シスター・先生から(宗教朝礼)
2025.05.28
2025年5月28日放送の宗教朝礼から
先週、創立者聖マグダレナ・ソフィア・バラの祝日を迎え、講演会やミサを通じて、人と人とのつながり、そして創立者の思いとのつながりを深く感じられたことと思います。そして、ソフィの思いの中に「時代は変わります。私たちも変わらなければなりません。」というメッセージが残されていますが、今まさに私たちに問いかけられていることだと感じます。
では、現代において、私たちはどのような変化を求められているのでしょうか。時代の変化を示す身近な例として、AI(人工知能)の普及が挙げられます。画像を生成したり、動画を編集したりするAIが、私たちの生活に深く浸透しています。しかし、便利だからといって「ただ使えばいい」というわけではありません。AIが生成する情報が常に正しいとは限らないため、「自分の頭で考える」ことが不可欠です。
先日参加したシステム情報科学に関する講演会で、AIリテラシーについて学びました。AIリテラシーは、主に以下の4つのポイントに集約されます。
1つ目に『AIを理解する力』です。AIがどのように動くの?とか、何ができて、何ができないのか?など、その仕組みや限界を知ることです。
2つ目に『AIを正しく使う力』。単に情報をコピー&ペーストするのではなく、自分の考えを深めるためにAIをどう活用するかを考える力です。
3つ目に『AIが社会に与える影響を考える力』。便利さの裏で、誰かの仕事が奪われたり、差別が生じたりしていないか。私たちが使うAIが、社会にとって本当に良いものかを考える視点が重要です。
最後に、4つ目に『モラル、共感、価値観』です。「自分さえ得すればいい」「楽できればいい」という考え方ではなく、他者を思いやりながらAIを使えるか、という人間としての倫理観が極めて大切になります。つまり、AIリテラシーとは、単にテクノロジーを使いこなすことではなく、人としてどうあるべきかを問う力でもあるのです。
もう一つ、『XKEYSCORE(エックス・キースコア)』という言葉をご存知でしょうか。これは、アメリカのNSA(国家安全保障局)が行っていた、極秘の監視プログラムの名前です。その目的は「Collect it all」――「すべてを集めろ」というものでした。私たちが日常的に使うスマートフォン、パソコン、カメラ付き家電などの私たちが日々使っているものを通じて、人々の情報や行動が密かに記録・分析されていたのです。この事実は、2013年に元CIA(中央情報局)職員のエドワード・スノーデンによって世界中に暴露され、その監視対象には日本も含まれていたと言われています。現代において、インターネットなしの生活は考えられません。しかし、「タブを閉じれば消える」「履歴を消せば安心」と思っていても、実際には見えないところで多くの情報が残り続けていることがあります。インターネットの世界には、私たちの「足跡」が確かに存在しているのです。
「隠れているもので、あらわにならないものはなく、秘められたもので、人に知られず、公にならないものはない。(ルカによる福音書 8章17節)」とあります。この言葉は、どんなに隠したつもりのことも、、やがて真実が明るみに出ることを教えています。
『XKEYSCORE』のような監視プログラムも、スノーデンという一人の人間の行動によって、世界中に知られることになりました。つまり、「誰にも見られていないから何をしてもいい」という考えは通用しないのです。
また、「すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ。(マタイによる福音書 7章17節)」という言葉もあります。インターネット上での私たちの行動も、一つひとつが「種」のようなものです。どのような言葉を使い、何を検索し、誰とどう関わるか。そうした選択が、最終的にどのような「実」を結ぶかを決定するのです。今、私たちに求められているのは、「見られているから正しくする」ではなく、「見られていなくても誠実であろうとする心」ではないでしょうか。技術が進んだこの時代だからこそ、人としての信頼や誠実さが、より一層重要になっていきます。どうかみなさん一人ひとりが、ネットの世界でも、現実の世界でも、良い実を結ぶ人になってください。
今日は、『AIリテラシー』と『XKEYSCORE』について話しましたが、AIやインターネット社会はこれからも進化を続けることでしょう。それらをどう使い、どう関わるかは、私たち一人ひとりの心と行動にかかっています。AIは大量の情報を処理できますが、人の気持ちを感じる力は持っていません。人の表情を読み取り、気持ちに寄り添うことができるのは、人間にしかできないことです。そして、人と人のつながりや、思いのつながりを築いていけるのも、人間にしかできないことだと思います。人間にしかできないことを大切に、AIに振り回されるのではなく、AIと共に良い実を結ぶ人として成長していきたいですね。テクノロジーが進化するこの時代において、あなた自身が人としてどうありたいかを、ぜひ考えてみてください。
A.S.(数学科)