シスター・先生から(宗教朝礼)
2020.05.27
2020年5月27日の宗教朝礼から
おはようございます。これから宗教朝礼をはじめます。
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、私たちの生活様式は大きく変わってしまいました。密を避け、人との物理的な距離をとるソーシャルディスタンシングが求められています。学院でも3月2日より臨時休校となり、授業や面談はオンライン化しましたね。先生たちは職員室での密を避けるため、各教室に分散して仕事をしています。必要な連絡はチャットでやり取りをして、昼食も個々に沈黙で食べています。こうした生活の中、この先どうなるのだろうと、戸惑ったり、不安に思ったりもしました。皆さんの中にも同じような気持ちを抱えて、この3カ月を過ごした方もいるのではないでしょうか。私は初め、人との「つながり」が弱まって本当に世界が変わってしまうのではないかとも思いました。しかし、このような生活の中で気が付いたことがあります。
不二聖心には茶草場と呼ばれる草地があります。毎年秋から冬にかけて、茶草場の草は刈り取られ、お茶畑の畝間に敷かれます。草を敷くことによって、お茶の品質が良くなると言われています。この作業によって、茶草場は「半自然草地」という環境が維持されています。「半自然草地」には草地特有の植物や昆虫などの生物が生息し、生物の多様性が見られます。人々の生活の変化に伴って、このような草地環境は減少しており、今や絶滅の危機に瀕している動植物も多くいます。私は休日に定期的に不二聖心の茶草場に来て、自然観察をしています。この春も毎週のように茶草場を歩き、動植物を観察しました。
気温が上昇するにつれ、植物は芽を伸ばし、小さな虫たちも活動を始めていきます。週ごとに少しずつ花が咲き始めました。サクラが咲いたころにはフデリンドウやスミレの仲間がそこかしこで咲いていました。休眠から目覚めたツチイナゴは枯草から飛び出し、ハチやチョウの仲間は花から花へと飛び回っていました。植物も昆虫も、春の訪れを喜んでいるようでした。茶草場という環境の中で皆互いに密接にかかわりあって、いつも通り生活を営んでいます。そしてその風景を見ていると、私が感じていた不安な気持ちが解消されていくのを感じました。そこで、はっと気が付きました。茶草場では人と自然、また、そこに生育する生物同士の「つながり」によって生物多様性が保たれています。コロナ渦の生活で、人との「つながり」が弱まってしまうと感じていた私は、周囲の状況を近視眼的に見ていただけなのかもしれません。教皇フランシスコが『回勅ラウダート・シ』の中でアッシジの聖フランシスコについて「彼は、被造界全体と心が通じ合っており、花々にさえ、「まるでそれらに理性があるかのとうに、・・・・・・主を賛美するよう」説きました。(中略)それは、あらゆる被造物の一つ一つが、彼にとって、愛情のきずなによって結ばれた姉妹であったからです。」と述べてる箇所が思い出されました。人と自然とのつながりによって維持されている茶草場の生物多様性から、その奥にある創造主である神様とのつながりをも感じたように思いました。神様に愛されている私たちのつながりは、マスクやソーシャルディスタンシングで弱まるものではありません。今日から段階的な登校が始まります。学校に登校する方も、自宅からオンラインでの参加を続ける方も皆、聖心の家族として強い絆でつながっています。そのことを心にとめ、これからも生活していきましょう。これで宗教朝礼を終わります。(理科 H.M)