、イタリアの学院の視察を決行しています。この頃は、聖心会に託された様々な事業が軌道にのり始めた時期で、ヨーロッパや北米に次々に修道院や学校の創立も検討されました。このようなエネルギーの源に、神様への愛と、生徒たちへの愛があったことはいうまでもありません。 

2021.02.15

春の気配

 先週は、卒業週間でした。高校2年生がオンラインを使って企画した送別会は、まるで一篇のすてきなドラマか映画を見るようでした。聖心スピリットあふれるメッセージが現代的に表現されていて、とても感動しました。

 卒業式は、保護者の方々にもご参列いただき、チャプレンによる「感謝の祈り」、「伝統の灯を下級生に託す儀式」等を含め、高校3年生の旅立ちの時をご一緒にお祝いいたしました。コロナ感染予防のため下級生は代表だけの参加となりましたが、心はしっかりとつながっていたと思います。卒業生代表の言葉に耳を澄ましながら、改めて、コロナ禍の中、最高学年としての務めを真摯に果たし、学院生活に貢献してきた高校3年生の方々に、感謝と尊敬の念を抱きました。創立者ソフィア・バラも天国から微笑んでいらしたことでしょう。



 今は考えられないことですが、一年半前、私たちは皆でフランスに行きました。(略)ジュワニーの古い町並みや葡萄畑を歩きながら、創立者の「私はたった一人の子どものためにもこの学校を建てたでしょう」というお言葉を思い出し、SDG4番と創立者の言葉に響き合うものを感じました。
 一人でも多くの子どもたちに良い教育を受けさせるという創立者のお考えは、すべての人々に質の高い教育を与えたいと願うユネスコの理想に通ずるものがあると感じたのです。「たった一人の誰かのためにも」という精神を生きることが、創立者の精神を現代において生きることであると学んだ旅でした。
(2020年度卒業式「卒業生の言葉」より)


 彼女たちの命を受け継ぐ新入生を迎える準備も、並行してなされています。別れと出会いの時が交錯する日にあって、天そそる富士を戴く学院には晴れやかな春の気配が漂っています。

2021.02.08

For The Sake of One Child

 2021年は2月12日が台湾の春節にあたります。台北にある聖心女子学院より全世界の聖心学院にお祝いのビデオが送られてきました。(2月2日「不二聖心からのお知らせ」に掲載)パンデミックの中での連帯感が感じられるメッセージでした。例年なら、1月から2月にかけて台湾からの交換留学生が本学院に滞在、1月には韓国ソウル聖心生のグループも訪問し、にぎやかな交流がなされます。

台湾聖心の壮麗な本館は、ローマの聖心会本部にいらしたマザーBenzigerの発案で、全世界の聖心学院の生徒からの寄付により集まったお金で建設されました。本年度、創立60周年を迎えた台湾聖心が製作した“For The Sake of One Child”というアニメーション・ムービー(35分程度)の中で、当時の様子が紹介されています。(10分30秒以降参照)。
https://rscjinternational.org/news/taiwan-mission-koc-province-celebrates-its-60th-anniversary(こちらをクリック)
本学院の生徒の皆さんも、ぜひ、ご覧ください。

実際に顔と顔を合わせての再開がかないますように!

2021.02.01

The Daffodils

 キャンパスに水仙が咲き始めました。“I wander'd lonely as a cloud”で始まる英国のロマン派の詩人ウィリアム・ワーズワースの「水仙」(The Daffodils)は、中学校のスピーチ・コンテストの定番で、学年全員での暗唱がなされます。自然を題材にした多くの詩を残しているワーズワースの詩は、自然豊かなキャンパスで学ぶ生徒たちによく似合うように思います。

今年は、コロナにより学年の暗唱は見送られましたが、生徒たちは、“I gazed - and gazed - but little thought What wealth the show to me had brought.”と表現されているような「後になって、自分を支えるものとなっていたと気づく経験」を重ねていくことでしょう。


