シスター・先生から(宗教朝礼)
2018.02.21
2018年2月21日放送の宗教朝礼から
宗教朝礼を始めます。先週の土曜日に高校3年生が不二聖心を卒業しました。いろいろな場面でお世話になったり、助けてもらった方も多いと思います。今まで当たり前のように一緒に過ごしていた人が急にいなくなってしまうのは本当に寂しいと思いますが、これからは高校3年生から学んだことを引き継いで、残った在校生が不二聖心を支え特に高校2年生は最上級生として全体を引っ張っていって欲しいと思います。
ところで皆さんは池井戸潤という作家を知っていますか。最近テレビで「陸王」というドラマが放送されていましたが、その原作を書いた人です。この人は旧三菱銀行に勤務した後、作家に転身しました。作品には自らの経験を題材にした銀行を舞台にした内容が多いです。私はこの作家の作品が好きでよく読みますが、たまたま、中学1年松組の学級文庫の中にも池井戸潤の「アキラとあきら」という本があり読んでみました。この作品はDVD化もされています。
あきらという同じ名前の大きな郵船会社の社長の息子と零細企業に勤める父を持つ息子が主人公で、社長の息子は恵まれた環境で何不自由なく大切に育てられ、社長の跡取りとして期待されます。一方もう一人は父親の会社が倒産して家を追われ親戚に預けられ大好きな犬とも離ればなれになり、貧しい生活を強いられます。大学進学も諦めかけますが、親切な銀行員がその父親を支援して小さな会社を建て直し、なんとか大学に進学します。その後社長の息子は親の跡取りになることを拒否して銀行に就職し、同じ銀行の行員になった貧しい家庭で育ったもう一人のあきらと出会います。就職後二人とも社会での理不尽なことや矛盾と戦っていくお話しです。
ある時、貧しい家庭で育ったあきらが勤務する銀行の取引先の会社の資金繰りが行き詰まって倒産しかけます。銀行の上司は直ちに担保の不動産や預金の差し押さえを指示します。しかし取引先の会社の社長には、重い心臓病を持った幼い娘がいて、生きるための移植手術を海外で受けるのに数千万がかかるため、必死に集めた手術費用を別の銀行に預金していました。銀行がその預金も差し押さえようとした前日に貧しい家庭で育った銀行員のあきらが人として正しいこと、銀行員として正しいことどちらを選択するか悩みます。もし、預金が凍結されれば手術が出来ず幼い娘が死んでしまうかも知れないが、預金を引き出させれば、業務規則に反し銀行員としての将来がなくなる。自分の父親に電話をして、自分はどうすべきか相談します。その時、父親は自分が正しいと思ったことをしろとアドバイスします。そして手術費用のための預金を差し押さえる前日に早くお金を引き出すよう取引先の社長に伝えてしまいます。そして翌日、銀行は担保の預金を引き出せなくなり多大な損害を被りました。そのことが上司にも伝わり、あきらは日本橋支店から地方の支店に左遷され、出世の道を絶たれました。
皆さんはこの話しを聞いて、どう思うでしょうか。自分が同じ立場だったらどうしたでしょうか。どうするべきか正解はありません。この行為について、賞賛する人もいれば非難する人もいるでしょう。
皆さんが社会に出た時にも、このような判断に迷う場面が何度か出てくるでしょう。いずれはみんな学校を巣立って社会に出て行きます。その時により良い判断が出来るような価値観をこの不二聖心で学んでいって欲しいと願っています。これで宗教朝礼を終わります。
J.K.(数学科)