シスター・先生から(宗教朝礼)

2021.02.10

2021年2月10日放送の宗教朝礼から

  高校3年生は、最後の祈りの会を終え、中1から高2は、来週祈りの会を迎えます。ふとした時に、神父様のお話を思い出すのですが、昨年・今年と中1の担任をしているせいか、林神父様のお話はもちろんのこと、長い間、中学1年生の祈りの会をご担当下さり、今は神様の元に戻られた馬場神父様のお話をよく思い出します。神父様は、童謡の「ぞうさん」を用いて、お話しくださいました。「ぞうさん、ぞうさん、お鼻が長いのね、そうよ母さんも長いのよ」という、皆さんもよく知っているあの歌です。一般的には、子どもの象さんが長い鼻をほめられて、そうだよ、母さんも長いんだよ、と嬉しそうに答えているほのぼのとした情景を描いている、と解釈されるこの歌ですが、本当はそうではないのだ、と神父様はおっしゃいました。これは、「君は僕たちと見た目が違う」とからかわれた象さんが、卑屈にならずに「そうだよ、母さんも長いんだよ」と胸を張っている様子を描いた歌であり、自分の個性を受け入れ、自信をもって生きる子象の前向きな姿を描いているのだ、と教えてくださいました。そして、長所と短所は表裏一体のものだから、短所をなくそうとすると、長所もなくなってしまう、だから、短所をなくそうと思わなくてよいのだよ、とお話しくださいました。例えば、優柔不断な人は、裏を返せば慎重な人だ、というのはよく言われる例でしょう。自分の苦手を知り、そこから生じるリスクを少しでも減らそうと努力することは、社会生活を送る上で確かに大切なことですが、自分の短所に落胆し、自信を失いがちな私たちにとって、神父様のお言葉は大きな救いになりました。長所だけでなく短所も含めて、ありのままの自分を大切にすることを、神父様は教えてくださいました。

 
さて、話は変わりますが、今回宗教朝礼で何を話そうかと、切り抜き記事などを読み返していた際に、佐々木恒夫という方が書かれている「ビジネスマンのための『論語』入門」というコラムに、ご紹介したいものがありました。これは5年以上前の記事ですが、来年の大河ドラマの主人公であり、新1万円札の顔となる、渋沢栄一氏について触れています。まず、孔子の書いた『論語』の一節からコラムは始まります。
  「子曰く、我れ三人行えば必ず我が師を得(う)。其の善き者を択びてこれに従う。其の善きからざる者にしてこれを改む」以下、佐々木氏の解説です。
「この章句は三人で行動をともにすればその中に必ず自分の手本とすべき者がいる、善い人を選んでそれを見習い、善くない人を見てその善くないところを自身について直しなさいと、言っている。人格向上のお手本はいたるところにあるので一人の無駄もなく自分の成長のために役立てなさいというおそろしく貪欲な孔子の教えである。我々凡人は特別に目立つ優れた人には注目し、自分の手本とすることには熱心だが、それほどでない人にはあまり関心を持たない。しかし人にはそれぞれさまざまな長所がありそれを吸収することは自分の成長に役立つのだ。明治の経済人、渋沢栄一は好奇心の塊のような人物で、どんなことにも、どんな人にも興味をもってそこから学ぼうとしたという。京都で徳川慶喜(よしのぶ)に仕えた時は、様々な人に繰り返し質問し教えを請い学んでいったという。また、ヨーロッパ訪問団の一員になった時、そのメンバー全員に興味を持ち、その一人一人から学んだという。パリでは住居の賃貸契約に興味を持ち根掘り葉掘りそのしくみを訊いた。また下水道のシステムに驚き、どうなっているかを地下に潜って調べたという。普通の人を自分の師にしてしまうという姿勢になれるのはその人の中に誰からでも学ぼうとする謙虚さがあるからだ。謙虚さと好奇心を持ち続けることが自分の成長の原動力である」
と、佐々木さんは述べています。

年度末が近づき、このクラスのメンバーと過ごせる日も、残り少なくなりました。自分の個性を長所も短所も前向きに受け止めるとともに、祈りの会での神父様のお話や、周りにいるたくさんの師ともいえるクラスメートから、多くの善いことを学び成長していきたいですね。

J.N.(英語科)