シスター・先生から(宗教朝礼)

2021.07.14

2021年7月14日放送の宗教朝礼から

 おはようございます。これから宗教朝礼を始めます。

 突然ですがなぜ動物はコミュニケーションをとるのか考えたことはありますか?とり方は動物によって異なります。羽を広げたり、においを嗅いだり、体の色を変えたりと様々です。私たち人間は言葉を使って会話をします。なぜ会話をするのでしょう。この1~2年で、急激に成長している情報化社会、IT社会の中で私たちは、リモートワーク、Web会議やオンライン授業、海外の方々ともすぐに繋がることができるようになりました。しかしそれと同時に、出かけることがなくなり、予期せぬ人と出会って、気軽に話す機会が減ってきていると感じることはありませんか?私は、人との会話から得られるものは、とても重要で、大切な情報源だと思います。いろいろな人との言葉から実は、自分という人間の価値みたいなものに気付かされていることが多いのです。 
 自分の得意・不得意を知っているというのもいろいろな人との会話によって気付くのではないかと思います。会話をするということは普段何気なくしていることだと思うのですが、実はとても大切なことなのです。でも会話をするのが苦手と思っている人はいませんか。なぜなのでしょう。
 ここ数年前から「多様性」という言葉をよく耳にすると思います。今まで出会ってきた人に対して、皆さんは、この人はこんな人、あの人はあんな人、と自分の先入観の中で線を引いて枠組みをしていませんか?あの人だったらこんな風に言うに決まってる、私があの人にこんなことを言ったら、きっとこう言われるに決まってるなどと、相手のある一面だけを見ていませんか?
 皆さんは伊藤亜紗という女性をご存じでしょうか?
彼女は、東京工業大学の准教授で、障害というある種の制約を抱えた方々の研究をしている人です。彼女は、ひとはそれぞれ性別や生まれ、育ち、学歴、容姿、キャリアなどのいろいろな条件を抱えて生きていますが、それらのせいで不利な状況に陥ったときどうしたらいいかという問いに対して次のように考えていらっしゃいます。『そういうときにこそ発想を転換し、抱えてしまった条件を楽しむ視点を持つ。つまりその問題を解決するためには「おもしろがること」が大切』と考えておられます。ご自分の著書「目の見えない人は世界をどう見ているのか」の中で、視覚障がい者の方と健常者の方との間で、ものを「見る」ということの捉え方の違いについて分析しています。この本の中で彼女は視覚障がい者の方たちにたくさんのインタビューやワークショップを行いながら、彼らを知ろうと̪しています。彼女が出会った、全盲の方おひとりおひとりとたくさんの会話やたくさんの行動をして一人ひとりの多様な側面を見つけ出そうとしています。一人の中にひとつでも多くの表情を見つけることにより、その人に、どの側面から関わっていけばいいのか、お互いにとってたくさんの選択肢を持つことが出来る、と彼女は考えているのです。
私は、小学6年生の時に、同じ学年の友人10人くらいで、放課後に集まって自分たちでストーリーやセリフを考えて台本をつくり練習し、学校の近くにあったボランティアセンターで短い劇を見て楽しんでいただくということをしていました。見に来て下さった方々は、車いすの方、聴覚に障害のある方、視覚に障害のある方などがいらっしゃいました。みんな優しい笑顔と拍手とそして終わった後に「ありがとね、楽しかったよ」とおっしゃってくださっていたのを今でも覚えています。でも、その時私はまだ小学生だったので、「見えない」「聞こえない」のにな・・と、勝手に考え、どんなところが一番楽しいのか、どんなお話を次見たいかなどと質問することが出来ませんでした。でも違ったのです。感じる方法、見る方法が違うのです。伊藤亜紗さんは、何人もの障がいを持つ方々にインタビューをして、彼らが私たちと違う方法で、「見ている」ことに気付かせてくれました。
皆さんは、人と話をするときに、どんなことを考えながら話をしますか?相手の表情を伺ってしまう人もいるのではないでしょうか。もし会話をしながら相手が、難しそうな表情やため息をついたりこちらを見てくれなかったりしたらどう思いますか?「この話は聞かない方がいいのかな」ととっさに判断して、会話をそこで止めてしまう人もいるかもしれません。逆にほほえみながらこちらを向いてうなづいて聞いてくれらどうですか?話す側の人もきっと笑顔になり、やさしい空間に包まれていくと思います。そんな空気に囲まれていくと自然と会話が増え、その人の中のいろいろな表情を見つけていけると思います。多様性に気付くようになると自分とは違う立場や違う考え方の人の見方・考え方も理解できるようになり、性や身分、国籍などの壁を超えて自分の意見を伝えられる、また聞けるようになっていけると思います。ですから一人の人の中の多様性を発見してほしいのです
お互いに思ったこと、感じたことを、素直に発言しあえる環境、また自分の気持ちを受け入れてもらえる安心感のある仲間や、聞き入れていける、聞き入れてもらえる社会・体制を作っていける私たちでありたいと私は思います。皆さんはどう思いますか。
これで宗教朝礼を終わります。
Y.M.(数学科)