シスター・先生から(宗教朝礼)

2016.02.18

2016年2月17日放送の宗教朝礼から

これから宗教朝礼を始めます。
今朝もアンジェラスの鐘で学校生活がスタートしま した。みなさんは、アンジェラスの鐘が鳴っている間、どんなこと祈っているでしょう?私は、鐘の後半には必ず、家族が今日も元気に過ごせるように、不二聖心の生徒たちが充実した一日となるように、そし て世界が昨日よりも平和であるようにと願っていますが、この1ヶ月は今週土曜日に不二を巣立つ高校3年生が卒業後に豊かな人生を歩まれるようにと祈っています。
高校3年生は、不二聖心を巣立つことへの寂しさや、新しい生活への不安と期待でいっぱいだと思います。私は、これから巣立つ 卒業生にも、そして在校生にも願っていることがあります。それは「人を大切にする人、人から大切にされる人」になって欲しいということです。
 
私は、大学時代に英語と教育を学び、教職の道を考えた ものの、教員になるには自分に足りないものがあると感じて、22歳では教員ではない道を選びました。「自分に足りな かったもの」それは、自分の価値観が社会で通用するのかという自信と、自分は何を生徒に伝えたいのか揺るがない確信をもてていなかったこ とでした。
それから数年間、多様な世代、さまざまな背景、いろいろな価値観を持つ 人と関わり、しだいに後輩を育てる立場になったとき、自分の大切にしていること、自分が揺ぎなく人に伝えたいと思うことが見えてきまし た。正確に言えば、伝えたいことが「なかった」のではなく「気づいていなかった」だけだったのです。
 
「人を大切にする人、人から大切にされる人」
 人との関わりが増えるほど、その場限りの良い顔をするのではなく、誠実 に周りと向き合う人は、めぐりめぐって周りから大切にされる姿を見てきました。人のために尽くせる人、人の幸せのために行動を起こせる人が、 結果的に、信用されて、人から慕われ、愛されている姿を見てきました。
日常生活の中では、思い通りにいかないこと、自分が尽くしても相手に伝 わらないこと、むくわれないと感じることがあります。見返りがないから、自分の思うように評価されないからあきらめてしまうのではなく、 自分が大切だと思う事柄、人に心を尽くして誠実に向き合って欲しいと思います。

大人になり社会に出て、会社や組織の中で役に立つに は、一定以上のスキルが必要になります。スキルとは語学力であったり、専門知識・専門技能であったり、思考力・判断力であったりします。 最近では、コミュニケーションスキルが必要とか、ヒューマンスキルを求める、という関わり能力もスキルのように言われます。 しかし、その関わり能力の前提となる、人を大切にする姿勢、人を信じて誠実に向き合う姿勢はスキルではなくセンスだと思います。スキルは 大人になっても身につきますが、センスは時間をかけて育てるもので、育った環境や、中学・高校時代での出会いが大きいと感じています。不 二聖心には、日常の学校生活・寄宿生活、上下級生との関わり、学院の大人との関わり、そして学院の空気感全体に、自分が人から大切に される体験、自分が人から大切にされていることと気づく土壌が、昔から変わる事がなくあるように感じています。

卒業生の皆さん、みなさんの6年間または3年間には人を大切にするセンスを育む場がたくさんありました。今、こみ上げる思いは、今までがんばってきた達成感であったり、苦楽を共にしてきた友人への思いであったり、周りの人への感謝であるかもしれま せん。しかし今、気づいていることはきっと氷山の一角。不二で皆さんが得た宝物は何倍もみなさんの中に眠っています。これから新たに出会 う多くの人、チャレンジの中で、不二聖心で植えられ、静かに眠っているセンスを大切に育ててください。

不二を巣立った後、自分のいるどんな場所でも、周りに 光をもたらす存在になって欲しいとお祈りしています。そしてまた、卒業生から不二聖心の伝統を引き継ぐ在校生のみなさんが、周りの人を大切にし、不二での実り を一層豊かにしてくれることを願っています。

人を大切にするとは、具体的にはどんな姿でしょか。今 の私の答えは、「誰とでも陰日向なく公平に接すること」、「人に寄り添えること」、「周りの人を好きになること」ではないかと思います。

これで宗教朝礼を終わります。
                                       T.H.(英語科)