シスター・先生から(宗教朝礼)

2017.10.18

2017年10月18日放送の宗教朝礼から

  おはようございます。これから宗教朝礼を始めます。
皆さんは、コミュニケーションは得意ですか。お友達との付き合いや、家族とのやり取りで、うまくいかないと感じていることはないでしょうか。あるいは、自分はうまくいっていると思っていても、相手はそう思ってくれていないということもあるかもしれません。
かく言う私も、コミュニケーションや人付き合いが苦手な方です。例えば、私が中学三年生のころ、いよいよ卒業も間近というころでしたが、それまで仲が良かったと思っていたグループの人たちと、些細なことで喧嘩をし、1か月も口を利かず、そのまま卒業してそれっきりということがありました。今思うと、自分の思いを我慢しながらそのグループにいて、ついにそれが我慢できなくなってしまったのだと思います。もちろん、口を利かなかった1か月の間に仲直りをするチャンスはあったと思いますが、そのチャンスを生かすこともできませんでした。自分の思いに正直になって、それをうまく相手に伝えることができなかったのです。言い換えると、相手と自分を大切にする自己表現ができていなかったと思うのです。
では、なぜ相手と自分を大切にする自己表現ができなかったのでしょうか。大人になって気が付いたことは、相手と自分を大切にする自己表現にはトレーニングが必要だということです。多くの人は自己表現は生活の中で自然に身につくもので、特別なトレーニングは必要ない、愛情や相手を思いやる心があれば十分だと信じているかもしれません。
不二聖心に通う皆さんは愛情豊かで、思いやりのある方々だと思います。それでもほとんどの方がお友達や家族との関係で悩んでいることがあるのではないでしょうか。今まさに悩んでいるという人は、もしかすると、自分は愛情や思いやりが足りない人間なのではないかと自分を責めたり、逆に相手は愛情のかけらもないひどい人なんだと感じているかもしれません。しかし、そうではありません。悪意のある人だけが相手を傷つけるのではなく、そもそも相手と自分を大切にする自己表現には愛情と思いやりだけでは不十分で、トレーニングが必要なのです。トレーニングをすれば誰でも身につけることができます。
では、皆さんが普段どのような自己表現をしているか、簡単なテストをしてみたいと思います。今からいう5つの場面に出会ったとき、あなたはどうするか、そのあとのA~Cの中から1つ選んでそれぞれメモしておいてください。


場面1
友達に貸した本が、汚れて帰ってきました。あなたはとても嫌な気持ちになりました。
A 「なんで汚すの!?弁償してよ!」とはっきり言う。
B 汚れは気になるけど、何も言わないで我慢する。
C 「汚れているけど、どうしたの?」と訳を聞く。

場面2
学校帰りに急に友だちに「今日遊ぼうよ」と誘われました。あなたは、今日は体調がよくないので遊びたくありませんが、繰り返し誘われました。
A 「今日は絶対嫌!」とはっきり断る。
B 遊びたくないけど、相手の気持ちを気にして「うん、いいよ」とOKする。
C 「今日は遊ぶ気分じゃないからごめんね」と理由を言ってことわる。

場面3
友だちが、「〇〇さんてひどい人だね!そう思うでしょ?」とあなたに聞いてきました。あなたはそう思っていません。
A そう思わないので、「ぜんぜん!」と、はっきり言う。
B そう思わないけれど「うん、そうだね」と、友だちに話を合わせる。
C そう思わないので「そうかな?どうして?」と、理由を聞く。

場面4
先生に、係の仕事を頼まれましたが、やり方がよくわかりません。
A やり方がわからないので「むりです!」とはっきり言う。
B なにもいえないか、先生から言われたのだからと思い「はい」と言ってひきうける。
C 「よくわからないから、教えてください」と先生に説明をお願いする。

場面5
グループで調べ学習をしています。その中の一人の子が、参加しないで勝手に遊んでいます。あなたは、「協力してやってほしいな」と思っています。
A 「どうして、ちゃんとやらないの!?」と強い口調で文句を言って、ちゃんとやるように言う。
B ちゃんとやってほしいけれど、なにもいえない。他の人が言ってくれるのを待っている。
C 「協力してやる学習だから、〇〇を分担してくれる?」と説明して、友だちに協力してほしいことをいう。

さて、どうでしょう。A~Cのどれが一番多かったですか。

Aの表現を攻撃的自己表現といいます。
確かに自分の言いたいことははっきり言っていますが、相手を大切にする言い方が少ないです。相手を怖がらせたり、傷つけたりすることがあります。明らかに攻撃的な表現のほかにも、丁寧で優しい言葉や態度でも相手を思い通りに操作するとしたら、攻撃的自己表現です。雑談での押しつけがましいダメ押しや不必要なひと言などもあてはまります。このような表現は相手と喧嘩になったり、まわりから敬遠されて孤立したりすることがあります。


Bの表現を非主張的自己表現といいます。
一見、相手に合わせることで、トラブルなく、うまく過ごしているように見えますが、自分の気持ちや考えは押し殺したままなので、ストレスが溜まります。さらに、自分は我慢して譲ったつもりでも、相手にとってみれば、快く譲ってくれた、同意してくれたと感じていることもあるので、さらに不満が大きくなります。そして、ついに我慢できなくなって、突然キレるといった攻撃的自己表現に移る場合や心のバランスを崩してしまうこともあります。


さて、Cの自己表現は、相手の気持ちを考えながらも、自分の気持ちを適切に表現しています。このような表現を「アサーション」、あるいは「アサーティブな自己表現」といいます。
相手も自分も大切にされるため、お互いが満足するコミュニケーションにつながります。ポイントは自分の気持ちに素直になり、率直に伝えることと、相手の反応も聴き、受け止めようとすることです。しかしこれにはトレーニングが必要です。

今日は時間が来ましたので、ぜひ図書館でアサーション・トレーニングに関する本を借りてみてください。これで宗教朝礼を終わります。

 
参考文献
平木典子(2012)『アサーション入門』講談社
園田雅代・ほか編(2013)『イラスト版子どものアサーション』合同出版
M.H.(理科)