シスター・先生から(宗教朝礼)
2016.10.12
2016年10月12日放送の宗教朝礼から
宗教朝礼を始めます。
この夏、フィリピン体験学習に引率をさせていただきました。11日間フィリピンでの活動をサポートしてくださったのが、来週来校される、フィリピン聖心のシスターベスでした。引率の先生方はもちろん生徒たちから絶大な信頼を置かれ、シスターのお人柄や奥深い考え、そして高い知性に触れることができたのは大きな喜びでした。
この体験学習に参加するに当たり、私も少しフィリピンについて勉強しました。長い歴史の中で、スペインとアメリカ合衆国に二回も占領された国であること。およそ80%の国民がカトリック信者であること。たくさんの島でできている国であること。大変貧しい国であること。そして、出発前に家族には狂犬病の犬が多いから「犬と目を合わさないように」と言われました。
百聞は一見に如かず・・実際のフィリピンの様子は、熱帯地方ならではの真っ青な空に突き抜ける椰子の木や、建物の中にいても隣の人と会話ができないほどの音で降るスコール。また、首都マニラの渋滞とその、車の列の隙間を縫うように歩く物売りの人々。そして、日曜日は延々と続く御ミサ、それに向かう車の渋滞。数年前に国の力によりなくなったスモーキーマウンテインは緑に覆われていました。その代わりに、別の地区にスモーキーバレーと言われる同じようなゴミ捨て場ができて、そこに暮らす人々は、相変わらず存在しているということ。また、日本大使館では、日本からの支援は、お金だけでなくインフラ整備などの技術など、多大に行われていること。JICAでは、医療面の支援についてお話を聞きました。フィリピンでは、年間300人もの人が狂犬病になっていること。日本からの海外協力隊の人たちの感染症への無防備さについては、厳しいご指摘がありました。この他にも、多くのことを学びました。
印象的だったのは、聖マグダレナ・ソフィア基金(SMSF)の幼稚園で出会った子供たちの表情です。その笑顔は子供らしいあどけなさだけではない、親や周りの人々に愛され守られ育っている、心から安心しきっている笑顔でした。小さい子にはお金や豊かなものではない、愛情が必要であるということを改めて実感しました。「フィリピンの人たちは子供を大切にする」フィリピンの子供たちの魅力的な表情はここからか、と納得しました。SMSFでは、貧しい人たちの住むモンタルバン地区の幼稚園運営を軸にして、様々な事業を展開しています。図書室を充実させて、幼稚園に通園する子供たちを始めその兄弟に本を貸し出したり、卒園生で、小学校に通う子供たちに算数と英語の補習授業をしたり、その補習授業を優秀な中学生以上のユースがしたり、未来に生きる子供たちの教育に熱心な活動をしています。また、子供たちのお母さんに集まってもらい、音楽袋や聖書カバーを作りフェアトレードで日本の聖心の小学校の教材として販売しています。これにより母親たちが現金収入を得られることばかりか、同じような年頃の子どもを持つ親が集まり、悩みなどを話したりすることで、母親の子育てのストレスも軽減できているということです。また、親としての自信もついてきて、より良い環境で子育てができるようになってきたとのことです。そして、やはり保護者の現金収入と栄養価の高い食材を提供する目的で始めた豆腐プロジェクト。カナダから輸入した大豆を日本の職人から習い、日本と同じ豆腐を作って、地域に販売しています。私たちも昼食にごちそうになりました。日本で食べる豆腐と全く違わない、いや、それ以上に美味しい豆腐に感動しました。
私はたくさんの感動をいただいて、日本に戻りました。
どんなに貧困でも子供を大切にして生活して、天国は誰もが行ける苦しみのないところだと、現状の生活を受け入れているフィリピンの人達にはカトリックの教えが浸透しています。宿舎での分かち合いで生徒の多くが口にした「フィリピンの人は貧しくても心がきれい。物のない生活の方が心が育つ。」という感想から、貧困を美化している考えが生徒達に見え隠れしたころ、小林聖心の校長でいらっしゃるシスター棚瀬の「貧しいことは美しいことではありません。人間がこんな生き方をしてはいけません。そして、豊かな人の中にもいい人はいます。」という一喝に、私も目が覚めた思いでした。同じアジアの国として、この貧困をほっておいてはいけないのです。SMSFはそのためにあるのです。貧しい人を少しでも恒久的な豊かな状態にするためにあるのです。
語りたいことはたくさんあります。
不二聖心では、毎年クリスマスのチャリティで、SMSFに寄付を送らせていただいています。今年のチャリティは例年と少し異なる思いで迎えたいと思います。
これで宗教朝礼を終わりにいたします。
K.O.(理科)