  For oft, when on my couch I lie
  In vacant or in pensive mood,
  They flash upon that inward eye
  Which is the bliss of solitude;
  And then my heart with pleasure fills,
  And dances with the daffodils.
    William Wordsworth “The Daffodils”より


2021.01.26

紅梅の香に


 木の花は濃きも薄きも紅梅  清少納言『枕草子』


 築山の紅梅が咲き始めました。高校三年生の時に、突然の病で天に召されたひとりの生徒のご両親の思いがこめられたものです。命の尊さについて学ぶ中学一年生の宗教の授業では、必ずこの梅の木の話もいたします。11月の追悼ミサでは彼女のご遺影も飾られ、全校で祈りを捧げます。私自身、生前の彼女に会ったことはないのですが、とても身近な存在に感じています。

 学院が大好きであったという彼女を思わせるように、苗木は本館前の築山にしっかりと根付きました。毎年、青空に映える濃紅梅色と香りが、私たちの目を楽しませ、心を和ませ、学院での生活の一瞬一瞬を大切にするようにと語りかけてくれています。
        

2021.01.18

すくすくと

 学院アーカイブに「すくすく」という名称の寄宿舎からのお知らせが保管されています。現在の「寄宿舎便り」にあたるものですが、異なるのは、「すくすく」が寄宿舎の先生方と寄宿生とで一緒に発行されていたという点です。

 1982年3月16日に発行された記事の中に、発刊当時、寄宿舎の主任であったシスター菅野敦子の次のようなものがありました。


 草花がそうであるように、春先には、様々に込められた人の「念」の種子が蒔かれるものです。いつしか芽を出し、開花し、実を結ぶ日を期待しつつ、生徒の歩みを見守りたいもです。



 学院も年度の終りに向かう中、私自身は高校3年生との面接を終え、中学3年生との面接に入っています。一人ひとりの生徒に込められた神様の「念」の種子が花開くようにと願いつつ、成長の軌跡に耳を傾けています。

 

2021.01.12

早春の香り

  キャンパスのあちらこちらに、春の季語とされる蕗の薹が顔を出しています。雪の多い地方では、白い雪の下に緑鮮やかな蕗の薹ですが、ここ富士の裾野では枯葉の下に隠れていることが多いです。そこにあると知らずに踏まれても、育ちゆくたくましくさ。古来、日本では邪気を払うとか、体に刺激や活力を与えるとされ、早春に食卓を飾ってきました。修道院でも、野草独特の苦みを楽しみながら、皆で早春の味覚を楽しみました。


土の香も携へて来し蕗の薹   稲畑汀子


 今日から、学院生活が再開されました。生徒たちの生き生きとした生命力に満ちた姿が学院に戻ってきた様子は、まさに春の到来のようです。多様な地域から生徒がつどっていること等も考慮し、授業はハイブリット型(対面とオンラインから選択できる形)で進めてまいります。多くの学校が再開されるこの時期に、全ての児童・生徒たちがコロナ禍から守られるよう祈ります。

2021.01.05

アーカイブ・ウイングにて

 創基100年を祝う本年度、中学一年生は学院のアーカイブ室で学院史にふれています。過去を思うだけではなく、海外や日本の姉妹校についても学びながら、世界5大陸に広がる姉妹校生と共に歩んでいることをも実感しています。(下の写真は、展示されている姉妹校のグッズを着用している様子)

 コロナによるパンデミックのさなかにも、海外姉妹校に留学する生徒たちの中には、帰国させられることなくお世話してくださった学校も多くありました。この1月以降も、姉妹校留学制度やそれ以外の形態で、一年間の留学に出発する生徒達がいます。

 ニューヨークやパリで働いた岩下清周(不二農園創設者)、ヨーロッパに長く留学した岩下壮一(温情舎初代校長)、そして海を渡って日本にやってきた聖心会のミショナリーのシスターたちによって創られた学院のDNAともいうのでしょうか、どんな状況にあっても、未知なる世界や異文化に開かれたフロンテイア・スピリットは鮮やかに息づいています。