シスター・先生から(宗教朝礼)

2023.04.26

2023年4月26日放送の宗教朝礼から

  おはようございます。これから宗教朝礼を始めます。

 今日は2つの話をしたいと思います。
 まず1つ目です。みなさんは、きのしたあつこさんの「はんぶんあげてね」という絵本を知っていますか?これは、私が小さい頃に何度も読んだ 大好きな絵本です。
 主人公のくまの子のところに、おばあちゃんから大きなパンが届きました。「お友達ののぞみちゃんにも半分あげてね。」というお手紙付き。
森を通り抜けてのぞみちゃんのお家に行くまでに、くまの子はたくさんの動物たちと出会い、その度に「半分あげるよ」と言って、パンを渡しました。
すると、のぞみちゃんに渡す分がなくなってしまいました。
くまの子は家に戻り、今度は自分のパンを更に半分にして、のぞみちゃんのところへ届けるというお話です。
「1つのパンを分かち合う。」
 これは、先週20日に行われた新年度祈りのつどいに重なる部分があるのではないでしょうか。
今は感染症対策として、パンの分かち合いはしていませんが、本来は1つの大きなパンをクラス全員で分かち合います。
クラス目標をお捧げし、1つのパンを皆でいただくことで、私たちが仲間として繋がっていることを強く実感することができる大切な行事です。
 近年、パンを分かち合うことができないからこそ、今一度、一人一人が「繋がり」を意識することができたらいいなと思います。
 
 また、くまの子は目の前にいる人だけでなく、目の前にはいない人のことも考え、自分の大切なものを半分ずつ渡していき、その結果、自分の分まで減ってしまいました。一見、損をしているように感じるかもしれませんが、誰かのために尽くす喜びを知ることができたら、より豊かに生きることができるのではないでしょうか?
例えば、みなさんは教室や学校の物を利用する際「次」の人のことを考えて、元の状態に戻していますか?自分が使うときに綺麗だといい気持ちになりますよね。
具体的には、お手洗いが綺麗な状態だったり、朝、教室の黒板がピカピカだったりすると、いい気分で1日を始められそうな気がしませんか?
 誰かが「嫌な思いをしないように」ではなく、「嬉しい気持ちになるように」を意識して行動してみること。
 これができる人はより豊かに生きられるのではないかなと思います。
 私自身もこれを意識し、行動できる人でありたいです。
 目の前にいる人、見えない「次」の相手が嬉しい気持ちになる行動は、先ほどの例だけでなく、日常にたくさん溢れています。
 まずは今日1日、何かひとつでも誰かが喜ぶ行動は何かを考え、実践してみてはどうでしょうか?

 次に2つ目の話です。よく「目標に向かって頑張るその過程が大事だ」と耳にします。私もそうだと思います。
ですが、「結果」だけで決まることがあることも、また事実です。実際、私もそういった場面を何度も経験してきました。
大学生時代、私はピアノを専門に勉強していました。
定期的にある実技試験や演奏会に向けて、1日に何時間も練習をしました。
ですが、練習時間に比例して実力が身につくわけでもなく、前の日より上手く弾けなくなる日も多くあり、好きで始めたピアノですが、いつの間にか「何のために頑張っているのか」、「この練習に意味はあるのか」などと考えるようになり、苦しくて逃げたくなることもありました。
 いくら練習を重ねて、どれだけ練習の時に上手く弾くことができても、本番1回で全てを出し切ることができなければ、それで終わりです。2回目、3回目はありません。
それでも、誠実に向き合い続け、全力で努力するその過程は、確実に今の自分の糧になっています。残念ながら、その時は「結果」として返ってこなかったこともありますが、「過程」の中で学ぶことはとても多く、あれだけ苦しいことを乗り越えてきたのだから頑張れる!と思うこともあるので、自分にとって大事な「過程」だったのだと確信しています。
 来月は体育大会です。ダンスや競技など、様々な練習や準備を進めている、またはこれから始める人もいると思います。
本番は1度きりです。どれだけたくさん練習をしても、たとえ練習では完璧にできたとしても、本番で上手くいかない、そんなときもあります。秋のつどいやクリスマスキャロルも同じです。どれだけ練習しても、本番は限られています。
そこで力を十分に発揮できなければ、目に見える「結果」として返ってこないこともあるかもしれません。
もし、そうなってしまったとしても、やはり、それまで過程や頑張った時間、努力したという事に価値があります。それは間違いないことです。
 ですが、本番一発勝負で出すべきものを発揮するというのも実力の1つであり、生きていく上で大切な力の1つだと私は思います。その力によって自分の選択肢をより多く持てることにも繋がるのではないでしょうか。
 では、本番で自分の力を十分に発揮するためにはどうしたらよいと皆さんは思いますか?
私は、やみくもにピアノの練習を続け、腕を痛めてしまったことがあります。練習したいのに思うようにいかなくて葛藤している時、尊敬している先生から「このまま練習を続けても良い音が出るようにはならないから、一旦ピアノから離れて、楽譜をじっくり読みなさい。作曲家の本を読みなさい。」と言われました。
その時の私は、練習しないと仕上がらないのに!と思っていましたが、今振り返ってみると、その時間はとても大切なものでした。ひたすら練習するのではなく、時には少し離れて、客観的に見ること、今の自分にできていることと、できていないことを分析し、どうしたらよいのかを考えながら努力を積み重ねること、その過程に大きな意味があると思うのです。
体育大会や秋のつどい、クリスマスキャロル、定期試験、それ以外にも、日々の生活の中で、みなさんは力を発揮しなければいけない場面に遭遇することが何度もあると思います。ただやみくもに頑張るだけでなく、一度手を止めて、深呼吸をして、「頑張り方」を考えてみませんか?
 みなさん一人一人が、本番で力を十分に発揮し、多くの選択肢と、様々な思い出を胸に、より豊かな人生を送れることを心からお祈りしています。
これで宗教朝礼を終わります。
H.S.(芸術科)