シスター・先生から(宗教朝礼)
2024.09.05
2024年9月4日放送の宗教朝礼から
おはようございます。1か月以上続いた夏休みも終わり、いつもの日常が戻ってきました。
みなさんは、この夏休みをどのような気持ちで過ごしてきたでしょうか?
これまでの、努力の成果を発揮する時だった人。これからの目標に向けて努力していく人。
あるいは、いつもの日常から離れ、貴重な体験をした人もいるのではないでしょうか。
このような夏休みが終わり、いつもの日常が戻るこの時期は、気持ちが不安定になりやすい時です。
厚生労働省の調べによると、夏休み明けに学校に行くのを嫌がる子どもが増えてくるというデータもあります。
話は変わりますが、私は2年前に認定心理カウンセラーの資格を取得しました。この時に私は、アドラー心理学に出会いました。アドラー心理学といえば、数年前に流行った本で『嫌われる勇気』という本がありましたが、アドラー心理学は、1870年にオーストリアの首都ウィーンの郊外で生まれたユダヤ人のお医者さんアルフレッド・アドラーが始めた心理学です。アドラー心理学が目標としていることは、仲間と一緒に励まし合いながら、自分らしい協力的な生き方を発見し、明るい未来を実現していくことです。人間の一番の欲望は所属をすることであり、自分も周りも幸せな社会を築いていくことを目指しています。
今日はそのアドラー心理学の中から、気持ちが不安定になりやすい時はもちろん、普段過ごしていく時に実践していきたいことを3つ話したいと思います。
一つ目は、「よかった!」を口ぐせにしていきましょう。これは、「たとえ嫌なことがあっても、感謝とチャンスに変えていく習慣をつけていこう」ということです。例えば、家でコーヒーを飲みながら作業をしていたら、コーヒーを絨毯にこぼしてしまったとします。絨毯は汚れてしまうわけですが、この時に「私は世界でいちばんかわいそうな人間なんだ!」と落ちこんでしまっては何も始まりません。そのあと、絨毯を洗濯してきれいにできたのなら、「絨毯がきれいになってよかった!」と考えてみましょう。その絨毯がしばらく洗濯していなかったものだとしたら、なおさら「よかった」ですよね。今のは一例ですが、このように嫌なことがあった時、たとえ小さなことでも「よかった!」と思う習慣をつけて一日を過ごしていけば、自然と毎日が明るくなります。
二つ目は、「3割ではじめよう」です。これはある挑戦を始めるか迷っている時は、たとえ3割ぐらいの気持ちでも、まずは始めてみようということです。何かを始めるか迷う背景には「失敗してしまって恥ずかしい思いをしてしまったらどうしよう」という気持ちがあるからだと思います。でも、分からないことは周りの人に聞いたり、自分で調べていったりしながら達成していけば、自然と実現につながっていきます。実は、やってしまった後悔よりもやらなかった後悔の方が大きいと言われています。このように経験を積み重ねていけば、自分もひと回り成長できるだけでなく、相手を助けられる幅も広がっていきます。
三つ目は、お互いに「勇気づけ」をしていくことです。アドラー心理学において勇気とは、困難を克服しようとする力や協力しながら所属をする力であると言われています。人間は社会的な動物で、社会があってはじめて生きられるのです。そのため、人間の目的は、社会に居場所を作って所属をしていくことなのです。そして、愛し愛され仲間とともに協力していくことが大切なのです。その所属に必要な力が勇気になります。勇気が相手の中にあることを気づかせて、相手が自らの力で歩いていけるように援助していくことが勇気づけなのです。具体的には、相手の行いに対して褒めてあげたり、相手がこれから乗り越えようとしていることに対して応援してあげたりすることがよいとされています。みなさんも声を掛け合ったり、メッセージカードを書いて渡したりしてお互いに勇気づけをしていきましょう。
ここまで3つのことをお話してきましたが、これらのことは、聖心女子学院の教育理念である「世界の一員としての連帯感と使命感を持って、より良い社会を築くことに貢献すること」にも繋がっているのではないでしょうか。他者や社会とのつながりを考えていき、世界がより良くなるために、自分に何ができるか考えていきましょう。今年の学院目標は、「魂を育てる」です。来週には日々の喧騒を離れ、自分を見つめていく時を持ちますが、この時間が自らを深めて、高めていくことで魂を育む時になりますよう願っています。
Y.I.(地歴科・公民科)