シスター・先生から(宗教朝礼)

2022.04.27

2022年4月27日放送の宗教朝礼から

 おはようございます。これから宗教朝礼をはじめます。

 ロシアがウクライナに侵攻を開始したのは2月24日。早2ヶ月が経過しています。連日、さまざまなメディアで取り上げられる報道に、ウクライナとロシアについての話題がない日はありません。目を背けたくなるような映像や、耳を疑いたくなるような情報に、胸が痛くなることもしばしばです。今私達はこのような中にあり、世界ではさまざまな形で支援と平和を願う祈りが広がっています。
 『てぶくろ』と『おおきなかぶ』という絵本を皆さんはご存じですか?ウクライナ民話を元に書かれた『てぶくろ』とロシアの昔話絵本である『おおきなかぶ』は共生と助け合いをテーマに書かれた日本でも長く読み継がれてきている翻訳絵本です。今回のロシアのウクライナ侵攻後、全国の図書館や書店では平和を願う形の一つとして、今起こっている世界情勢を考える助けとなるように、戦争や平和についての絵本が多く紹介されるようになりました。それらの本と共に、『てぶくろ』と『おおきなかぶ』の絵本も両国の平和を願って並べられることが増えています。
かつての戦争は、国家と国家が争うもので基本兵士が前線で戦っていたと言われています。しかし、現代の紛争では、民間人、中でも多くの子供達も犠牲になっています。
 ドイツの児童文学作家にイエラ・レップマンという女性がいます。ナチスの台頭とともに英国に移住し、第二次世界大戦後ドイツに戻った彼女は、多くの子供達が犠牲になっている現状を目の当たりにし、素晴らしい子供の本は人々が互いに理解し合うための架け橋になる、と信じ戦後のドイツから子供の本で平和をつくろうと世界に呼びかけました。レップマンは、世界各国から送ってもらった子供の本による図書展をドイツで開き、1949年には世界で初めての国際児童図書館となるミュンヘン国際児童図書館を、次いで1953年には子供の本に関わる世界的ネットワークとして国際児童図書評議会(IBBY)を創設しています。1998年9月にインドのニューデリーで開催された国際児童図書評議会世界大会では、レップマンが創設したミュンヘン国際児童図書館の企画で平和を想う国際絵本展「ハロー・ディア・エネミー!」展が同時開催されています。インドで行われたこの絵本展は、翌1999年、平和と寛容の国際絵本展というサブタイトルがつけられ、日本国内での巡回展示が始まり、縁あって不二聖心でも開催されました。展示会では、世界の絵本約80作品が紹介され、直接戦争の恐ろしさを語る絵本というよりも、寛容こそが世界中の国と国、民族と民族における平和的共存を可能にするというメッセージをユー モラスに伝えた本が多く紹介されました。
 その絵本展で紹介された本の一冊に、展示会の題目の元となったドイツの絵本『ハロー・ディア・エネミー!~こんにちは敵さん さよなら戦争~』という本があります。物語を想像しながら聞いてください。
 川を挟んだ二つの山がありました。その一方には白い馬に乗った青軍の将軍が、もう一方には、黒い馬に乗った赤軍の将軍がいました。青軍の将軍は、向こうのやつらはゾウのように長い鼻で毒をまきちらすから撃てと命令します。赤軍の将軍は、向こうのやつらは額に角があり突き刺すから撃てと命令します。その後、大砲の音を聞いた将軍の乗った馬が驚き、それぞれの将軍を振り落とし逃げてしまいます。逃げた馬は、川の真ん中で出会い、馬を捕まえにやってきた兵士達も川で出会います。そこで、兵士達は将軍から聞いていた鼻が長い、とか角がある、という相手の特徴が嘘であったことに気が付きます。また、川に入るために軍服を脱いだため兵士達は青軍か赤軍か分からなくなります。敵か味方か分からなくなった兵隊達は思わず大笑いし「ハロー・ディア・エネミー!」(こんにちは、敵さん!)とあいさつを交わします。そこで軍隊は解散、戦争は終結する、というお話です。
 絵本ではシンプルにその内容が表現されていますが、この話には、自分と違ったものへの偏見から始まった戦争は、理性を働かせ物事を知る事、考える事によって争いが解決できるというメッセージが込められています。なぜ戦いが起こるのか原因を知ること、そしてその原因となるものは自分の中に潜んでいるかもしれないことを考えること、寛容、つまり人を許し受け入れ、咎めだてしない、自分とは異なる存在に対して一定の理解を示し許容する態度を示すこと、平和であるためにはどうあればよいかを考える数々の絵本が「ハロー・ディア・エネミー!」展では紹介されていました。これは、私たちの身近な日常の出来事にも置き換えられる内容ばかりです。物語に登場する敵を、今上手く行かない事やすれ違ってしまう身近な友人、家族とも置き換えて考えることができます。日常生活における平和とはどのようなものなのか、どうすればよりよい毎日になるのかを少し身近に考えることができるのではないでしょうか。
 新しい学年になって一ヵ月が過ぎようとしています。先週の新年度祈りのつどいでは、クラス目標を神様にお捧げしました。今という時間を大切にして、よりよく過ごそうという意識を持つことは、この瞬間から一人でもできる大きな社会貢献とも言えます。一人一人がクラスの一員として、学院の一員として、聖心の一員として、そしてこの地球の一員として、果たせることは何かを考えて大切に日々過ごしていきたいですね。
 最後に『あなたの一日が世界を変える』という本から、今日が輝く「10の問いかけ」をお伝えして今日のお話を終わりにしたいと思います。
・あなたは、今、笑顔ですか?
・あなたにとって、たいせつな人はだれですか?
・あなたが、たいせつな人のためにできることは何ですか?
・あなたが、他の人や社会のためにできることは何ですか?
・あなたは、自らの良心にしたがって行動することはできますか?
・あなたは「気づき」をたいせつにしていますか?
・あなたは、素直な心で「ありがとう」が言えますか?
・あなたは、どんな人になりたいですか?
・あなたは、どんな一日を過ごしますか?
最後にもう一度
・あなたは、今、笑顔ですか?
これで宗教朝礼を終わります。
A.T. (図書館)