シスター・先生から(宗教朝礼)
2025.05.07
2025年5月7日放送の宗教朝礼から
皆さんは、自分の感情コントロールを上手に行うことができますか?私は今まで感情コントロールが上手くできず多くの失敗をしてきました。小学校の時、友達の誕生日会に招待されました。プレゼントの持ち寄りがあり、他の友達と被らないようにと色々考え、あえて文房具セットや本などを避け、私は手作りのクッキーを可愛くラッピングをしてプレゼントしました。その友達は市販のものの方が好みだったらしく、私のプレゼントは嬉しくなかったようです。その対応に私は傷つき、その場で泣き出してしまいました。理由はどうであれ泣いたらその場の雰囲気が壊れることは分かりますよね。泣いた私に皆が同情し、誕生日会の主役である友達は、保護者の方に叱られ、謝罪を促されその場は台無しです。私は悲劇のヒロインであるかのように扱われ、「私は悪くない」と気持ちが大きくなりその友達に寄り添うことができませんでした。次の日学校へ行くと、誕生日会でこんなことがあったと周囲に知れ渡っており、学校でも私を庇ってくれる友達が増え、その友達との溝は深まるばかりでした。泣かずに解決できなかったこと、謝罪を素直に受け入れその場の雰囲気を元に戻すことができなかったこと、さらに学校で周囲に知れ渡ったとき解決したことを告げられなかったこと、同情してくれる友達にもう大丈夫だから話題にしないでほしいことなどを言えなかったことを後悔しました。
こんなこともありました。高校時代私は電車通学でした。その日は、朝から母に叱られ、家を出てからもイライラしていました。通学を一緒にしている友達に、何か嫌なことがあったのか聞かれたのですが、私自身も母に叱られたことをどうしてこんな引きずっているのか分からず「別に」とそっけない対応をしてしまいました。そうしたらその友達に「その態度何。こっちまで嫌な気分になるんだけど。その態度が続くなら一緒に登校できない」と注意され、その日から数日間通学を一緒にしてもらえなくなりました。一緒に通学しなくなった初めの頃は、「あんなことでそんなに怒る必要がある?」と自分に非があるのにそれを認めることができず、意地を張り、私を無視する友達の態度でさらにイライラがマックスになりました。イライラが収まり自分が悪かったと認めて謝るまでに数日かかってしまいました。これ以外にも私は人間関係において数多くの失敗があります。
自分の感情が上手くコントロールできずに人間関係を上手に築けなかったことや、この言葉を言わなきゃよかった、理由はどうであれ失敗したことを後になって悔むなど、皆さんにもこんな経験があるのではないでしょうか。
私たちは、日常生活を送るうえで、周囲となじみ、上手くつき合おうと努力しています。周囲と上手くつき合うには、その人をより良く知ろうとし、やり取りを繰り返すことにより、お互い分かり合うためにはどうしたらよいか工夫し、その人とのつき合い方を見つけていきます。しかし、相手を知るだけで人間関係を上手に築くことができるのでしょうか。私は、人間関係を上手に築くコツは、自分自身にあると思います。自分は、どういう人間で、どんな時にどのような感情を抱き、どんなことを言いながら毎日を過ごしているのか。自分の口から出た言葉を一番初めに聞くのは自分です。自分の心の中で思っていることが言葉となって表れます。マイナスの言葉ばかり、人の悪口ばかりを言っていれば、自分の心はどんどん荒んでいきます。自分とのつき合いは一生続きます。どんなにつき合いにくい自分でも、どうにか折り合いをつけて、一生上手につき合っていくしかありません。友達とは距離を置くことができても、自分自身と距離を置くことはできないのです。
先日『自己カウンセリングとアサーションのすすめ』『アサーション入門』(どちらも平木典子著)という本を手にしました。その本に載っていた例です。あなたならこのような時どのように声を掛けますか。
「隣の席に座っている友達に黙って机から消しゴムを取られて使われました」
あなたならどうしますか。
その本には、ドラえもんの登場人物を用いて分かり易く対応が描かれていました。
ジャイアンなら「消しゴム返せ」と言って、消しゴムを奪う。
のび太くんならため息をつき、何も言わないで黙っている。返してくれるまでそのまま待つ。
しずかちゃんは「消しゴムを使ってもいいけど、黙って持って行かないで、今度使いたいときには「貸して」と言ってね」とはっきり言う。
ジャイアンは、攻撃的に自己主張をします。自分の考えや気持ちをはっきり言い、相手の言い訳や気持ちを考えず、無視したり軽んじたりして、結果として自分の言い分だけを通して相手に押しつけます。
のび太くんは、非主張的です。自分の考えていることや自分の気持ちを表現できない、しない。自分の考えや気持ちを伝えられないことで、後味の悪い思いや不愉快な気持ちを抱き、言い訳ばかりしてしまいます。
しずかちゃんは、適切な自己表現、これをアサーションと呼ぶそうです。アサーションとは、自分も相手も大切にする自己表現という言葉です。自分の意見、考え、気持ちを正確に、率直にその場にふさわしい方法で表現します。
ジャイアン、のび太くん、しずかちゃんは、極端な例かもしれませんが、どのキャラクターの対応が自分に一番近いと思いますか?
ジャイアン、のび太くん、しずかちゃんは、極端な例かもしれませんが、どのキャラクターの対応が自分に一番近いと思いますか?
人は、失敗や成功を繰り返しながら、ありのままの自分を知っていきます。人が生きていくためには、良い感情だけを味わうわけにはいきません。良い感情や悪い感情など多くの感情を味わうことが自分らしさに繋がり、その体験によって自分の内面が豊かになり、他人の気持ちが分かるようになっていくのです。相手に文句を言ったり、相手に怒りをぶつけたりすること、自分の嫌な気持ちや悪い感情を発散させるだけでは自分の成長に繋がりません。自分の正直な気持ちに気づき、次にそれをどうしたいかを考えることが必要です。その後も嫌な気持ちを味わいたくないのであれば、しずかちゃんのように嫌な気持ちになったことを伝え、次は相手に違う行動をとってくれるように頼むことも必要です。
最後に先ほど紹介した本に書かれていた言葉で締めたいと思います。
「過去と他人は変えられません。他者を変えることはできませんが、自分を変えることはできるし、自分が変われば相手が変わる可能性があります。」
もう一度自分の日々の言動、行動を考えてみてください。
M.D.(数学科)