シスター・先生から(宗教朝礼)
2023.11.08
2023年11月8日放送の宗教朝礼から
先週は、4年ぶりに来校者の制約なく秋のつどいが盛大に開催されました。恩師の方々や卒業生の皆さん、卒業生の保護者の方など、懐かしい方々にお会いし、たくさんの笑顔を見ることができ、とても素敵な時間を過ごすことができました。青空の下、本館には、秋のつどいの垂れ幕が飾られ、デュシェーン会や母の会などのテントが並び、お客様や生徒及び保護者が所狭しと行き交い、コロナ前には毎年当たり前に見ていた光景が、やっと戻ってきたと感慨深い気持ちでした。大成功に終わった秋のつどいですが、秋のつどいの開催までの道のりはとても長かったことでしょう。おわりのつどいでの委員長のお話から1つ事柄を成し遂げることの難しさ、成し遂げた時の達成感そして感動を在校生の多くの方が感じたのではないでしょうか。
聖心の学校では、より良い社会を構築していけるリーダーシップの育成、すなわち時代は変わっても、置かれた場で周りをより良く変えていける女性の育成を目指しています。将来、どんな立場であってもどんな人の中にいても、その場で光をともせる人となるように、異なる意見に耳を傾ける謙虚な姿勢と相手を尊重しながら共に歩みを進められる資質を育てることを目標にしています。
皆さんは、リーダーシップ、フォロワーシップ、メンバーシップという言葉を聞いたことがありますか。リーダーシップとは、組織を率いる能力、言い換えると組織をまとめ目標達成に向けて行動を促す能力の事です。フォロワーシップとは、リーダーを補佐したり支援したりできる能力かつリーダーに対してしっかりと発言できる能力の事です。メンバーシップとは、組織に所属する一人ひとりが自分の役割を理解し、行動して組織全体に貢献できる能力を指しています。自分自身を振り返り、あなたはこの秋のつどいでどの能力を伸ばすことができましたか。
秋のつどい全体で考えると、秋のつどいの委員長(リーダー)を委員会全体(フォロワー)で支え、全校生徒(メンバー)で秋のつどいを作り上げていくということになります。また、ダンスクラブで例えると、ダンスクラブの部長(リーダー)が存在し、それぞれの曲やダンスをメインとして考える部員(フォロワー)がリーダーを支え、部員(メンバー)が秋のつどいでの発表の成功に向けて一丸となって活動していくということになります。
メンバーシップ、フォロワーシップを経験せずにリーダーシップを養うことはできません。あらゆる場面で上級生は、中学1年生から様々な経験を経て成長しリーダーシップを発揮します。
では、リーダーの資質を伸ばすためには具体的にどのような力が必要なのでしょうか。
目標を達成するためには、テーマ設定が必要です。秋のつどいは“蘭”、ダンスクラブのテーマは“Restaurant de Bouquet”でした。そのテーマに沿ってアイディアを出し合い、全体のプログラムを考えていきます。一人の意見でプログラムが決まるわけではないので、この時点で、相手の意見を傾聴したり、共感したり、質問をするなどして、コミュニケーションを図っていきます。コミュニケーション力と能力を一つにまとめてしまうこともできますが、その中には、傾聴力、共感力、質問力、承認力など多くの力が必要になります。次に、ダンスを教える時にも力が試されます。メンバーの育成能力、洞察力に観察力、判断力など多種多様な力が必要になります。言葉一つ掛けるときにも能力が必要になります。このような様々な能力を短期間で発揮できる人はほとんどいません。能力を発揮するには、時間と経験が必要です。中学1年生から様々な観点で物事を見て、考え、相手の真似をする。真似ができるようになったら、自分なりの表現に変えていく。このとき一番大切なのは、物事を柔軟に吸収する素直な心です。
さらに、あなたはどのようなリーダーについて行こうと思いますか。頭ごなしに発言する自分勝手なリーダーやいい加減なリーダーでは、集団をリードしていくことはできません。
リーダーシップの研究者ロバート・K・グリーンリーフは、サーバントリーダーシップという考え方を提唱しています。サーバントリーダーシップとは、「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くもの」「真のリーダーは、フォロワーに信頼されており、まずメンバー一人ひとりに奉仕することが先決である」ということを指しています。言い換えると、彼の提唱しているサーバントリーダーシップとは、奉仕や支援を通じて、周囲から信頼を得て、主体的に協力して貰える状況を作り出すということです。メンバーの立場に立って考えること、物事をありのままに受け入れること、メンバーの声に謙虚に耳を傾け、全体のためにより良い選択ができるように見守り、助言していくことが必要だと説いているのです。
私は、体験・経験に勝るものはないと日々思っています。やらされているうちは自分にプラスとなるものは何もありません。自分から率先して行う、諦めずにやり遂げる、学校生活の中には成長の種となる事柄が沢山あります。しかし、その種を掴み自分の中で育てることができる人はごく一握りです。多くの人が、種を与えられても自分の中で育てることができなかったり、さらにはその種の存在にすら気付けなかったりしています。日々の過ごし方、生活の仕方で、その後の成長が大きく変わってくるのです。
あなたはこの秋のつどいで何を学びましたか。もう一度考えてみてください。
M.D.(数学科)